雲天泊の男たちは男の娘”慶”に魅了される

ジャン・幸田

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男の娘は花嫁として売られてしまう

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 劉慶は人間嫌いだった。両親を殺され人間というものが信じられなくなったためだ。それでも生きていくためには、どうしても付き合っていけなかった。でもそれはかなりの苦痛であった。特に劉慶の武器は母親譲りの華麗な容姿であるためだ。それで、美少女だと騙して生きていくための糧を得ていたのである。

 花嫁だと偽っての旅行は、かなり危険なものであった。黄世凱の情報によれば、西域のある決められた町まで行けば。定期的に目的地に向かう商隊があるはずなので、それと合流すれば良いとのことであった。だが、そこまで行くにも一か月近くかかる。それだけの日数をかけても金百貫という金銭は魅惑的であった。無論、本当に受け取れたらであるが。

 危険な道中であるため用心棒を頼むことにした。その用心棒は劉慶が時々一緒に詐欺を行う顔なじみの馬儲扶であった。でも彼には嫌な思いもあった。

 馬儲扶は腕は確かだし、頭も切れるが。同時に劉慶に対して変な感情を持っていた。馬儲扶は劉慶が男だと知ったうえで体の関係を求めるかのように、とにかく触りてくるのだ。いつも、どうせ男同士なんだから構わないだろうという口癖であるが、まるで女を求めるかのようで嫌であった。

 「他にいなかったのですか? よりによって馬儲扶の奴なんだ!」

 「仕方ないだろ。そもそも、あんな奥地まで行くにも旅費がかかるんだから。良し悪しを差し引いても、とりあえずいるだけ助かるだろう。彼しかいなかったんだよ」

 世間的には、一行は叔父と姪そしてその護衛というふれこみであった。西域に行くのに、似つかわしくない恰好であった。特に劉慶は可愛い女の子のふりをしていたので、いつもイヤらしい男どもから誘惑されることもしょっちゅうであった。

 「なんか周り様子おかしいよ」

 そういうのも仕方なかった。西域に行く若い娘などいないからだ。女でいるとすれば年配の行商人の女であったから。そういった女は、行商ついでに体を売ったりすることもあるようだ。だから劉慶に対し自然と男達の目は優しかった

「こんばんは、お前と一緒に同衾しようぜ」

 馬儲扶は劉慶にそういったが、目的は分かっていた。

「駄目に決まっているだろ!あたいはこう見えてもまだ嫁入り前よ!」

 その時周辺には男も大勢いたので、ここで正体は男だとバレてはならないから、普段から劉慶はこうやって女のようなことを言わないといけなかった。もう、17歳だというのに声変わりを奇跡的にしなかったので、女声であった。ただし、男性自身はそれ相応であったが。結局、その日の宿は三人一緒の部屋に泊まることとなった。
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