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迷宮魔道な場所へ
120・疑惑(5)
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午後、五限目の授業が終わった真由美は丹下犯罪学研究所に出向いていた。ガイノイド・エリーのメンテナンスが気になっていたのだが、中に入った途端、雰囲気がおかしい事に気付いた。エリーの前にいるのはドイツ人の男しかいなかったからだ。
「クラウゼさん。どうですかエリーは?」
少しだけ驚いた表情を浮かべたヘルムートだが、すぐ取り繕うような顔に変わっていた。
「安養寺さん。少しびっくりしますよ。いきなり話しかけられたら。順調ですよ、全て」
「全て? まさか記憶バンクをリセットしたわけないですよね? そんなことをしたらあたいの事を忘れました、だからはじめましてなんて事いったりしませんよね!」
「それはありません! 大丈夫です! 行動プログラムの再チェックだけですから!」
ヘルムートはモニターを不可視化してから真由美を見ていた。その顔になにかを隠しているように真由美は感じていたが、もう一人いるはずの人がいない事に気付いた。
「そういえば長崎先生はどうされたのですか? どこにいるのですか?」
淳司がいないことに真由美は不安になっていた。
「先生ですか? なにか用事があったようで昼過ぎにどこか行きました。後は頼むって言われました。週が明けたら問題なく戻ってくると思います!」
ヘルムートはそういったが、淳司のデスクの上に淳司が持っていたバックが置かれたままなのが気になった。でも、真由美はそれを指摘できなかった。頼りになる淳司もエリーもいないのに、自分よりも屈強な男に対峙することなんか出来ないと思ったからだ。
「ところで、安養寺さん。このカード・電脳を額にかざしてもらえませんか?」
「かざすだけでいいの?」
真由美は電脳化されていない人間にやる意味がないのにと不審に思いながら、手に取って額にかざしたが、何も起きなかった。真由美は淳司がいないことが気になっていたが、この場は早く離れた方が良いと思い、それ以上は何も言わず帰宅した。
ヘルムートは真由美が持ったカード・電脳のデータをエリーに接続した。すると、エリーの電脳、元は愛莉の記憶が共鳴し始めた。その様子にヘルムートはニヤリとした表情を浮かべていた。
「さあ、はじまるぞ。連中が勝つか連盟が勝つか、それとも我々が勝つか、やってみるしかねえがな」
ヘルムートの心にはダークサイトが宿っていた。
「クラウゼさん。どうですかエリーは?」
少しだけ驚いた表情を浮かべたヘルムートだが、すぐ取り繕うような顔に変わっていた。
「安養寺さん。少しびっくりしますよ。いきなり話しかけられたら。順調ですよ、全て」
「全て? まさか記憶バンクをリセットしたわけないですよね? そんなことをしたらあたいの事を忘れました、だからはじめましてなんて事いったりしませんよね!」
「それはありません! 大丈夫です! 行動プログラムの再チェックだけですから!」
ヘルムートはモニターを不可視化してから真由美を見ていた。その顔になにかを隠しているように真由美は感じていたが、もう一人いるはずの人がいない事に気付いた。
「そういえば長崎先生はどうされたのですか? どこにいるのですか?」
淳司がいないことに真由美は不安になっていた。
「先生ですか? なにか用事があったようで昼過ぎにどこか行きました。後は頼むって言われました。週が明けたら問題なく戻ってくると思います!」
ヘルムートはそういったが、淳司のデスクの上に淳司が持っていたバックが置かれたままなのが気になった。でも、真由美はそれを指摘できなかった。頼りになる淳司もエリーもいないのに、自分よりも屈強な男に対峙することなんか出来ないと思ったからだ。
「ところで、安養寺さん。このカード・電脳を額にかざしてもらえませんか?」
「かざすだけでいいの?」
真由美は電脳化されていない人間にやる意味がないのにと不審に思いながら、手に取って額にかざしたが、何も起きなかった。真由美は淳司がいないことが気になっていたが、この場は早く離れた方が良いと思い、それ以上は何も言わず帰宅した。
ヘルムートは真由美が持ったカード・電脳のデータをエリーに接続した。すると、エリーの電脳、元は愛莉の記憶が共鳴し始めた。その様子にヘルムートはニヤリとした表情を浮かべていた。
「さあ、はじまるぞ。連中が勝つか連盟が勝つか、それとも我々が勝つか、やってみるしかねえがな」
ヘルムートの心にはダークサイトが宿っていた。
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