毛玉スライム飼ったらこうなる

一樹

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 「ただいま!!」

 あたしは帰るなり、居間で猫を撫でながらテレビを観ていたばあちゃんに言った。 

 「あら、おかえり。
 お勉強会、どうだった?」

 のんびりとばあちゃんが訊いてくる。
 そう、そのことを相談しようと魔法とかに詳しいことで有名なエルフでもある、ばあちゃんに声をかけたのだ。

 「そのことなんだけど!」

 あたしは、抱き抱えていたタマを見せながら、今日あったことを説明した。
 つまり、特別ゲストの講師であるあのイケメン大学生に言われたことだった。

 「タマの幻覚魔法に、多幸感?
 あ~、はいはい。それね。
 大丈夫大丈夫。タマはココロのこと食べたりしないよねぇ?」

 何の話かと言うと、タマの芸の一つである【桜吹雪】は、本来モンスターが捕食の時に使う技らしい。
 正式名称は、ばあちゃんが今口にした【幻覚魔法】。
 要は幻を見せて餌を捕まえ、逃げられないようにフワフワとした幸せな気分にさせるフェロモンを出す。
 苦痛を感じさせず、生きたまま、そして活きのいいまま食べる為の技らしい。
 怖っ!!

 ばあちゃんに言われ、タマはあたしを見てスリスリとその胴体を擦り付けて甘えてきた。

 「食べられる心配はしてないよ!
 そうじゃなくて、ほら、多幸感ってのが気になっちゃって。その、なんつーの?
 アブナイ白い粉的な感じで依存しちゃったりしない?
 大丈夫??」

 「大丈夫大丈夫。
 ココロは、桜吹雪を見てどんな風に感じてるの?」

 「えっと、普通に綺麗だなって。花見したいな、くらい」

 「ほら、それなら大丈夫。
 ずっとそこにいたい、とか、ずっと桜を見ていたいとかじゃないもの。
 そんな風に偽物作り物の桜に心を奪われてないなら、大丈夫」

 そういうものらしい。
 まぁ、たしかに本物の桜の方があたしは好きだ。
 桜吹雪の桜は、なんというか作り物めいていて、本物とはやはりちょっと違うのだ。

 「そっか、ばあちゃんがそう言うなら安心だ」

 こういう知識は、やっぱりばあちゃんが頼りになる。
 お母さんは、まぁ、普通だ。
 お父さんの有するそっち系の知識は、うん、生け贄が必要だったり、なんというか不穏な奴だから時と場合かな。
 
 「あ、そういえば講師の人がこれ、御家族に渡してくださいって」

 あたしはばあちゃんへ、ジーンさんから受け取った手紙を渡した。

 「んー、なんだろうね」

 呟きながら、ばあちゃんは老眼鏡を取り出すと掛けて手紙の中を検める。
 見た目、あたしと同じか若いくらいなのに、こういうのを使っているのをみると、あぁばあちゃんなんだ、と妙な安心感を覚える。

 「あらあら、これはこれは」

 ばあちゃんが楽しそうな声を出した。

 「ココロ、あんた、魔物使いテイマーの才能があるかもだって。良かったね。
 プロのお墨付きだよ」

 「……はい?」

 ばあちゃんが実に楽しそうだ。
 
 「この際だし、ちゃんと鑑定してもらいに行こうかね。
 古い習慣ってことでやってなかったけどさ」

 「えー」

 ばあちゃんはノリノリだ。
 孫の才能がわかって嬉しいのかもしれないが、あたしは面倒臭い。
 というか、才能があったとしてもそれでお金を稼げる人はひと握りだ。
 あんまりネガティブなことは言いたくないが、ばあちゃんが期待をすればするほど。
 そして、嬉しそうにすればするほど、それに応えられなかったら恥ずかしいし嫌だな、と考えてしまうのだ。
 あと、なんて言うか、才能が鑑定によって証明されてもされなくても、それはそれで、あたしがなんか嫌なのだ。
 だから、

 「いや、別にいいよ。面倒いし」

 「そんなこと言わないの。
 今日はおめでたい日だから、ご馳走だね。
 手巻き寿司でいい?」

 なんで、たいがいこういう事があると手巻き寿司なんだろ。
 高校の推薦取って、無事合格した時も手巻き寿司だったし。
 ばあちゃんは、生魚も火を通した魚も食べられない。
 手巻き寿司の時は、だいたいいつも野菜巻きか納豆巻きを食べている。
 孫のためとはいえ、自分が食べられないご馳走を作ってもらうのは気が引けた。

 「いや、だから」

 あたしが、ばあちゃんを止めようとすると、そこに上の妹のマリーが現れた。

 「あ、はいはい!
 なら、ハンバーグ食べたい!!
 お祝いなんだからさ!」

 こいつ、話聞いてたな。
 つーか、お前も種族的にはハイエルフだろう。なんで肉食べられるんだよ。好きなんだよ。
 昔はそんなに気にして無かったけど、マリーは世間の普通には当てはまらないんだと最近はつくづく思い知るようになった。
 混血か? 混血だからか?
 というか、いつかの散歩の時、こいつが言った通りの事になってしまった。
 ばあちゃんは、

 「ココロも好きだったよね、ハンバーグ。
 それでいいかい?」

 なんて言って、ほんとにニコニコ嬉しそうに顔を綻ばせるのだった。
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