【第一部完】全包防御衣的巫女退魔日誌

ジャン・幸田

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第一章:夜明け前の想い出は仄暗い路に続く

5.夜明け前

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 その日の夜明けは春に入ろうとしていた時期なので日の出は午前6時だった。ステージ上のメインスケジュールは午前5時ごろ終了なので、会場内からはコスプレ客が帰り始めた。更衣室で着替え普段の生活に戻っていく人々の姿が次々見られた。中にはコスプレのままで帰るツワモノもおったが、あんな恰好で職務質問されないんかしらと美鈴(ミスズ)は思っていた。

 淫獣に身も心も支配されている時と違い、本来の美鈴は引っ込み思案でドジっ子で恥ずかしがり屋の少女だった。なんだって男と手を触れるのも躊躇するほどなのに、今は淫獣化しているのでゼンタイ姿で人前でいても平気だった。

 そんな淫獣巫女の姿に引き寄せられエッチそうな男やフェチな女が寄って来たけど、ひとつだけ気が付いたことがあった。どうやって着たんだろうかと。

 「そのゼンタイってまさか縫い合わせてきたわけじゃないよね? ファスナーも見当たらないし、シワも。まるで皮膚そのものみたいだわ」

 太い縁のメガネをした中年男が聞いてきたが、そいつは精度の低い女装をしていた! ここではまあよくいるコスプレであったが、ミスズの全包防御衣の特徴を鋭く突いていた。すると写真を撮っていいかと聞いてきたがケンイチが割り込んできた。

 「それはご遠慮ください。この衣装は今度公開する特撮作品のキャラクターでして、その時までまってもらえませんか?」

 その男は仕方ねえなと言ってデジカメをおさめたが、気になる事をいいはじめた。

 「いやあ、わしっていつも地方から出てきて参加しているんだけど、飛行機の時刻の都合でいつも最後までここにいるんだけど、気になっていたんだよ。夜明けぐらいになると黒い雲みたいなものが見えるんだ。とうとう老眼になったんだと感じるんだけど前兆があるんだよ」

 その男は金色夜会に出没する淫獣の事を知っていたようだ。

 「それって?」

 「なんかねえ、黒いラバーの女が二重に見えだすんだよ。そしたら黒い雲に変わるんだよ。いつもしているメガネを外したら見えだすんだが・・・」

 そのとき、時刻は日の出の時間になろうとしていた。そのとき、ケンイチはあることに気が付いた。もし、今日仕留めないと夏になれば日の出の時間が早くなるので・・・もっと多くの人が犠牲になると!

 それでケンイチは探査装置の画面に目をやると淫獣反応の淀みが急速に高まっている場所があった。そこは会場内からみてお日様が上るはずの方向だった。
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