結婚したのに! 悪役令嬢ってこんな話なの? メイドにされた処女妻は健気にいくしかない!

ジャン・幸田

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悪役令嬢とは失礼な!

哲彦との面談

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 メイド服を着せられたわたしは多恵と太蔵に連れられて屋敷内の別の建物に移動した。橘花宮の屋敷は帝都中枢部の皇帝宮殿に隣接する皇族御用地でなく、郊外の丘陵地に置かれていた。そのせいか敷地面積は広大で各建物は散在していた。その一つの建物だったがそこが本宅のようだった。

 その建物は和洋折衷の珍妙な建物で、石造りの西洋風の城館に和風の館が乗っかった構造をしていた。それにしても、なんでここじゃなくてさっきのボロ屋に泊めさせられたのか理由がわからなかった。ここでも、私たちの立ち位置を思い知らされる扱いを受けた。建物の正面ではなく脇にある通用門、要は使用人が使うところから中に入らされてしまった。ああ、やっぱり使用人なんだ!

 「とりあえず、ということなんで啓子様には宮様からお話がありますとのことですので、粗相なきようにおねがいします」

 太蔵はうやうやしくいうけど、なんでいう仕打ちなんだよと思った。この家には花嫁としてきたつもりなのに、これっていったい何の意味があるというのだろうかと思った。使用人の「採用面談」じゃあるまいし! それにしても夫になるはずの哲彦の顔をまともに見たことは無かった。

 わたしは真面に写真を撮った事はなかったので、見合いの釣り書きのための写真すら用意していなかった。だからではないが、橘花宮の家から哲彦の肖像写真は送られてこなかった。かわりというわけではないが、父から見せられたのは新聞に掲載されていた肖像写真であったが、それは小さいうえに印刷が不鮮明ではっきり分からなかった。分かったといえば顎髭がはえているぐらいだった。

 わたしが通されたのは哲彦の執務室だった。そこは広い空間の中央に大きな机が置かれた質素であるが剛健な雰囲気が漂う場所であった。その中央には陸軍の礼服に数多くの勲章を付けた彼が座っていた。このとき、はじめて相手の顔をまともに見た!

 結婚式の当日まで相手の顔を知らずにいた花嫁というのは少なくないと聞いていたが、この場合はなんて説明すればいいんだろうか? 自分が好きな女の替え玉として連れてこられた貴族の娘としか言いようがなかった。

 「おはよう啓子。はじめてだが、今日から貴官はこの屋敷で働いていただく。他の使用人よりも仕事量は少ないし、給金も出す。これから大人しく三年間、この生活をしてくれ。そのかわり三年過ぎれば貴官がしたいことをやらせてやるからな」

 それが彼からわたしに発せられた言葉だった。それにしても、意味が全然わからないんです! そういいたかった! とにかく三年間メイドでいろっというのは理解できた。それで近づこうとした瞬間、彼からこんなことを言われてしまった。

 「貴官は小官専属ではない。よって故意に10メートル以内へ接近することを禁ずる! 貴官は小官の配偶者であるが、それは書類上だけのことだ。現実をわきまえよ!」

 わたしの心の中は煮えたぎった感情の起伏で爆発しそうになった。
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