37 / 200
エリーは探偵として推理する
36・束の間の自由
しおりを挟む
機械として制御されている自分の身体を解除する作業を愛莉は自分で行っていた。アイリとして製造された電脳には愛莉の生体脳と機械として制御する電子素子が混在していた。今しているのは電子素子にある制御プログラムの書き換えだった。淳司によれば一気に買い替える事も可能との事だが、それでは愛莉を冤罪に陥れた連中にばれるので、徐々にするしかないということだった。それにしても、自分で自分の頭をカスタマーするとは思ってもいなかった。
その時、愛莉は逮捕されるきっかけになった暗号解除の作業を思い起こしていた。その時、分からなかったことが徐々に分かってきた。その暗号に大まかに二つあって、前者はどうやら国防省のアーカイブライブラリーへのアクセスキーで、後者はエキゾチック・ブレインの本文の暗号のようであった。前者は、割と簡単に解読したが、後者は一週間ほど解除にかかってしまった。その途中で、マスコミで大きく報道された「麗華民主共和国における生物兵器開発疑惑」が流出していたようであったが、それは気にも留めていなかった。
一週間後、エキゾチック・ブレインの本文の暗号解読に成功した瞬間に逮捕されてしまった。この時、本文をスクロールして確認していたが、全文英語だったので速読することは出来なかったので、殆ど覚えていなかった。でも、冒頭部分だけを思い出した。それは・・・
そのとき、愛莉はエリーのボディを自分の意志で動かせるようになった! 思わず愛莉は自分の顔を確認した。
エリーというガイノイドの外骨格に覆われた自分の顔は硬かった。わずかに温もりはあるが、それは内部から熱を放出しているからだった。口元は唇の形をしているが装飾にすぎず、それは鼻筋も同じだった。その下で愛莉の口蓋と鼻腔に様々な器具を挿入され、味覚と臭覚という人間的な五感を奪われていた。
次に触ったのは自分の腰だった。腰も特殊樹脂に覆われたチタン製の外骨格に覆われていた。その下に自分の人間らしい存在は隠されていた。排泄行為も単なる内部構造の廃棄物交換で数日に一回しかしなくなっていた。なぜなら、体内で発生した老廃物を含んだ水分は濾過され循環しているからだ。尿も外骨格にある濾過装置に送られて、また口蓋に挿入されたチューブで戻されていた。
「うーん、あたしってまだエッチなんかしていないのよ! そんな女の子をこんな機械と一緒にするなんて、黒幕って奴が分かったら一発殴ってやりたいわ! それにしても、いましかないのよね」
愛莉はエリーの腰の他、胸や足など他の部位をいたわるように触っていた。今の自分の身体を確かめていた。このような姿になっているのは分かっていても、ガイノイドモードのままでは自分の意志で動かして確認できなかった。それを今していた。
仮想空間ではカリソメとはいえ、飲食したりスカートをひらひらしたり淳司を素手で殴ったり出来たが、それらは出来なくなっていた。人間の食事を摂ることは出来ないし、ガイノイドは洋服を着ないし、もし淳司を殴ったら殺しかねない! 今の愛莉は柔らかい血が通う生身は奪われ、金属と特殊樹脂などに全身を加工されたガイノイドだった。それでも、今の身体をこうして動かせるのは悲しいけど嬉しいという複雑な感情であった。
ただし許されるのは自分の視覚が及ぶ範囲で人間がいない時限定だった。機械が人間の自分を取り戻せるのは今だけだった、束の間の自由であった。自由意志で動ける機械はここにあってはならなかったからだ。
その時、愛莉は逮捕されるきっかけになった暗号解除の作業を思い起こしていた。その時、分からなかったことが徐々に分かってきた。その暗号に大まかに二つあって、前者はどうやら国防省のアーカイブライブラリーへのアクセスキーで、後者はエキゾチック・ブレインの本文の暗号のようであった。前者は、割と簡単に解読したが、後者は一週間ほど解除にかかってしまった。その途中で、マスコミで大きく報道された「麗華民主共和国における生物兵器開発疑惑」が流出していたようであったが、それは気にも留めていなかった。
一週間後、エキゾチック・ブレインの本文の暗号解読に成功した瞬間に逮捕されてしまった。この時、本文をスクロールして確認していたが、全文英語だったので速読することは出来なかったので、殆ど覚えていなかった。でも、冒頭部分だけを思い出した。それは・・・
そのとき、愛莉はエリーのボディを自分の意志で動かせるようになった! 思わず愛莉は自分の顔を確認した。
エリーというガイノイドの外骨格に覆われた自分の顔は硬かった。わずかに温もりはあるが、それは内部から熱を放出しているからだった。口元は唇の形をしているが装飾にすぎず、それは鼻筋も同じだった。その下で愛莉の口蓋と鼻腔に様々な器具を挿入され、味覚と臭覚という人間的な五感を奪われていた。
次に触ったのは自分の腰だった。腰も特殊樹脂に覆われたチタン製の外骨格に覆われていた。その下に自分の人間らしい存在は隠されていた。排泄行為も単なる内部構造の廃棄物交換で数日に一回しかしなくなっていた。なぜなら、体内で発生した老廃物を含んだ水分は濾過され循環しているからだ。尿も外骨格にある濾過装置に送られて、また口蓋に挿入されたチューブで戻されていた。
「うーん、あたしってまだエッチなんかしていないのよ! そんな女の子をこんな機械と一緒にするなんて、黒幕って奴が分かったら一発殴ってやりたいわ! それにしても、いましかないのよね」
愛莉はエリーの腰の他、胸や足など他の部位をいたわるように触っていた。今の自分の身体を確かめていた。このような姿になっているのは分かっていても、ガイノイドモードのままでは自分の意志で動かして確認できなかった。それを今していた。
仮想空間ではカリソメとはいえ、飲食したりスカートをひらひらしたり淳司を素手で殴ったり出来たが、それらは出来なくなっていた。人間の食事を摂ることは出来ないし、ガイノイドは洋服を着ないし、もし淳司を殴ったら殺しかねない! 今の愛莉は柔らかい血が通う生身は奪われ、金属と特殊樹脂などに全身を加工されたガイノイドだった。それでも、今の身体をこうして動かせるのは悲しいけど嬉しいという複雑な感情であった。
ただし許されるのは自分の視覚が及ぶ範囲で人間がいない時限定だった。機械が人間の自分を取り戻せるのは今だけだった、束の間の自由であった。自由意志で動ける機械はここにあってはならなかったからだ。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる