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第参章:この世界で二人生きていくためには
077.遺跡
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アサミが着替えている間、部屋から追い出された二人は地下室内を歩き回っていた。ここは「破局戦争」とよばれる終末戦争の遺跡の一部であった。もとは軍事施設だったと聞いたけど、それがどんなものかはわからなかった。ただ風化が進行している箇所も随所にあるので、物凄い年月が経過しているのは間違いなかった。
「おじさん。この世界の歴史は馬車にあった本で少し読んだけど、どうして科学技術よりも魔道のほうが発展したのですか?」
タクヤは胸に忍ばせていた古い小冊子をヴァリラディスに差し出していた。それは派遣魔道士協同組合の概略史を取りまとめたものだった。
「それはなあ、科学技術が人々に繁栄をもたらせた一方で、争いを誘発したためだ。もちろん、いまの世界にも貧富の格差はあるし、諸侯の領地の間でも格差はある。
しかし、破局戦争の前は強欲な金持ちはさらに豊になり、政まつりごとに従事する者は人々に対立と分断、他国に対しては強硬姿勢の貫徹を、そんなふうに緊張が高まっていたのだ。
その結果、その世界は滅んでしまったわけなのさ。そのかわり、台頭してきたのが現在の自給自足を基本とする循環型体制というわけさ。科学技術がもたらす幸福よりも、精神的に豊なものを求めているのだよ。
でも、わしのように永久炉や機械馬といった過去の科学技術を使っている者もすくなくないけどさ」
そういいながらも、目ぼしいものはないかとヴァリラディスは物色しているようだった。この地下室には古い陶器やその破片、古くなって捨てられたような道具類が散乱していたが、ドロドロに解けて錆づいた金属の塊があちらことらにあった。
「タクヤさん、聞こえてきませんか? この地下室に木霊する音を? これは、ここに閉じ込められた者の叫びですよ」
「何を言われるのですか、それって幽霊ですか?」タクヤは少し引き気味だった。
「ここに転がっている金属が溶けた塊をみていると、なんとなく聞こえてくるような気がするものでして。もしかすると、ここで一瞬にして命を奪われた者達の魂の叫びのようなのかなと。
まあ、幽霊かどうかは確かめようはありませんが、恐ろしいといつも思うところですここは」
そういわれると不気味な気配を感じてしまった。どうやら破局戦争というのは、一種の終末戦争ということのようだった。どのような兵器か知る由もなかったが、核兵器のようなものが使われたのかもしれないとタクヤは考えていた。
「おじさん。この世界の歴史は馬車にあった本で少し読んだけど、どうして科学技術よりも魔道のほうが発展したのですか?」
タクヤは胸に忍ばせていた古い小冊子をヴァリラディスに差し出していた。それは派遣魔道士協同組合の概略史を取りまとめたものだった。
「それはなあ、科学技術が人々に繁栄をもたらせた一方で、争いを誘発したためだ。もちろん、いまの世界にも貧富の格差はあるし、諸侯の領地の間でも格差はある。
しかし、破局戦争の前は強欲な金持ちはさらに豊になり、政まつりごとに従事する者は人々に対立と分断、他国に対しては強硬姿勢の貫徹を、そんなふうに緊張が高まっていたのだ。
その結果、その世界は滅んでしまったわけなのさ。そのかわり、台頭してきたのが現在の自給自足を基本とする循環型体制というわけさ。科学技術がもたらす幸福よりも、精神的に豊なものを求めているのだよ。
でも、わしのように永久炉や機械馬といった過去の科学技術を使っている者もすくなくないけどさ」
そういいながらも、目ぼしいものはないかとヴァリラディスは物色しているようだった。この地下室には古い陶器やその破片、古くなって捨てられたような道具類が散乱していたが、ドロドロに解けて錆づいた金属の塊があちらことらにあった。
「タクヤさん、聞こえてきませんか? この地下室に木霊する音を? これは、ここに閉じ込められた者の叫びですよ」
「何を言われるのですか、それって幽霊ですか?」タクヤは少し引き気味だった。
「ここに転がっている金属が溶けた塊をみていると、なんとなく聞こえてくるような気がするものでして。もしかすると、ここで一瞬にして命を奪われた者達の魂の叫びのようなのかなと。
まあ、幽霊かどうかは確かめようはありませんが、恐ろしいといつも思うところですここは」
そういわれると不気味な気配を感じてしまった。どうやら破局戦争というのは、一種の終末戦争ということのようだった。どのような兵器か知る由もなかったが、核兵器のようなものが使われたのかもしれないとタクヤは考えていた。
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