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禁断のデート?

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 僕が京香に最後に会ったのは1996年初夏のころだった。あのとき、就職活動をしていたが、まだ携帯電話などというものを持っている学生が少数だったので、情報源は就職情報誌などの紙媒体が主体だった。だから、彼女と出会えたのは奇跡であったのに、連絡先の交換することなく別れてしまった。

 「あの時の会社? 内定していたけど、家族の都合で断ったわ。それが良かったのかは今となってはわからないわね」

 僕はなんてもったいない事をしたんだとおもった。大学四年のあの年は結局どこの企業からも内定をもらえず、フリーターという名の非正規労働者としての社会人生活をスタートしてしまったから。

 「そうなんだあ、でもあの年ってカープ優勝しそうだったのに、残念だったな」

 そういうと、彼女の顔が変わった。その年は後に「メークミラクル」と話題となった長嶋ジャイアンツの逆転優勝劇があったが、そのとき逆転されたのがカープだったわけだ。だがら「逆メークミラクル」という悪夢をファンは見る羽目になった。以来、二十年も優勝争いにも入る事がない低迷期になったわけだ。

 「そうよ! 今やってるようにデートせねばならんとおもっちょたわけよ! 丁度、彼氏と別れたばっかりだったしね。あ、ごめんね気に障ったら」

 京香は謝ったが、あの時の大人っぽい彼女だったら誰かと付き合っていない方が不自然だった。
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