【第一部完】全包防御衣的巫女退魔日誌

ジャン・幸田

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第一章:夜明け前の想い出は仄暗い路に続く

6.結界の闇

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 金色夜会はお開きになって大部分の客が帰っていたので、会場内にいるのは寝落ちしている者かスタッフしかいなかった。ここで淫獣の餌食になったのは寝落ちしている客といわれていたが、実際のところ淫獣が狙いを定めた者が眠らされていたのかもしれない。しかし今日のターゲットは、どうやらミスズとケンイチだ!

 目の前に現れた黒い闇が二人を包んだからだ。そのため周囲の者にはもう二人は見えなかった。

 「なによこの暗さ! 噂通りだわ!」

 ミスズは巫女装束の袖の下に隠していた破魔の剣を取り出した。ケンイチも懐の破魔の太刀を構えた。しかし相手は見えなかった。

 「どうやら淫獣の結界の中に取り込められたようだな。ここから出れるのは奴を倒した時か・・・逆に魂を盗られた時だな・・・」

 ケンイチは少し弱気な事を言った。彼は百戦錬磨の破魔法師! という訳ではなかったから。まだミスズと実戦に出るのは三回目で、前の二回は幸運が重なって倒せたようなものだったからだ。それはともかく、生き抜いて元に戻るにはこの結界を生み出した淫獣をどうにかしなければならなかった。

 「にしても・・・鬱陶しい湿気と温度だわ。まるでサウナにいるみたい!」

 ミスズはそういったが、彼女の桃色の表皮は一切変化が起きていなかった。これがゼンタイなら汗がにじんでいるところだろうが、代わりに淫獣の淫気が噴出していた。それが淫獣を引き寄せるからだ。

 すると、闇から小さな刃が飛んできた。それはミスズの巫女装束の前の結び目を切り裂いてしまい、彼女の紅袴がずり落ちた!

 「なによ! えっち! あんたはオスの淫獣かよ!」

 ミスズの怒気がこもった声があたりに響いたが、そのとき残った上着も脱ぎ捨てたのでミスズは桃色の人影になった。こっちの方がどうやら動きやすいようだと思ったからだ。しかしそれが相手の狙いのようだった。

 「噂通り、新入りの淫獣巫女は全身隈なく淫獣の皮を纏っているんだな! それだけの淫獣皮を集めるとなると何体の淫獣を殺めたものかしら? 」

 その声の主は十代前半の少女のような声だった。それはユマが話していたアリスのようだったが、姿は見せなかった。

 「ふん! 淫獣なんて危害を加えなければ刈られることはないでしょうが! それより、あんたは何故、金色夜会の参加者に酷い目にあわせたんだ!」

 ケンイチは太刀を構え虚無のような暗闇にひそむであろうターゲットに問いかけた。その声はもちろん怒りに満ちていた。

 「そんなの決まってんじゃないのよ! ここに来る奴らの淫気はハンパないからだよ。それを使えば・・・それよりも、今日は今まで集めたやつよりもたくさん集められそうだわ! 特にそこの淫獣巫女! お前はあたしの糧となりやがれ!」
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