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(6)二人の逃避行
湯治場にて
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この事故現場への慰霊は以前から志桜里が希望していたものだった。だから香央里となら一緒にということで村城家で前々から計画していたようだ。しかし姉妹の母、俺の叔母が急用でいけなくなったので姉妹だけで行くはずだったのに、俺が同行する事になってしまった。香央里の要らぬ配慮をしてくれたようだった。それが何をもたらすのか分かったうえで・・・
別れたくないのに別れさせられたカップルにお泊りのチャンスが与えられたとはいえ、二人の気持ちは重苦しいものだった。泊りになるのは分かっていたけど拒むこともしなかったけど乗り気ではなかったから。
志桜里のチームが訪れるはずだった宿泊施設を見学した後、近くの湯治場にある旅館に向った俺たちは「姉弟」と偽って泊まった。この時二人とも必要以上のことはしゃべらなかった。変な沈黙の時間だけが過ぎていった。
部屋のテレビをつけても、黙ったままであったので、旅館の夕食時も無言で過ごしていた。二人とも泊まったけど何をしたらいいのか分からなかった。若い男女が止まってやることといえば・・・なんだろうか?
「お風呂に行ったらどうかな? ここの温泉の効用っていろいろあるようだから・・・」
それで二人とも湯船に向った。この日は湯治にきた宿泊客が他にもいたようであるが、そんなのは記憶に残っていない、俺の頭の中は志桜里と今晩どうなるかという不安でいっぱいだった。幼い頃から同じ部屋で寝たことなんていっぱいしてきたけど、それは他の家族、たとえば香央里や俺の兄貴と一緒だったことで、二人だけ一緒なんてことはなかった。恋人同士と意識し始めた時にも考えたことなかった事態だった。二人とも昼間に出発した時点で分かっていたというのにである。
湯船につかりながら浴槽にこびりついた湯の花や古ぼけ変色した壁をみていると期待よりも不安が大きい事に困惑していた。期待は志桜里と何かがあるということだったが、不安はなにかというのは漠然とし過ぎて分からなかった。もう二度と会えなくなるような気がしないでもなかったからだ。もっとも、それは普通はあり得ない事だった。なにかと交流してきた親戚同士が仲たがいするのは想像しがたかったからだ。だから不安は・・・なんなのか分からなかった。
部屋に戻ると志桜里は戻っていなかった。女湯に様子を見に行くわけにいかないので俺は興味もないテレビをずっと見ていた。取りあえず布団は引いてあったので浴衣姿で横になってくつろいだ格好はしていたけど、心の緊張は解けなかった。
何時になっていたのかわからないが、その時俺は眠っていたようだ。ふと気が付くと志桜里の顔が目の前にあった。その顔は何か思いつめているようであったが、彼女の首から下に驚いた。浴衣の襟がはたけ胸の谷間が見えていたのだ。それはつまりその・・・
別れたくないのに別れさせられたカップルにお泊りのチャンスが与えられたとはいえ、二人の気持ちは重苦しいものだった。泊りになるのは分かっていたけど拒むこともしなかったけど乗り気ではなかったから。
志桜里のチームが訪れるはずだった宿泊施設を見学した後、近くの湯治場にある旅館に向った俺たちは「姉弟」と偽って泊まった。この時二人とも必要以上のことはしゃべらなかった。変な沈黙の時間だけが過ぎていった。
部屋のテレビをつけても、黙ったままであったので、旅館の夕食時も無言で過ごしていた。二人とも泊まったけど何をしたらいいのか分からなかった。若い男女が止まってやることといえば・・・なんだろうか?
「お風呂に行ったらどうかな? ここの温泉の効用っていろいろあるようだから・・・」
それで二人とも湯船に向った。この日は湯治にきた宿泊客が他にもいたようであるが、そんなのは記憶に残っていない、俺の頭の中は志桜里と今晩どうなるかという不安でいっぱいだった。幼い頃から同じ部屋で寝たことなんていっぱいしてきたけど、それは他の家族、たとえば香央里や俺の兄貴と一緒だったことで、二人だけ一緒なんてことはなかった。恋人同士と意識し始めた時にも考えたことなかった事態だった。二人とも昼間に出発した時点で分かっていたというのにである。
湯船につかりながら浴槽にこびりついた湯の花や古ぼけ変色した壁をみていると期待よりも不安が大きい事に困惑していた。期待は志桜里と何かがあるということだったが、不安はなにかというのは漠然とし過ぎて分からなかった。もう二度と会えなくなるような気がしないでもなかったからだ。もっとも、それは普通はあり得ない事だった。なにかと交流してきた親戚同士が仲たがいするのは想像しがたかったからだ。だから不安は・・・なんなのか分からなかった。
部屋に戻ると志桜里は戻っていなかった。女湯に様子を見に行くわけにいかないので俺は興味もないテレビをずっと見ていた。取りあえず布団は引いてあったので浴衣姿で横になってくつろいだ格好はしていたけど、心の緊張は解けなかった。
何時になっていたのかわからないが、その時俺は眠っていたようだ。ふと気が付くと志桜里の顔が目の前にあった。その顔は何か思いつめているようであったが、彼女の首から下に驚いた。浴衣の襟がはたけ胸の谷間が見えていたのだ。それはつまりその・・・
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