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序章:あの人を忘れない
6.死者の門
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私は魂だけの存在になってしまった。死んでから十日ほど西内の家や葬儀の場をのぞいでいたけど、その話は湿っぽくなるのでいつかの機会に。それにしても悠亮が骨壺が置かれた祭壇にあのライトノベルを供えたのは正直驚いた。それを読みたいけど、もう無理ってば! と。
幾日か経ったとき、私はあの世との境に来ていた。私を呼ぶ声は指示をするものであったけど、神様なのか天使なのかそれとも百鬼なのかは見当もつかなかった。なぜなら光がまぶしくて姿が見えない存在だったから。
私の魂は地に潜っていったのか天に上がっていったのかは分からないけど。いつの間にか巨大な柱が天高くどこまでも伸び、左右に無数の柱が最果てなく続くところにいた。それは「死者の門」のようだった。様々な者の魂の列が際限なく続いていたから。多くの魂は行進するかのように門をくぐっているというのに、私は門の手前の囲いの中に留め置かれていた。
そのとき、私は老婆の姿のままだった。納棺の際に着せてもらった着物姿のだった。それは西内の家紋の入った留袖だった。これで孫などの結婚式や大学の入学式に出席したし、見送ったご近所さんや友人達の葬儀に参列した時に着用したものであった。これは私の遺言書に指定していたもので死出の旅路にでるのに際し息子たちが実行してくれたのだ。
私はその門の方向にゆっくりと歩いていった。すると私の足取りは徐々に軽く力強くなっていった。進めば進むほど若返っていったのだ! 私は年齢の割に若く見られていたけど、みるみるうちに肌のシミやシワは消え、張りのあるものになり、身体も真っすぐになった。そして柱近くまでくると、私は少女に戻っていた!
「これって・・・神戸の女学校に通っていた頃のよね?」
その服装は女学校のセーラー服だった。その当時はあまり採用している学校が少ないハイカラなものだったが、その服装は・・・あの人、和夫さんと出会ったときのものだ!
私が和夫さんに出会ったのは、たまたまなんかの買い物で神戸の南京町の界隈をウロウロしていた時に、売っているところを聞こうと思って偶然入った商店でお客さんと商談している最中のあの人に声をかけたときのことだった。その時も今の服装だった。
「これなら、和夫さんに会っても気が付いてくれるよね!」
私は嬉しくなってスキップしていた。こんな風にスキップするのは何年振りなんだろう。それにしても和夫さんは迎えに来てくれているのだろうか? そう思っていると意外な者がいた。
「おばあちゃん! おひさしぶりにゃ!」
その声に聞き覚えはなかったが、その姿に見覚えがあった。十年前まで飼っていたネコのゴローだった。そのネコは県道でバスに轢かれそうになっていたのを助けてやって、死ぬまで飼ってやったけど、言葉を話せるはずはなかった。
「ゴロー、お前さんが私のお迎えなのか?」
私はゴローを抱きかかえていた。ゴローの後はネコを飼わなかったので、とても愛おしかったけど、なんで和夫さんじゃないの?
「そうだにゃ! 本当は僕は伝言しにきたのにゃ! おじいちゃんのことなんだけど、いいにくいけど、既に生まれ変わっているそうだにゃ!」
「うまれ、変わった!?」
私はまさかの置いてきぼりを喰っていたという事らしい。まあ七十年以上前に別れているのだからしかたないけど。
「神様が言われるには、おばあちゃんを不憫に思って二つの選択肢を用意していただいたのよ。ひとつはしばらく極楽でお休みになっておじいちゃんが再び天に戻ってくるのを待つというプラン。そしてもう一つはおじいちゃんの転生先に送り込んでもらうというものだそうだにゃ」
死者の門を前にして私はその意味を考えていた。
幾日か経ったとき、私はあの世との境に来ていた。私を呼ぶ声は指示をするものであったけど、神様なのか天使なのかそれとも百鬼なのかは見当もつかなかった。なぜなら光がまぶしくて姿が見えない存在だったから。
私の魂は地に潜っていったのか天に上がっていったのかは分からないけど。いつの間にか巨大な柱が天高くどこまでも伸び、左右に無数の柱が最果てなく続くところにいた。それは「死者の門」のようだった。様々な者の魂の列が際限なく続いていたから。多くの魂は行進するかのように門をくぐっているというのに、私は門の手前の囲いの中に留め置かれていた。
そのとき、私は老婆の姿のままだった。納棺の際に着せてもらった着物姿のだった。それは西内の家紋の入った留袖だった。これで孫などの結婚式や大学の入学式に出席したし、見送ったご近所さんや友人達の葬儀に参列した時に着用したものであった。これは私の遺言書に指定していたもので死出の旅路にでるのに際し息子たちが実行してくれたのだ。
私はその門の方向にゆっくりと歩いていった。すると私の足取りは徐々に軽く力強くなっていった。進めば進むほど若返っていったのだ! 私は年齢の割に若く見られていたけど、みるみるうちに肌のシミやシワは消え、張りのあるものになり、身体も真っすぐになった。そして柱近くまでくると、私は少女に戻っていた!
「これって・・・神戸の女学校に通っていた頃のよね?」
その服装は女学校のセーラー服だった。その当時はあまり採用している学校が少ないハイカラなものだったが、その服装は・・・あの人、和夫さんと出会ったときのものだ!
私が和夫さんに出会ったのは、たまたまなんかの買い物で神戸の南京町の界隈をウロウロしていた時に、売っているところを聞こうと思って偶然入った商店でお客さんと商談している最中のあの人に声をかけたときのことだった。その時も今の服装だった。
「これなら、和夫さんに会っても気が付いてくれるよね!」
私は嬉しくなってスキップしていた。こんな風にスキップするのは何年振りなんだろう。それにしても和夫さんは迎えに来てくれているのだろうか? そう思っていると意外な者がいた。
「おばあちゃん! おひさしぶりにゃ!」
その声に聞き覚えはなかったが、その姿に見覚えがあった。十年前まで飼っていたネコのゴローだった。そのネコは県道でバスに轢かれそうになっていたのを助けてやって、死ぬまで飼ってやったけど、言葉を話せるはずはなかった。
「ゴロー、お前さんが私のお迎えなのか?」
私はゴローを抱きかかえていた。ゴローの後はネコを飼わなかったので、とても愛おしかったけど、なんで和夫さんじゃないの?
「そうだにゃ! 本当は僕は伝言しにきたのにゃ! おじいちゃんのことなんだけど、いいにくいけど、既に生まれ変わっているそうだにゃ!」
「うまれ、変わった!?」
私はまさかの置いてきぼりを喰っていたという事らしい。まあ七十年以上前に別れているのだからしかたないけど。
「神様が言われるには、おばあちゃんを不憫に思って二つの選択肢を用意していただいたのよ。ひとつはしばらく極楽でお休みになっておじいちゃんが再び天に戻ってくるのを待つというプラン。そしてもう一つはおじいちゃんの転生先に送り込んでもらうというものだそうだにゃ」
死者の門を前にして私はその意味を考えていた。
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