毛玉スライム飼ったらこうなる

一樹

文字の大きさ
30 / 50

30

しおりを挟む
 「ココロって、ちゃんと怒れるんだ」

 学校の教室。
 昼休み。
 あたしとなっちゃんは雑談に花を咲かせていた。
 話題はもっぱら、この前の勉強会のことである。
 というか、あたしの愚痴だった。
 あたしの席で、ひとつの机を挟み、前の席にはなっちゃんが背もたれに腹をくっつけ、座っていた。
 その席の本来の主は、ほかのクラスに行っているらしく今はなっちゃんがその席の主になっていた。

 「そりゃ怒るよ。殺されかけたのに怒らないってマゾか変態でしょ」

 「そこは聖人君子じゃない?」

 「そうともいう」

 「でもそうだよね~。階段から落ちて頭でも打とうものなら、脳挫傷とかで死んじゃうこともあるもんね~」

 実行犯のエリスちゃんは、頭が割れて中身が出てたらしいから、よっぽど変な打ち方をしたんだろうな。

 「あと、能力スキルの扱いが結構やっかい。
 もう、下手なこと口に出来ないからさ、ストレス溜まる」

 「あー、だろうねぇ。言いたいことが言えないんだもんねぇ」

 「それはそうなんだけど、ほら軽々しく罵倒できないというか」

 あたしは説明に困って、ノートに説明文を書く。

 『死ねだの消えろだの、罵ることが出来なくなった』

 その文を見て、なっちゃんがなにか納得したように返してくる。

 「はえー、大変なんだ」

 「そ、めっちゃ大変。それも能力の発動条件がいまいちわかってないってのもあるし」

 「ヒントとか勉強会で教えてもらわなかったの?」

 ヒントはいくつかあった。
 でも、できたり出来なかったりと不安定なのは変わりない。

 「ヒントねぇ。
 まぁ、少しだけならあったけど。
 でも、わからないことの方が多い」

 「ほかの同じ能力スキル持ちの人に聞いたりとかは?
 レアって言っても、ゼロじゃないでしょ」

 まぁ、それはそうなんだけど。
 【言霊使い】だったかもしれないお兄ちゃんは、家出中の行方不明だし。
 他にそう言った人物に心当てなどない。
 だから、

 「それがゼロッぽい」

 あたしは、人差し指と親指でゼロの形を作って答えた。

 「マジか」

 「嘘ついても仕方ないし。
 昔は沢山いたっぽいけど、今はあたし以外確認されてない」

 「なんでそんなことわかるの?」

 「ネット上の超有名百科事典に書いてあった。
 最近情報が訂正されたっぽくて、役所に届出を出した日に【言霊使い】の存在が確認されたって書かれてた」

 さすがに、個人情報とかは載っていなかったけれど。
 でも、あ、これあたしの事だ、とすぐにわかってしまった。

 「あー、なるほどー。
 でもあそこ嘘も多いよ?」

 「知ってる」

 それでも何も調べないよりマシというだけの話だ。
 さて、ここで話題は変わる。というか戻った。
 なんの話題に変わった、いや、戻ったのかと言うと、妹が拡散してしまった動画の件だ。
 なっちゃんもSNS上で流れてきて、その関係で観たらしい。
 そして、映っていたモザイク処理のされていない二匹のモンスター。
 そのうちの一匹がタマであるとすぐに気づいたらしい。
 なっちゃんの本題は、勉強会の土産話よりもこっちだった。
 一体全体なにがあったのか、説明を求められたので一から話したのだ。
 
 「それにしても、なにがそんなに気に食わなかったんだろう?
 この火竜の飼い主」

 「うーん、たぶん、ジーンさんと話してたこと、それ自体が気に食わ無かったっぽい」

 「えー、それだけかなぁ」

 なっちゃんは納得がいっていないようだ。
 そのためか、自分の携帯を取り出すとジーンさんについて検索しだした。
 そういえば、あたしは【言霊使い】については検索したけど、ジーンさんについては何も調べてなかった。

 「有名な人なら嘘でも本当でも、なにかしらネット上に情報あるとおもうんだよねぇ。
 あ、あったあった」

 なっちゃんが、検索して出てきた画面を見せる。

 「あー、なるほどー、そういうことか」

 紫の珍しい目をしてるから、それなりの血筋の流れを組んでるんだろうなぁとはおもっていたが、なんとジーンさん王族の一味だった。
 あ、一味っていうと反社会的勢力みたいだから一員か。
 この国を統べる王族の一員だった。
 ロイヤルファミリーというやつだ。
 紫色の瞳は王族の証と千年前から決まっている。
 カラコンとかで紫のやつあるけど。
 まぁ、それはそれとして。
 ジーンさんは現王様の末弟らしい。
 末弟で、王位継承権は辞退したらしく現在爵位持ち。
 いわゆる王弟というやつだ。
 お坊ちゃまじゃねーか。
 なにテイマーなんて仕事してるんだ。
 王族らしく外交とかしてれば稼げそうなものなのに。
 まぁ、上に十人近い兄がいれば民間に入るという選択肢も出てくるのか?
 でも、起業するとかなんかそういう商売の方がいい様な気がする。
 雲の上の存在やんごとなき身分の人の考えることは理解できない。
 
 「玉の輿でも狙ってたのかね?」

 なっちゃんが再度画面に映し出されたジーンさんの経歴に視線を落としながら、そんなことを呟いた。

 「さて、どうなんだろう?」

 可能性は高い。
 要するに、リリアさんは一般庶民が血筋のいいジーンさんに近づくな、という意味もこめて行動していたのかもしれない。
 たまにいるのだ。
 そういう、明後日な方向に気をきかせるために動くタイプが。
 ましてや、王族には神様の血が入っているとされている。
 千年前に降臨した神様、そして、その伴侶であったとされるエルフの血が。
 一部のエルフの高慢ちきな態度などはこれに由来していたりもする。
 あと、ただ単に性格の問題だったりもする。
 そのエルフそれぞれだ。

 「それにしても、ジーンさんが王族だったとは」

 「やっぱりオーラとか違った?」

 「うーん? ただのイケメンだった」

 「そっか。
 サインとか貰わなかったの?」

 「王族って知ったの、たった今だよ。
 最初から知ってたら、勉強会でサイン貰って通販サイトで高値で売ってたよ。
 なっちゃんだって、勉強会の時にジーンさんのこと気づかなかったでしょ」

 本当にそんなことをしたら大問題になるだろうけれど、言うだけならタダだ。
 それに冗談半分だ。
 今のところ、冗談半分なら【言霊使い】の能力は高確率で発揮されないとわかっている。 
 そう、今のところは。

 「まぁねー。爺様や婆様みたいに忠誠誓わされた世代でも、そういう教育受けた世代でもないから、王様の顔だって興味ないからうろ覚えだし」

 あー、わかるわ、それ。
 あたしは、なっちゃんの言葉にうんうん頷いた。
 同意しか出来なかった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...