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そこから先の話を少しだけしておくと、講座はそのまま続行となった。
タマは疲れたのか、あたしの頭の上で元の大きさに戻って昼寝を初めてしまった。
なんだかんだ、こいつ重いな。
そして、あたしは腫れ物扱いで誰にも声を掛けられなかった、とはならなかった。
そう、意外にも声をかけてくる人がいたのだ。
それは、人狼族の男性だった。
あたしよりも、そして、ジーンさんよりも年上のように見えた。
二十代後半から三十代前半くらいのその獣人さんは、友好的なのかモフモフの尻尾を振りつつ、話しかけてきたのだ。
「さっきのはスカッとしたなぁ!」
くつくつと実技の授業中だというのに、実に楽しそうだ。
教室の中央では、先程のあたし達のように他の参加者が模擬試合を行っている。
そこから視線を動かし、あたしは人狼さんを見て返した。
「それは、ありがとうございます?」
「何故、疑問形?」
「いや、褒められたのかどうかイマイチわからなかったんで」
「褒めたんだよ。なにせ、あの女王様の鼻っ柱を折ってくれたんだ。
これで少しは大人しくなってくれるといいんだけどな。
おっと、自己紹介が遅れたな。
俺は、グレイ」
「ココロです。よろしくお願いします」
あたしも名乗って、頭を下げた。
その様子がとても奇妙に見えたのか、グレイさんがまた笑った。
といっても、リリアさんの笑いとは別の、普通に面白いなぁという反応の笑いだった。
「あの女王様を脅迫した割に、普通なんだな」
「その女王様ってなんなんですか?
あのリリアさんの事っていうのはわかりますけど」
「そのままの意味だよ。あのエルフの嬢ちゃんの仇名だ。悪い方のニックネームだ。
あの子は、なんて言うのかな。
最近とくに、山伏になってたんだよ」
「それを言うなら天狗ですよ」
「お、意外と物知りなんだな!」
「まぁ、漫画とか好きなんで」
千年以上前の旧世界。
【天狗】とは旧世界時代の文献に載っている、当時この島国において【妖怪】とされていた存在のひとつだ。
その正体は、山伏、つまり山で修行していた僧だとする説がある。
諸説あるので、どれが本当かはあたしにはわからない。
「つまり、リリアさんは実績とかそういうのでちやほやされて天狗になっていた。調子に乗って、まるで女王様のように振舞っていた、ということですか」
「そういうことだ。
まぁ、エルフはたしかに他の種族に比べて有能優秀だし、高飛車で高慢ちきな奴らが多い。
とくに人間種族のことを、低能どころかバイ菌みたいに扱う連中も多い」
身内にエルフがいるだけに、個人的には『異議あり!』と言いたいところだが、まぁ、たしかにグレイさんが言う性格のエルフが多いのもまた事実だ。
ここは聞き流すのがいいかな。
「あ、誤解しないで欲しいんだが。
俺の知り合いにもエルフがいる。そいつはすごく良い奴だ。
ただ、そういう性格のやつらが多いって話だ」
下手すると、もろ差別発言になってしまうのと、その知り合いのエルフに対して悪いと思ったからかグレイさんが、そんなフォローを入れてきた。
「大丈夫です。あたしの知り合いのエルフもいい人達ばかりなんで、そういう性格が悪いエルフばかりじゃないのもよく知っています」
「そうか。それなら良かった。
まぁ、そんなわけで元々のエルフの性質というか性格もあったんだが、色々成功していくうちに、まぁこの教室の中で独裁者みたいな立場になっていったんだ。
それこそ、新人いじめなんてザラで。
俺たち大人が諌めたりもしたんだが、まー聞かない聞かない」
色々苦労したんだろうな。
声もそうだが、表情が物凄く遠くを見ている感じだ。
「注意したり、諌めたり、時には叱ったりもしたけれど。
その度にあの女王様は、『だからなに?』、『それが?』、の繰り返しで全然聞く耳を持たなかった。
んで、俺たち大人は彼女への匙を投げた。
情けない話だけどな」
「ジーンさんは?
ジーンさんの言うことも聞かなかったんですか?」
「表向きは聞いてた。
でも、裏ではその注意や叱りからくる鬱憤を、取り巻きや新人参加者のせいにして、精神的なイジメに発展してた。
この教室への参加者も減り続けてたんだ」
気づいたなら止めろよ。
あー、いや、精神的なイジメってことは証拠が残りにくいとかそんなんで対処出来なかったってオチかな。
「聞いた話じゃ、学校でも相当な問題児らしくて、学校の先生方も匙を投げたらしい」
「聞いたって、誰から聞いたんです?
その話?」
「他の教室にいる知り合い。
あの女王様と同じ学年に、子供がいるらしくてそういう情報は色々流れてくる」
「なるほど。
で、大人たちが困った困ったってしてる所に、あたしとタマが現れて、その天狗の鼻をへし折った、と」
心をへし折りたかったのは事実だ。
いや、どちらかと言うとへし折りたかったのは前歯だけど。
世の中には、反撃する変わり者だっている、ということを学んだことだろう。
しかし、
「それはそうと、グレイさん。
いいんですか? そんなあたしに話しかけて?
今後この教室で過ごしにくくなったりしません?」
イジメなどがあったのだから、大人だろうとリリアさんが排除するために動くことは大いにあるだろう。
あたしの心配を、グレイさんは笑い飛ばした。
「本来の学校や会社みたいな閉鎖空間じゃあるまいし、ほぼ月イチでしか開かれない勉強会で過ごしにくくなるってそうそうないぞ。
村の集会とも違うしな。
基本、フリーランスだし。
つーか、子供が考えるより大人の世界はドライだからな。
その辺の心配はいらない」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
タマは疲れたのか、あたしの頭の上で元の大きさに戻って昼寝を初めてしまった。
なんだかんだ、こいつ重いな。
そして、あたしは腫れ物扱いで誰にも声を掛けられなかった、とはならなかった。
そう、意外にも声をかけてくる人がいたのだ。
それは、人狼族の男性だった。
あたしよりも、そして、ジーンさんよりも年上のように見えた。
二十代後半から三十代前半くらいのその獣人さんは、友好的なのかモフモフの尻尾を振りつつ、話しかけてきたのだ。
「さっきのはスカッとしたなぁ!」
くつくつと実技の授業中だというのに、実に楽しそうだ。
教室の中央では、先程のあたし達のように他の参加者が模擬試合を行っている。
そこから視線を動かし、あたしは人狼さんを見て返した。
「それは、ありがとうございます?」
「何故、疑問形?」
「いや、褒められたのかどうかイマイチわからなかったんで」
「褒めたんだよ。なにせ、あの女王様の鼻っ柱を折ってくれたんだ。
これで少しは大人しくなってくれるといいんだけどな。
おっと、自己紹介が遅れたな。
俺は、グレイ」
「ココロです。よろしくお願いします」
あたしも名乗って、頭を下げた。
その様子がとても奇妙に見えたのか、グレイさんがまた笑った。
といっても、リリアさんの笑いとは別の、普通に面白いなぁという反応の笑いだった。
「あの女王様を脅迫した割に、普通なんだな」
「その女王様ってなんなんですか?
あのリリアさんの事っていうのはわかりますけど」
「そのままの意味だよ。あのエルフの嬢ちゃんの仇名だ。悪い方のニックネームだ。
あの子は、なんて言うのかな。
最近とくに、山伏になってたんだよ」
「それを言うなら天狗ですよ」
「お、意外と物知りなんだな!」
「まぁ、漫画とか好きなんで」
千年以上前の旧世界。
【天狗】とは旧世界時代の文献に載っている、当時この島国において【妖怪】とされていた存在のひとつだ。
その正体は、山伏、つまり山で修行していた僧だとする説がある。
諸説あるので、どれが本当かはあたしにはわからない。
「つまり、リリアさんは実績とかそういうのでちやほやされて天狗になっていた。調子に乗って、まるで女王様のように振舞っていた、ということですか」
「そういうことだ。
まぁ、エルフはたしかに他の種族に比べて有能優秀だし、高飛車で高慢ちきな奴らが多い。
とくに人間種族のことを、低能どころかバイ菌みたいに扱う連中も多い」
身内にエルフがいるだけに、個人的には『異議あり!』と言いたいところだが、まぁ、たしかにグレイさんが言う性格のエルフが多いのもまた事実だ。
ここは聞き流すのがいいかな。
「あ、誤解しないで欲しいんだが。
俺の知り合いにもエルフがいる。そいつはすごく良い奴だ。
ただ、そういう性格のやつらが多いって話だ」
下手すると、もろ差別発言になってしまうのと、その知り合いのエルフに対して悪いと思ったからかグレイさんが、そんなフォローを入れてきた。
「大丈夫です。あたしの知り合いのエルフもいい人達ばかりなんで、そういう性格が悪いエルフばかりじゃないのもよく知っています」
「そうか。それなら良かった。
まぁ、そんなわけで元々のエルフの性質というか性格もあったんだが、色々成功していくうちに、まぁこの教室の中で独裁者みたいな立場になっていったんだ。
それこそ、新人いじめなんてザラで。
俺たち大人が諌めたりもしたんだが、まー聞かない聞かない」
色々苦労したんだろうな。
声もそうだが、表情が物凄く遠くを見ている感じだ。
「注意したり、諌めたり、時には叱ったりもしたけれど。
その度にあの女王様は、『だからなに?』、『それが?』、の繰り返しで全然聞く耳を持たなかった。
んで、俺たち大人は彼女への匙を投げた。
情けない話だけどな」
「ジーンさんは?
ジーンさんの言うことも聞かなかったんですか?」
「表向きは聞いてた。
でも、裏ではその注意や叱りからくる鬱憤を、取り巻きや新人参加者のせいにして、精神的なイジメに発展してた。
この教室への参加者も減り続けてたんだ」
気づいたなら止めろよ。
あー、いや、精神的なイジメってことは証拠が残りにくいとかそんなんで対処出来なかったってオチかな。
「聞いた話じゃ、学校でも相当な問題児らしくて、学校の先生方も匙を投げたらしい」
「聞いたって、誰から聞いたんです?
その話?」
「他の教室にいる知り合い。
あの女王様と同じ学年に、子供がいるらしくてそういう情報は色々流れてくる」
「なるほど。
で、大人たちが困った困ったってしてる所に、あたしとタマが現れて、その天狗の鼻をへし折った、と」
心をへし折りたかったのは事実だ。
いや、どちらかと言うとへし折りたかったのは前歯だけど。
世の中には、反撃する変わり者だっている、ということを学んだことだろう。
しかし、
「それはそうと、グレイさん。
いいんですか? そんなあたしに話しかけて?
今後この教室で過ごしにくくなったりしません?」
イジメなどがあったのだから、大人だろうとリリアさんが排除するために動くことは大いにあるだろう。
あたしの心配を、グレイさんは笑い飛ばした。
「本来の学校や会社みたいな閉鎖空間じゃあるまいし、ほぼ月イチでしか開かれない勉強会で過ごしにくくなるってそうそうないぞ。
村の集会とも違うしな。
基本、フリーランスだし。
つーか、子供が考えるより大人の世界はドライだからな。
その辺の心配はいらない」
なるほど、そういう考え方もあるのか。
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