元ホームレス・タクヤとネコ耳娘アサミ魔道伝:Re

ジャン・幸田

文字の大きさ
145 / 166
第伍章:神殿にて

143.予算の無駄使い?

しおりを挟む
 ギルドの本部では筆頭統領が、異世界から召喚された者、アサミとタクヤを迎えにいくのに、わざわざ本部直属の要塞馬車を派遣した事が、予算の無駄使いじゃないかと問題になっていた。結局、筆頭統領のカミーナ・カンヴァーラは、”筆頭統領の夜食番”が使う金庫から必要経費をポーンと支払った。この金庫は筆頭統領の機密費というのは公然の秘密だったので、それ以上は追及されなかった。

 ギルドという組織はこの世界では国家よりも強大な権力をもっているが、その意思決定機関の運営評議会は各国の魔道士や各国の元首などで構成されていた。その評議会の上に位置するのが統領委員会であったが、通常は執行を管理するだけの組織で非常事態が起きなければ、事実上の閑職とされていた。

 その委員会のトップの筆頭統領の通常の業務は、決裁書類の確認と署名捺印だけというもので、自分では一切の意思表明が出来ないという物であった。いわば象徴的な地位であった。そのため魔道士ギルドのトップでありながら、筆頭統領が表に出る事はあまりなかった。そして時の筆頭統領は北の大陸にある大国フォムラスで女王をしていたが、そのまえは巫女をしていた。

 そのカミーナのところに戻ってきたのがメイファンだった。メイファンはアサミたちの追尾から急遽呼び戻されたのだ。

 「ねえ、筆頭統領! 正直に言わせてもらうと・・・」

 メイファンが切り出そうとしたところ、カミーナは自分で淹れてきた茶を差し出してきた。いまいる筆頭統領の執務室は尖塔の最上階にあって、幽閉部屋と陰口があるほど狭かった。

 「予算の無駄使い、でしょ! いいたいことは!」

 カミーナに勧められた茶を口にすると、メイファンは不満げにいった。

 「そう思いました、いままで異世界からの召喚者といえば、このジェムシームといった大都市じゃないですか、たいていは。
 なんで二人は辺鄙な地の果てに召喚されていたなんて・・・そんなに遠い所なら最寄に住む管轄魔道士にでも任せればいいではないですか? そう考えていたのに
 でも・・・聞いておられると思いますが、なぜあいつらは狙うのですか?」

 メイファンはそういうと、神殿から預かって来た紙をわたした。それにはアサミの前世とそれより前の生に関する情報がかかれていた。それをめくっていたカミーナの顔色はみるみる悪くなっていった。それは紙に書かれていることが原因だった。

 「それはね、あの二人が今後のこの世界の将来を左右しそうなんだよ。そして場合によっては世界は終わることになるかもしれないというわけよ。死の女神の再臨によって!」

 カミーナが口にした単語は、この世界では悪魔か死神に匹敵する凶事を意味していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

俺のレベルが常人では到達不可の領域にある件について ~全ユーザーレベル上限999の中俺だけレベル100億いった~

仮実谷 望
ファンタジー
ダンジョンが当たり前のようにある世界になって3年の月日が流れてずっとダンジョンに入りたいと願っていた青年が自宅にダンジョンが出現する。自宅の押し入れにダンジョンが出現する中、冷静に青年はダンジョンを攻略する。そして自分だけがレベル上限を突破してレベルが無尽蔵に上がり続けてしまう。そうしていづれは最強への探索者として覚醒する青年なのであった。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

【新作】1分で読める! SFショートショート

Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...