冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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迷宮魔道な場所へ

108・メンテナンスブースのエリー(5)

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 淳司は愛莉の脳漿を加工して誕生した電脳に見入っていた。人間の脳の電脳化は、脳組織にナノマシーンを挿入する端子を挿入して、外部との接続が出来るように改造するものだ。そうすることで、外部とのコンタクトが可能担うが、一方で副作用があった。精神に負担がかかることで変調をきたすのだ。特に全身も機械化される場合には影響は測りしえないのだ。だから死刑相当の全身拘束刑の受刑者は自我を可能な限り無くす措置が取られる場合が多かった。愛莉が完全に一度はガイノイドに生まれ変わったのもそれが理由の一つだった。

 「にしても淳司。そのガイノイドって、この作戦が終わったら可能な限り人間に復元するんだろ? 結構、金がかかるんだろ。誰が出すんだよ?」

 「それか? 正直知らねえなあ。まあ、外観復元だけでも新型ガイノイドを数体買えるぐらいはいるだろう。でもクライアントの仕事だから口をはさむことはないだろ」

 「それもそうだな。それにしたって全身拘束刑でも、そこまで機械化されるのは酷いな。せいぜい、脱げないように外骨格を装着させて電脳化するぐらいだろ、フツーは! やっぱり、連中の意志かよそれは?」

 作業が一段落したエルンストはバイザーを外して淳司と同じようにアイリの電脳をのぞき込んでいた。アイリの電脳は接続されたまま頭部から引き出されていた。電脳を覆う保護膜の中には愛莉の脳組織のなれの果てがあった。

 「そのようだな。エキゾチック・ブレインにすぐにでも接続できるようになっている。だぶん、連中は何度か試験しているようだからな、いままで。まあ、起動に失敗しているようだが、次にこの電脳を接続したら、おそらく・・・地獄が始まるだろう」

 このとき、淳司の脳裏に恐ろしい考えがあった。万が一の時には目の前にある電脳を「連中」の手中に堕ちるまえに破壊しなければならないと。あの時と同じように。でもそれは山村愛莉の完全な殺害を意味していた。そんなことにならないようにやっていくしかなかった。
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