冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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迷宮魔道な場所へ

84・巻き込みたくない(1)

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 愛莉はふとこんなことを思った。長崎淳司はなぜ真由美ちゃんを巻き込んだのだろう? 敵の巣窟に彼女を巻き込んで、わざわざ「装置」を仕掛けに行かせたのだろうか? もし淳司が「さる政治家の先生」の手先なら、その先生の力で掃除夫でも納入業者でも使って同じ事ができるはずだ。それに、理工学部の疑わしい者たちに「エリー」という存在を知らしめるために来てしまったとしかいえなかった。

 「ねえ、エリー。ごめんなさいね、みんなよりも遅れてしまったわね。なんか調子悪くなったのよね、さっき長崎先生にもらったジュースにおかしなものでも入っていたのかしら?」

 真由美はお腹の調子が悪くなったのが気に入らなかったようだ。どうも確実にトイレに行くように仕込んでいたようだ。

 「それはないと思いますわ。それにしても次の核融合炉の見学、行きますか?」

 一行は既に別フロワーの方に移動していた。もう追いかけても待ってくれそうになかった。そのせいか、真由美のタブレットにこんなメッセージが表示された。本日の見学はキャンセルで良いでしょうかというものだった。なんでも、部外者の退出時間が近づいているためだという。

 「真由美さま。残念ですが指示通りにいたしましょう。次の機会にしましょうね。山村愛莉さんの手がかりを探すのは? お父様にも頼んでおられますのよね?」

 エリー、いや愛莉はそういった。取りあえず今日の目的は達成したので、はやくここから立ち去りたかった。これ以上ここにいては危険だと察知していたから。しかし真由美の考えは違っていた。

 「そうね、お姉ちゃんは見つかっているようだわ。でもね、お姉ちゃんに何が起きたか知りたいのよ! もう少し付き合ってもらえないかしら、エリー?」

 真由美の言葉に愛莉はこれはまずい事になったと感じた。
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