元ホームレス・タクヤとネコ耳娘アサミ魔道伝:Re

ジャン・幸田

文字の大きさ
29 / 166
第一章:気が付いたらネコになっていたアサミ

029.転生提案

しおりを挟む
 「イリスさん、もし選べるとしたらどんな救済案があるというのですか?」私はとりあえず聞いてみることにした。
  ただ、定められているはずの運命が変わるのを防げなかったり、救済が必要となるぐらいまで放置するような方の案なので不安ではあったが。

  「まず、もう一度永川亜佐美さんとしてやり直すのは不可能です。お亡くなりになってから年数がたっていますから」

  「それもそうね、身体はバラバラになっていますし・・・関係ないかも知れないですが、最期の時に私の隣に座っていた美保子はどうなったんですか? 彼女は中学生からの友人だったのですが」
  そう質問すると彼女はしばらく沈黙した後に語り始めた。

  「美保子さんでしたら、あなたと一緒にお亡くなりになって、今はドイツ人少女として生活しているそうです。まあ、次の次ぐらいに生まれ変わったらお会いできるかもしれませんけど」
  まあ、美保子は憧れのドイツに転生していると知って少しホットした。

  「それもそうよね、日本人としてまた生まれ変われないの、あたし?」

  「それは可能です。アサミ様は過去十回のうち日本人として四回転生していますから。でも、それにはいくつか超えないといけません。
  まずネコとしての生涯を全うしなければいけません。ネコといった生物の場合、エンジェルは一切関与できないので、明日車に轢かれて死ぬかも知れませんし、どこかの親切な人に拾われ長生きするかもしれません。
  また、そこのタクヤ様のネコとして生きていくのもよいでしょう。そうそうタクヤ様も救済しないといけないので、その場合なんかの職業と住居を得られるように采配いたします。
  まあ、ネコとして生きている間は前世がアサミ様だったことは忘れていただきますが」

  そういったが、あたしはそれは嫌だった。むかし、ネコを飼っていた事があって、今度生まれ変わったらネコがいいなあと思ったことがあったけど、今の境遇を思うとどうしようもないと思った。
  それに折角人間のアサミの記憶が戻ったのにまた忘れるなんて、もう一度死ぬのと一緒ではないかと感じていた。

  「それって。もう一度死ぬのと一緒ですよね。仮にネコとして生涯を終えたらどうなりますか」

  「そうですねえ、とりあえず天国に一度帰っていただいて、然るべき時期に亡くなったタクヤ様の魂と一緒に転生していただきます。
  まあ時代はどうなるかわかりませんし、どんな状況になるかわかりませんが、とりあえず彼と結ばれるようにいたします。
  これはもう確約された事です。さすがに評議会も二度どころか三度も結ばれなかった魂を不憫に思っておりますので」

  そんなことで同情されるぐらいなら、最初からきちんとしてほしかったのにと思わずにいられなかったが、あたしは話を続けた。

  「ネコとしての生涯を閉じなくても、いまのアサミの記憶を持って転生することは可能ですか?」

  「それは可能です。ただ、その場合は今地球のあるのとは違う宇宙、わかりやすくいえば違う世界から召喚してもらうことです。
 実はこの宇宙は膜状の複雑な構成になっておりまして、あらゆる空間とは繋がっておりまして、わたしら管理している宇宙はいくつかありまして、そのうち・・・」

  エンジェルさんの説明は一時間近く続いたが、死ぬ前は文系だった私にとってなんのことか判らない話題だった。まあ宇宙物理学が好きな理系女子だったら目をときめかせていたかもしれないけど。

  「長い講義ありがとうございます。とりあえず、この世と同じ世界はいっぱいあるんですよね、そんな話だったんですよね」

  「まあ、そんなところです。この地球も三千万世界のひとつフェアテクドに属していますが、他の世界なら召喚という手続きをとればいいです。
  いくつか候補はあります。まず、ナヴァルの惑星ジヴァル。ここは高度な科学文明社会でして、とりあえずあなたは他の惑星からの難民ということにしましょう。
  この場合は永川亜佐美様の肉体を再構成します。もっとも、その惑星の住民は機械化されるのが居住の条件ですが・・・・」

  「そんなサイボークアニメみたいなのは嫌です! 他にありませんか?」

  「次ですか、えーとねえデヴァルビラの惑星チャバル。ここは地球で言うところの中華世界風の社会です。
  あなたは錬金術師によって生み出された新造生命体のひとつということです。まあ奴隷化される危険がありますので、とりあえず自力で脱出していただいて、革命勢力に合流してください。そうすれば建国の母として末代まで慕われるかもしれませんが・・・」

  「それじゃあ、わたしは人造生命体か何かですか? そんなの嫌です。奴隷にも革命戦士にもなりたくありませんし、建国の母として崇められたくありません!!」

  それから後も、エンジェルはトンチンカンと思えるぐらい変な救済案ばかり提案してきた。
  中には惹かれるものもあったけど、この世界では平凡な女子大生だったのが英雄になったり海賊になったりしなければならないのよと、呆れてしまった。
  しかし大事な事を思いだした。とにかくタクヤと一緒になりたかったことを! いくら他の世界に転生しても素敵な男性と出会えることまで保証されていなかったのだ。仮にアサミとしての記憶があったとしても、そこに愛しいタクヤはいないのは間違いなかった!

  「エンジェルさん。私のわがままを聞いてくれませんか。さっきから色々提案していただいていますが、そこにいるタクヤのことを忘れていませんか? 
  来世で一緒になれるかもしれませんが、私は今のタクヤと一緒になりたいのですよ。今のアサミのままで! 多少姿形はかわってもいいですから、一緒に召喚していただけないでしょうか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

マカロニ
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

{完結保証}規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜

Saioonji
ファンタジー
母に殴られ、命を奪われた――そのはずだった。 だが目を覚ました先は、白く豪奢な王城の一室。 赤子の身体、仕えるメイド、そして“皇子”という立場。 前世では愛されず、名前すら価値を持たなかった少年が、 今度は世界の中心に生まれ落ちてしまった。 記憶を失ったふりをしながら、 静かに、冷静に、この世界を観察する皇子。 しかし彼の中には、すでに常識外れの思考と力が芽生えていた。 ――これは復讐でも、救済でもない。 自由を求めただけの少年が、 やがて国を、歴史を、価値観そのものを揺るがしていく物語。 最強であることすら、彼にとってはただの前提条件だった。 重複投稿作品です 小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

【新作】1分で読める! SFショートショート

Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。

処理中です...