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わたしにゼンタイ姿で歩かせないでよ! 編
1.出勤
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「行ってくるわねタマオ」
わたしは玄関先のマットの上であぐらをかいて大きなあくびをしているタマオの喉を摩っていた。タマオは気持ち良いのか、ネコ特有の喉を鳴らす行為をしていた。
「マドカいってらしゃい。それにしても今度の転職先、遠いわね」
「しかたないよ。でも今まで通り通えるから」
わたしは転職した。とある会社の社員食堂にだ。そこはシフト制だったが勤務時間が比較的融通の利くところだった。なんてことはない、シンジの父親が経営している会社だった。なかば無理矢理シンジに勧誘されたのだ。
シンジには他にもいくつか紹介され、中にはシンジの秘書室勤務というものもあったが、さすがに四六時中シンジといるのはいやなので、前職の経験を活かせる所に再就職した。
出勤は自宅を出て自転車で十分こいだ後、電車を二本乗り継いで最寄り駅で降りて、そこから徒歩十分というもので、片道一時間かかるところだ。
またシフトによっては遅くなるので、社員の仮眠室を使える場合もあったし、給料も福利厚生も同業者のなかでも比較的よかった。もちろんシンジの口添えはなかったけど。
出勤後、身支度をして食堂の調理などをしたり、レジ打ちをしたりといろんな事をするので、忙しかったがそれなりに充実していた。しかし、一番困るのが時々来るシンジという客だった。
ほかの社員が昼休憩を済ました後、決まってシンジがやってくるときは「視察」名目だった。
「島崎社長、おはようございます」
「江島さん。どうですか、新しい職場にはなれましたか?」
江島はわたしの苗字だけど、わざわざ苗字で呼ぶのは付き合っているのは社内では内緒だったからだ。だから社員食堂で顔を合わせても著しい身分差があるので、そっけないものだ。
注文した食事も自分でテーブルに持っていくスタイルなどで、全てシンジが片づけまでするので、面と向かう事が出来るのはレジ打ちの時だけだ。
ある日、シンジから社内専用のプリペイドカードと一緒に名刺を渡された。そこには社長室に来るようにと書かれていた。
「島崎社長、頑張ってください」
そうわたしは言ってカードを返したが、一体なんだろうこれはと思った。連絡はいつもメールでするのに、わざわざそんな事をするのか不思議だった。
勤務時間が夕方で終わり、わたしは隠れるようにしてシンジのオフィスに向かった。シンジが言う社長室は会社の敷地内にある倉庫にあった。
この会社は方針で社長もヒラ社員も同じフロワで業務を執り行っているので、社長室は個人的な接客の時にしか使うものではなかった。
「島崎社長、なにか御用ですか?」
「江島さん・・・いやここはマドカでいこう。君もシンジでいいよ。なんだってここからはプライベートだから。実は君に協力してもらいたいイベントがあるんだ」
そういって、シンジが差し出したフライヤー(チラシ)にはゼンタイを着た女の写真が印刷されていた。それはゼンタイイベントの告知だった。
「君にさんかしてもらいたいんだ。僕と一緒に」
そういわれ、わたしが読むとあまりの内容に驚きを隠せなかった。
「ちょっと待ってよ! なんで人前でゼンタイを着ないといけないのよ! しかも一般人も来る祭りで!」
わたしは玄関先のマットの上であぐらをかいて大きなあくびをしているタマオの喉を摩っていた。タマオは気持ち良いのか、ネコ特有の喉を鳴らす行為をしていた。
「マドカいってらしゃい。それにしても今度の転職先、遠いわね」
「しかたないよ。でも今まで通り通えるから」
わたしは転職した。とある会社の社員食堂にだ。そこはシフト制だったが勤務時間が比較的融通の利くところだった。なんてことはない、シンジの父親が経営している会社だった。なかば無理矢理シンジに勧誘されたのだ。
シンジには他にもいくつか紹介され、中にはシンジの秘書室勤務というものもあったが、さすがに四六時中シンジといるのはいやなので、前職の経験を活かせる所に再就職した。
出勤は自宅を出て自転車で十分こいだ後、電車を二本乗り継いで最寄り駅で降りて、そこから徒歩十分というもので、片道一時間かかるところだ。
またシフトによっては遅くなるので、社員の仮眠室を使える場合もあったし、給料も福利厚生も同業者のなかでも比較的よかった。もちろんシンジの口添えはなかったけど。
出勤後、身支度をして食堂の調理などをしたり、レジ打ちをしたりといろんな事をするので、忙しかったがそれなりに充実していた。しかし、一番困るのが時々来るシンジという客だった。
ほかの社員が昼休憩を済ました後、決まってシンジがやってくるときは「視察」名目だった。
「島崎社長、おはようございます」
「江島さん。どうですか、新しい職場にはなれましたか?」
江島はわたしの苗字だけど、わざわざ苗字で呼ぶのは付き合っているのは社内では内緒だったからだ。だから社員食堂で顔を合わせても著しい身分差があるので、そっけないものだ。
注文した食事も自分でテーブルに持っていくスタイルなどで、全てシンジが片づけまでするので、面と向かう事が出来るのはレジ打ちの時だけだ。
ある日、シンジから社内専用のプリペイドカードと一緒に名刺を渡された。そこには社長室に来るようにと書かれていた。
「島崎社長、頑張ってください」
そうわたしは言ってカードを返したが、一体なんだろうこれはと思った。連絡はいつもメールでするのに、わざわざそんな事をするのか不思議だった。
勤務時間が夕方で終わり、わたしは隠れるようにしてシンジのオフィスに向かった。シンジが言う社長室は会社の敷地内にある倉庫にあった。
この会社は方針で社長もヒラ社員も同じフロワで業務を執り行っているので、社長室は個人的な接客の時にしか使うものではなかった。
「島崎社長、なにか御用ですか?」
「江島さん・・・いやここはマドカでいこう。君もシンジでいいよ。なんだってここからはプライベートだから。実は君に協力してもらいたいイベントがあるんだ」
そういって、シンジが差し出したフライヤー(チラシ)にはゼンタイを着た女の写真が印刷されていた。それはゼンタイイベントの告知だった。
「君にさんかしてもらいたいんだ。僕と一緒に」
そういわれ、わたしが読むとあまりの内容に驚きを隠せなかった。
「ちょっと待ってよ! なんで人前でゼンタイを着ないといけないのよ! しかも一般人も来る祭りで!」
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