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エリーは探偵として推理する

30・愛莉の秘密(4)

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 ”女の身体” その言葉を女の口から聞いた男が考える事は、ロクな事ではなかった。男という生き物の性といえばそれまでのことであるが、そんなロクでもない考えを抱く時、何かを期待しているかもしれなかった。

 「女の身体って・・・愛梨ちゃんはバージンだったよね? それとも誰かと関係を?」

 そこまで言ったところで、愛莉の左手が淳司の右頬に平手でヒットした。そのとき、淳司は抱きかかえている腕を離さないように食いしばっているのがわかった。

 「失礼な! こんなこと誤魔化しても変に誤解されるからはっきり言うけどね! あたしはまだ誰ともエッチな事をしたことないのよ! 全寮制の女子高にいたしね、大学でもなんか敬遠されたのよね! なんだか超高性能AIみたいな頭デッカチな女がいるなんてね! 」

 愛莉はそういったが、実は相手さえいれば身体を捧げたいと思っていたし、初体験したいという願望はあった。でも、あんまりにも数式で考えてしまう癖があったので、先にいくことなんてなかった。むしろ、仮想現実にいる時の愛莉の方が本音をさらけ出してしまうようだった。

 「叩くなよ! あやうく君を落とすところだったぜ! 女の身体っていうのはそのまんまと受け取ればいいんだろ?」

 そういわれ、愛莉の顔は少し赤くなっていた。こんな風に男にお姫様抱っこされているのに、こんな事をいうのはハシタナイと思った。それにしてもチャラ男にしかみえないのに、襲わないの? それって私に魅力がないのかしら? なんて思っていた。

 「そ、そうよ。私が知りたかったのは赤ちゃんを産めるかということよ!」

 「そ、そこなのかあ? なあんだあ!」

 「なあんだあとは、なんなのよ! あたいは真剣なのよ! 外見よりもむしろこっちのほうが真剣よ! あたいはねえ家族がほしかったのよ! 相手ばいればねえ!」

 「す、すまん! そこまで全身拘束刑も残酷じゃないさ! まあ、無理もないよな。内臓にまでいろんな器具を挿入されるからな。まあ、どれぐらいされているのか君自身がしっているだろうからな」

 言われるように愛莉は認識していた。口蓋や鼻腔には様々な生命維持装置が入れ込まれ、下腹部の肛門なども同じだった。しかも人間の三大欲求は全て抑制されるのだ。全身拘束刑に処せられてから、睡眠は強制的に規則正しくされ、食欲は循環機能によって定期的にされ、そして性欲は生体と電脳に切り離されているので、感情として起きなかった。全ての身体的欲求は管理されるのが囚人であった。まさに刑務所であり囚人服だった。

 「そうよ! こうして感情をぶつける事が出来るのも、この空間のアバターだけなのよ! 本当に嫌になるなあ。でも、もう少しでここも終了するのでしょ! ログオフしなくちゃいけないんでしょ」

 この時、初期設定された時間が終了する警告メッセージが流れだした。もちろん、それは安全を考慮したものだった。下手に延長すると司法省の監視システムを欺いているのがバレてしまうからだ。

 「そうだ! あと三分でログオフしてガイノイド・エリーに戻ってもらうからな。そうそう、ガイノイドに戻ってもやってもらう宿題があるから、頼むよ」

 「宿題?」

 「ああ、明日は理工学ビルに潜入して、アイリと意識をシンクロしてもらうからな。危険だからもう一体のガイノイドも付いてくるからな。そうそう、そいつは俺らの見方だから心配しないでくれよ」

 「ガイノイド?」

 愛莉は聞き出そうと思ったが、ログオフ作業が始まったので出来なかった。人間の身体を意識できる仮想空間から離脱しなくてはならなかった。愛莉は再び機械にもどされていった。
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