【第一部完】全包防御衣的巫女退魔日誌

ジャン・幸田

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序章:闇巫女を生み出す儀式

5.闇巫女誕生

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 月御前が開口部を縫い上げた時、全包防御衣に変化が現れた。縫い目は融合し消滅して、縫い目も切れ目もないピンクの皮が出現した。美鈴の身体を内部で溶かし始めたかのように蠢動し始めた。その蠢動に美鈴は官能の渦へと落とし込められていった。身体が溶かされているのに官能的快楽に陥るのはやはり別な存在、淫獣に生まれ変わるからである。

 淫獣は、人間界に古くから生息している霊とも獣ともつかない一種の存在だ。自然界の存在している生物が変異したり人間が変異したりすることもあるが、多くは人間界からみて影や闇の中で人知れず生息している。しかし、時に人間に脅威を与える事もある。その脅威は昔から言われる悪魔であったり妖怪であるが、支配層はそれを隠し続けていた。そう、淫獣が表の世界に出る前に葬る組織があった。その組織の依頼で派遣される者のひとつが闇巫女だった。

 闇巫女は若い人間の娘を淫獣にするので恐ろしいほど醜い姿になっていると言われている。それを衣装で隠蔽するのは、闇巫女の素体になった娘の精神的ダメージを防ぐためでもあるが、力を制御するためでもあった。そうした衣装の一つが全包防御衣であった。

 全包防御衣を製造させたのは慶次郎であるが、なぜそれを思いついたかについては誰も知らない事だ。しかし、見た目はピンクの全身タイツなので組織からは不評であった。ただ、全く素体が見えないので淫獣からの防御は完璧であった。ただ副作用として完全に素体がその中に溶け込んでしまうので、人間の娘に再生する手間が毎回かかっていた。

 この全包防御衣を着用する闇巫女は美鈴で三人目であるが、前任者二人がどうなったかについては慶次郎の口は堅かった。だから、美鈴は不安に思っていたが、闇巫女になる時の快感を経験すると既に病みつきになっていたから構わなかった!

 「うー、わー、うー」

 美鈴は男女の契りの時に交わすような喘ぎ声をあげていたが、そのとき美鈴の心身は闇巫女に変換されていた。人間の皮膚は溶け全包防御衣の表面が新たな皮膚となり、顔ものっぺらぼうのようになった。かろうじて眼窩などのくぼみは残ったが、瞬きすることはなくなり、呼吸さえも感じられないようになった。そして表面は作り物のようになった。そして胸の膨らみは大きくなりウエストが細くなりお尻も大きくなり、身長の伸びていた。美鈴の身体は完全に作り変えられていった。

 しばらくして喘ぎ声の声質が変化した。それは美鈴が完全に消えたことを意味した。美鈴を素体にした闇巫女が誕生した瞬間だ。

 「月御前様、お久しぶりね。この美鈴って娘の身体は芯は強いけど、心が弱いんだよね。まあ、あたいが来たから大丈夫だけど」

 「お前様が降臨できるのも美鈴が見つかったからだよ! せいぜい感謝するんだね。それよりも早く着てくれないか? その恰好そのものが淫獣にしか見えないんだよ、さ! さ!」

 月御前の目の前には、ピンクの女の人型がいたが、それは月御前の後ろの衣装かけに吊るされていた巫女装束を着始めた。一応、闇巫女も巫女の一種であるので出動時は正装しなければならなかった。

 「月御前様。今回のあたいの任務はいつものように彼に聞けばいいんだよね? あちらさんも神社の誰かを変身させたものでしょ。いいかげんに誰なのか教えてくれないかしら?」

 「それは出来んことになっているんだ。自分で上手に聞きなさい! お前様だっていうつもりないんだろ?」

 「そうよ、だって美鈴といえば。悪いけど人間の時は本当に野暮ったいのよ彼女は! あたいが一層の事、代わった方がいいんじゃないのかと思うよ!」

 そういいながら闇巫女は袴を穿いていた。その姿は巫女そのものであったが、巫女装束から出る手足や顔はピンクというのが異様であったが。

 「そういったて美鈴はお前様そのものなんだよ。美鈴が素体のわりには本当によくしゃべるわな! 前任者の時にはここまでシャアシャアといったりしなかったというのに・・・まあ良い! 着たらいつものように禰宜さまと検非違使さまがお待ちだから」

 「はあい! どうせ淫獣と戦うのはあたいなのにね! いつもあたいは囮になってそして・・・まぐわうんでしょ!」

 「そうだ、ミスズ! それがお前さんの使命なんだから! さあ、行くがよい!」

 月御前に促され、闇巫女のミスズは任務遂行のために部屋を出た。この時から美鈴という娘は存在しなくなった。ミスズという全包防御衣が構築した別人格が心身とも支配しているからだ。もし、任務に失敗すれば前任者のように・・・
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