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エリーは探偵として推理する
70・シスコン
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愛莉が卒業した中高一貫校の全寮制学校は有産階級の子女ばかり在籍していた。生徒は女子ばかりで一般的にいえば階級社会であったといえた。親の財産の多少、社会的地位の上下、容姿の美醜、そして成績の優劣といった要素が複雑に絡んでいたので、その階級の上下は複雑なメカニズムで決定していた。
そんな学校で愛梨は舞踏会に迷い込んだ掃除係と言われたかと思ったら、開学以来最高の成績優秀者ともてはやされたこともあった。両親は勤労者階級で既に鬼籍に入っていて財産を何ら持っていない少女が金持ちの学校に入れたことに生徒たちからは驚嘆と羨望、そして嫉妬と悪意で見られていた。実際、教師の目が届かないところで他の生徒たちからいじめを受けた事すらあった。そんな状況が変わったのが、一年後輩として入って来た真由美のお世話係になった事であった。
最初のうちは、学校の伝統で新入生をサポートする上級生であったが、いつの間にか本物の姉妹以上の感情を抱くようになってしまい、結局4年間も学年が違うのに寮のルームメイトになっていた。そんな二人を周囲の生徒はシスコン(シスターコンプレックス)だと興味本位な好奇な視線を浴びせていた。
そのため、大学に進学してもOG訪問と称して何度も学校に戻って真由美に勉強を教えたりしたことがあった。そして、帝央大学の一般入試が終わった直後、愛莉は真由美の前から失踪した。それ以来真由美は愛莉の消息を探していた。
「エリー、これでいいよね」
真由美は車椅子の荷物入れを確認していた。理工学部ビルへの訪問は異なる学部の生徒は著しく制限されていた。制限なく入れるのは物販部と学生食堂ぐらいのもので、入る時に厳重にセキュリティーチェックが行われることになっていた。
「真由美さん、問題ないですわ。今日の予定はどうされるのですか?」
エリー、いや愛莉は尋ねた。全身拘束刑受刑者に課せられていた拘束プログラムの解除が成功したので、ある程度自由に話せるようになってはいたが、まだ拘束が解けていないふりをしなければならなかった。淳司によれば、一ヶ月おきに全身拘束刑受刑者の評価が行われているので、その一ヶ月が経過する前には事件を解決する必要があるといわれていた。それを過ぎると、アイリとエリーが入れ替わっている事や、エリーの電脳に課せられていた拘束が解かれているのがバレてしまうかもしれないということだった。だから、時間はそれほど残っていないといえた。
「まずは、お姉さん、いや山村愛莉さんが在籍していたはずの研究所に行くわ。そして次は・・・」
行き先を口にする真由美を見て、愛莉は心の底から心配になっていた。危険な目に遭う事にならないかと。法の名のもとに冤罪で機械に学生を改造してしまう連中の懐にはいることを。でも、真由美の朗らかであるけど、なにか力強いものを持つ表情をみて、愛莉は彼女を守らなければならないと決心していた。それが妹のためだと。
そんな学校で愛梨は舞踏会に迷い込んだ掃除係と言われたかと思ったら、開学以来最高の成績優秀者ともてはやされたこともあった。両親は勤労者階級で既に鬼籍に入っていて財産を何ら持っていない少女が金持ちの学校に入れたことに生徒たちからは驚嘆と羨望、そして嫉妬と悪意で見られていた。実際、教師の目が届かないところで他の生徒たちからいじめを受けた事すらあった。そんな状況が変わったのが、一年後輩として入って来た真由美のお世話係になった事であった。
最初のうちは、学校の伝統で新入生をサポートする上級生であったが、いつの間にか本物の姉妹以上の感情を抱くようになってしまい、結局4年間も学年が違うのに寮のルームメイトになっていた。そんな二人を周囲の生徒はシスコン(シスターコンプレックス)だと興味本位な好奇な視線を浴びせていた。
そのため、大学に進学してもOG訪問と称して何度も学校に戻って真由美に勉強を教えたりしたことがあった。そして、帝央大学の一般入試が終わった直後、愛莉は真由美の前から失踪した。それ以来真由美は愛莉の消息を探していた。
「エリー、これでいいよね」
真由美は車椅子の荷物入れを確認していた。理工学部ビルへの訪問は異なる学部の生徒は著しく制限されていた。制限なく入れるのは物販部と学生食堂ぐらいのもので、入る時に厳重にセキュリティーチェックが行われることになっていた。
「真由美さん、問題ないですわ。今日の予定はどうされるのですか?」
エリー、いや愛莉は尋ねた。全身拘束刑受刑者に課せられていた拘束プログラムの解除が成功したので、ある程度自由に話せるようになってはいたが、まだ拘束が解けていないふりをしなければならなかった。淳司によれば、一ヶ月おきに全身拘束刑受刑者の評価が行われているので、その一ヶ月が経過する前には事件を解決する必要があるといわれていた。それを過ぎると、アイリとエリーが入れ替わっている事や、エリーの電脳に課せられていた拘束が解かれているのがバレてしまうかもしれないということだった。だから、時間はそれほど残っていないといえた。
「まずは、お姉さん、いや山村愛莉さんが在籍していたはずの研究所に行くわ。そして次は・・・」
行き先を口にする真由美を見て、愛莉は心の底から心配になっていた。危険な目に遭う事にならないかと。法の名のもとに冤罪で機械に学生を改造してしまう連中の懐にはいることを。でも、真由美の朗らかであるけど、なにか力強いものを持つ表情をみて、愛莉は彼女を守らなければならないと決心していた。それが妹のためだと。
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