【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田

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国民の義務として機械化兵士にされる少女

後編

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 美樹は戦慄していた、この機械子宮の中では自分はただの材料なんだと。自分の身体であっても、もう自分ではどうすることも出来ないと感じると・・・感じたところで止まることも止めてもらうこともなかったが。

 次に無理やり口を開けられると、呼吸用と栄養摂取用のチューブを口や鼻から挿入され、さらにマウスピースを入れられ口蓋が封印された。そして眼窩を開かれるとモニターになっているコンタクトレンズを眼球に被せられ瞼も封印された。そして頭髪も特殊なポリマーで固められてしまった。コンタクトの映像には自分の今の姿が映し出されていた。

 そのとき、美樹の体表には身体機能維持のためのバイオラテックスが貼り付けられていた。このバイオラテックスは皮膚組織の新陳代謝機能の代行もしていて、汗や垢になるものを体外に排出したり体温の調節を行ってくれるものだ。そのバイオラテックスは真っ黒な素材なので美樹の身体は黒いゴム人形みたいになっていた。

 そのあと、機械化子宮の本格的操業が始まった。素体状態の美樹をロボットのボディに閉じ込める作業である。真っ黒な美樹の身体に緩衝材になる高機能ポリマー樹脂が塗りつけられ、一種のパワードスーツである機械化兵士の外骨格が張り付いてきた。関節部は蛇腹のようになっていて、隙間なく美樹の身体を覆っていった。しばらくすると美樹は完全にロボットにされてしまった。そして各種チェックが行なわれ入って二時間して美樹は機械化兵士に生まれ変わった。

 「ようこそ、我が部隊に! あなたの認識番号は6800451、ミキ一等兵よ」
 
 ミキは以外にも気持ちがいいことに感動していた。生まれたときからずっとロボットであったかのような感覚に。ロボットになればコンプレックスに感じていた地味な自分の顔などないから。

 「ありがとうございます。機械化兵士として八週間の教育課程に就きます、なにとぞご指導をお願いします」

 ミキの合成音声はそう言った。しかしミキに内蔵された美樹は気がついた。私は本当はロボット稼働のための素材にされたことに! でも、自分では脱ぐことができない! だからロボットに閉じ込められた!!

 そのあとの美樹であるが、高い適応能力と戦闘能力が評価され30年近く機械化兵士のままだったのは別の話である。

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