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第一章:気が付いたらネコになっていたアサミ
001.強い陽射しの中であの人を求めて!
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ここはどこだろう? わたしはなんだろう? 草むらを歩いているのは間違いない。そこは蚊が飛び交って鬱陶しい場所だった。でも平気、毛むくじゃらなんだから。でも目の周りによって来るのは苦手よやっぱり!
わたしは当てもなく歩きまわっているわけではないのよ。いつも会っていたあの人の姿があの場所にないから探しているのだ。その場所は棘だらけの鉄線に囲まれてあの人だけでなく人間みんなが入れなくなっていたから。そこにわたしが入れても、あの人はいなかった。そして匂いが薄れたのでどこかにいないか探し始めたのだ。あのひとを!
いま強い日差しの中を喉の渇きに苦しみながら歩いていた。あまりの暑さで時々草陰で休んでいたけど。そしてぐったりとして眠ったりした、空腹にも苦しんで。わたしの足はボロボロ、毛も汚れてしまっているし、身体に取り付いているノミが血を吸っている。そうだわたしは親や兄弟からはぐれたノラネコだ! しかし、なんで自我があるのだろうか、わたし? 少なくとも姉弟にそんなものなどなかったはずなのに! それはなぜなの? でも一番求めているのは今違っていた!
迷い迷いながら、あの人を探していた。わたしを”アサミ”と呼ぶ、その人を。わたしは何故その人を探すの? エサをくれるから? 可愛がってくれるから? いいえ、愛情をそそいでくれるからよ! でも、わたしってケダモノよね? なんで人間らしい感情があるというの? わたしはただのノラネコのはずなのに。
わたしが生まれたのは駅の倉庫の中。倉庫の傍にサクラが咲いていたので春の事だったと思う。その花びらで兄弟たちとじゃれ合ったりしていたの。そこで育った後は・・・間の事はよく覚えていないけど親兄弟と別れてしまったようで、気が付いた時にはとある工場の周りを縄張りにしていたのよ。幸いそこには先輩のネコが居なかったから助かったけど。
その時、知り合ったのが彼だった。わたしを”アサミ”と呼ぶ人間。ただの人間のはずなのに、わたし運命を感じたのよ。工場の周りでたむろする飼いネコに言われたのよ。もしかすると飼ってくれる運命の人と出会えるかもしれないと。気に入ってくれたら飼い猫にしてくれるかもと。だからわたしは思いっきり甘えたのよ彼に! そうすれば飼い猫として食べる事やねぐらに苦労する事などなくなると、そう思ったのよ。
でも、その人はわたしを家に連れて帰ってくれないの。だから飼いネコにはなれなかったの。彼はネコを飼えるだけの力がなかったようだった。だから、甘えても飼い猫になれないと分かったの。
でも、それでもわたしは彼といるだけで幸せだったのよ。なぜなんだろう? 彼とは生まれる前の世界で出会ったような気がするのよ。それっていったい何の感情なんだろうか? これって恋なの? 相手が人間の男だというのに! 生まれ変わりだから? 誰かの?
わたしは探していた。いつも縄張りにしていた工場に人が全く居なくなったあたりからずっと離れた場所を。そう彼も含めて! その彼を探してわたしは彷徨い歩いていた。なぜ探すのだろうか? もう彼がこの世界に居ないかもしれないというのに。それに探す当てなどあるのだろうか? わたしの命が尽きるまでに見つけられるのだろうか?
そんな絶望的な状況でも、わたしは探していた彼を。彼の腕に抱かれていた日々を思い出して。ネコと人間は交わる事など出来るはずないというのに! この時、なんで彼を探していたんだろうか、その答えがわかったのはしばらくしてからだ。その時は探す事しか目的がなかった。
炎天下の太陽の下、大地には熱気が漂っていたが、歩くだけでもわたしは死にそうになっていた、なぜ、そこまでして彼を探さないといけないの? その答えは誰が出してくれるのよ! 目を覚ましたわたしは夕陽が差し込む夏草を掻き分けながら進んで行った。蚊はさらに活動を活発にしわたしを包囲していたけど、蹴散らしていった。
そんな工場周りの縄張りを捨て彼・タクヤ、彼との旅の始まりだとは、その時はまだ気が付かなかった。ノラネコの自分にアサミの名前をつけてくれた人間の男を捜して彷徨っていた。この旅が彼との長い旅の始まりであった・・・その辿りつく先はいったいなにがあったか?
わたしは当てもなく歩きまわっているわけではないのよ。いつも会っていたあの人の姿があの場所にないから探しているのだ。その場所は棘だらけの鉄線に囲まれてあの人だけでなく人間みんなが入れなくなっていたから。そこにわたしが入れても、あの人はいなかった。そして匂いが薄れたのでどこかにいないか探し始めたのだ。あのひとを!
いま強い日差しの中を喉の渇きに苦しみながら歩いていた。あまりの暑さで時々草陰で休んでいたけど。そしてぐったりとして眠ったりした、空腹にも苦しんで。わたしの足はボロボロ、毛も汚れてしまっているし、身体に取り付いているノミが血を吸っている。そうだわたしは親や兄弟からはぐれたノラネコだ! しかし、なんで自我があるのだろうか、わたし? 少なくとも姉弟にそんなものなどなかったはずなのに! それはなぜなの? でも一番求めているのは今違っていた!
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その時、知り合ったのが彼だった。わたしを”アサミ”と呼ぶ人間。ただの人間のはずなのに、わたし運命を感じたのよ。工場の周りでたむろする飼いネコに言われたのよ。もしかすると飼ってくれる運命の人と出会えるかもしれないと。気に入ってくれたら飼い猫にしてくれるかもと。だからわたしは思いっきり甘えたのよ彼に! そうすれば飼い猫として食べる事やねぐらに苦労する事などなくなると、そう思ったのよ。
でも、その人はわたしを家に連れて帰ってくれないの。だから飼いネコにはなれなかったの。彼はネコを飼えるだけの力がなかったようだった。だから、甘えても飼い猫になれないと分かったの。
でも、それでもわたしは彼といるだけで幸せだったのよ。なぜなんだろう? 彼とは生まれる前の世界で出会ったような気がするのよ。それっていったい何の感情なんだろうか? これって恋なの? 相手が人間の男だというのに! 生まれ変わりだから? 誰かの?
わたしは探していた。いつも縄張りにしていた工場に人が全く居なくなったあたりからずっと離れた場所を。そう彼も含めて! その彼を探してわたしは彷徨い歩いていた。なぜ探すのだろうか? もう彼がこの世界に居ないかもしれないというのに。それに探す当てなどあるのだろうか? わたしの命が尽きるまでに見つけられるのだろうか?
そんな絶望的な状況でも、わたしは探していた彼を。彼の腕に抱かれていた日々を思い出して。ネコと人間は交わる事など出来るはずないというのに! この時、なんで彼を探していたんだろうか、その答えがわかったのはしばらくしてからだ。その時は探す事しか目的がなかった。
炎天下の太陽の下、大地には熱気が漂っていたが、歩くだけでもわたしは死にそうになっていた、なぜ、そこまでして彼を探さないといけないの? その答えは誰が出してくれるのよ! 目を覚ましたわたしは夕陽が差し込む夏草を掻き分けながら進んで行った。蚊はさらに活動を活発にしわたしを包囲していたけど、蹴散らしていった。
そんな工場周りの縄張りを捨て彼・タクヤ、彼との旅の始まりだとは、その時はまだ気が付かなかった。ノラネコの自分にアサミの名前をつけてくれた人間の男を捜して彷徨っていた。この旅が彼との長い旅の始まりであった・・・その辿りつく先はいったいなにがあったか?
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