毛玉スライム飼ったらこうなる

一樹

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 駅まで自転車で約四十分。
 そこから電車に乗り、さらに一時間。
 魔物使い、という能力というか職業は昔からそれなりに需要があり、さらには近年ペットとしての需要も増えているためか、事前予約をすれば専用車両に乗れる、ということは、今回のことが無ければ多分一生知ることはなかったかもしれない。
 何しろ、田舎は基本車社会だから。

 タマについて少し説明すると。
 出がけに、お母さんに呼ばれてお父さんを起こす手伝いをした以外は、普通に家を出ることが出来た。
 なにしろ、お父さんは中々起きてくれないのだ。
 そこで、タマの出番というわけである。
 エルフよりも人間よりも頑丈な体を持つお父さんを、的確に起こすため、最近はタマがその任を担っていた。
 いつの間にか、お母さんがタマに仕込んでいた芸。
 【目覚まし】を使うのである。
 芸というか、ただ布団を被ったお父さんの腹の上で飛び跳ねるだけなのだが、これが意外に効果があった。 
 少なくともタマは、ダンピールの頑丈な体にダメージをそこそこ与えられるらしい。
 さて、その仕事を終えてからは駅まであたしが自転車で走った。
 タマは、自転車のカゴの中にすっぽりと、まるで液体か? と疑うフィット感でおさまり気持ちよさそうに風を受けていた。
 駅からは、布製のペット専用キャリーバッグに入ってもらい、電車に乗って移動。
 専用車両だけあって、ちらほらと犬猫、ハムスター、爬虫類etc.....。
 そして、モンスターのペットの姿もあった。
 ドラゴン、スライム、角の生えたウサギ、牙の目立つ猫etc.....。
 そんなペット達がキャリーバッグ等に入れられるか、リードを付けられてまったりくつろいでいたり、もふもふされていたりする。
 あの猫可愛いなぁ。
 ちなみに、席は指定席だ。
 切符を確認して、席を見つけ、座る。
 ペット同伴で、ケースバイケースらしいがあたしの場合は二席分で取ってある。
 
 「ボックス席か」

 まぁ、仕方ない。
 今のところ目の前の席には誰も座っていなかった。
 あたしが座ると同時に、発車を知らせるベルが鳴る。
 やがてゆっくりと電車が動き始めた。

 「テュケるる~。テュケるる~」

 タマは落ち着かないらしく、そうやって鳴いていた。
 その度に、暇つぶしにと持ち込んだ文庫本を読む手を止めて、あたしはタマに話しかけていた。

 「んー、ん、そうだねぇ。電車だよー。タマ、いい子にしててねぇ」

 何度かそれを繰り返していると、次の駅に着いた。
 そこでさらに、この専用車両にも人とペットが乗り込んできた。
 かと思うと、普通の人の乗り入れとは違ったざわめきが聞こえてきた。
 なんというのだろう、アレだ、黄色い悲鳴というやつだ。
 芸能人、アイドルでもいたのかな?
 そんなことを考えて、再度文庫本に目を落とした時だった。

 「おや? あ、タマちゃんにココロさん!
 久しぶり!」

 そう男性に声を掛けられた。
 見れば、有名魔物使いテイマーであるジーンさんが立っていた。
 その手には席が記載された切符。
 ありゃまー、目の前の席、ジーンさんだったんだ。
 なんという偶然。というか、あたしのこと覚えているとは。
 いや、それもそうか。流行りの小説内でいうところのをした人の顔くらい覚えられても仕方がない。

 「ジーンさん、お久しぶりです」

 挨拶をしつつ、あたしは彼の足元へ視線を落とした。
 そこには、先日の勉強会ではいなかったリードを付けられたワンコがちょこんと礼儀良くお座りしていた。
 尻尾をパタパタと振っている。

 可愛いなぁ。

 そう思っていると、なにやら視線が刺さった。
 他の乗客、それも女性客からの視線だった。
 あー、そっかジーンさんこっちの界隈だと有名人なんだっけ。
 で、この顔立ちだもんな。
 そりゃ、女性に人気にもなるか。
 席を替えたいが、それはそれで問題がありそうだ。
 というか、指定席意外に勝手に移動、座るのは許されていない。
 昔は出来たらしいが、今はダメらしい。
 とりあえず、視線はスルーしよう。そうしよう。
 ジーンさんが席に腰掛け、その膝の上にワンコが飛び乗った。
 それを見てから、あたしは読書を再開しようとしたのだが、それよりも先にジーンさんが話しかけてきた。

 「今日はお友達と一緒じゃ無いんだね」

 「えぇ、いろいろありまして」

 あたしは苦笑しつつ、ジーンさんの講習会のその後について軽く話した。
 父親がドライブついでに鑑定をしてもらうため、有名観光地でもある神社に連れて行ってくれたこと。
 そこで、無事? に【魔物使いテイマー】の才能があるとわかったこと。
 【言霊使い】に関しては、レアという話だったのでとりあえず言わないでおいた。
 個人情報になるし。
 変に情報が拡散されて身バレするのは勘弁したかった。

 「おぉ、やっぱり!
 俺の目に狂いはなかった。安心したよ」
 
 「まぁ、そんなわけで鑑定して適正職業も判明したので、定期的に国が開いている勉強会に出ろってなって」

 そこで、ジーンさんが口を挟んだ。

 「あー、もしかして、と思ってたけど。
 やっぱり、そうか」 

 「?」

 あたしが首を傾げていると、ジーンさんが続けた。

 「いや、ね。
 オレもその勉強会に行くんだ。今回も講師として。
 オレだけじゃなくて、この車両に乗ってる人、七、八割くらいはその勉強会に出る人達だよ」

 そうなんだ。

 「へぇ。ということは、ここにいる皆さんテイマーなんですか?」

 「いいや、勉強会に参加する人の一割は自分の家族の一員でもあるペットでありモンスターのために知識を増やしたいって人達だ。
 たとえば怪我や病気になった時、知識の有無で初動が違ってくるしね。
 実際、勉強会に出る人の中には、現役治癒術師ヒーラーの人なんかもいるよ。
 モンスター専門の治癒術師ヒーラー。モンスターに関する知識を増やして、自分のペットや他の人がテイムしたモンスターを治癒、治療するために勉強してる人達。
 一般的には獣医さんって呼ばれてる人達だ」

 ガチの専門家の勉強会じゃねーか。
 え、大丈夫かな?
 あたし、医大なんて出てない一般人なんだけど。
 あたしの顔を見てに、ジーンさんがクスクスと笑った。
 よっぽど不安そうな顔をしてしまったらしい。

 「大丈夫大丈夫。
 勉強会はそれぞれ、教室が別だから。
 専門家向け教室、初心者向け教室、みたいに分けられてるから」

 ジーンさんが安心させるように言って、あたしはホッとした。
 良かった、それなら安心だ。
 ふと、ジーンさんが連れてるワンコを見たら、めっちゃ尻尾を振ってタマに興味津々だった。
 タマもタマで、ワンコに興味津々だ。
 キャンキャン、テュケテュケ、キャンキャン、テュケテュケ、と鳴き合いなにやら交流を深めていた。
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