毛玉スライム飼ったらこうなる

一樹

文字の大きさ
31 / 50

31

しおりを挟む
 「にしてもさー、自分もたまにあの番組観るけど、殿堂入りしたエルフの子、そこまで性格悪かったんだ」

 噂では知ってたけど、となっちゃんは続けた。
 
 「有名なんだ、リリアさんの性格」
 
 「有名っていうか、ほらアイドルグループでもあるじゃん。
 実は仲が悪いとか。そういう系の話」

 「あー、なるほど」

 陰口というか、ゴシップと言うやつか。

 「リリアさんに関しては、根も葉もある噂通りの人だった、と」

 「ココロから話聞いた限りだと、噂より悪いかなぁ」

 そりゃ、悪いだろうな。
 伝えたあたしのリリアさんに対する印象が最悪だし。
 なんでもそうだけど、たとえ人伝の噂だったとしてもそれを伝える人の主観がどうしても入ってしまうものだ。
 そして、その噂の内容が嘘か本当かはあまり重要じゃ無かったりする。
 だって話をする人達が楽しめればそれでいいのだから。

 「正直なこと言うとさ」

 あたしは、ポロッと呟く。

 「後ちょっとで妹と喧嘩するみたいに、リリアさんの頭どつく所だったんだよ」

 手が出なくてほんと良かった。
 今更だけど。

 「エルフの頭どつくって、ココロにしか出来なそう」

 なっちゃんがケラケラ笑いながら返してくる。
 一応、神様の伴侶がエルフだったってことで、まあ、ロイヤルファミリーとまでは行かないけれど、そういう特別な目でエルフを見る人は少なからずいるらしい。
 あたしみたいに家族や、ご近所に住んでいたらまた違うけれど。
 
 「エルフでも、頭の強度は普通の人間とそう変わらないみたいだし、今度なっちゃんも冒険者エルフと喧嘩した時やってみればいいよ」

 ケースバイケースだとは思うけど。
 
 「いや、そういうことじゃなくて。
 というか、中々無いからそんなこと」

 「そう?」

 「そうだよ。七割、八割くらいは善良な人達だから。
 タマを拾った時に遭遇したタイプが残りの三割から二割の人達」

 「あー、居たねぇ、そんなの。
 いい大人がなんであんな虐待してたのか不思議だったんだけどさ」

 「あれねー、簡単に言うと、俺たちは冒険者で強いんだぞー、凄いんだぞー、ガオーってやつ」

 なっちゃんが肉食獣の真似事をしながら説明してきた。
 
 「でも、なっちゃんにはビビってたよね?」

 「だって、私の方がランク上だし。見ての通りの鬼人族でしょ?
 こう言っちゃなんだけど鬼人族は冒険者の世界はもとより格闘の世界とかでも能力的に優位だし」

 「?
 強いってこと?」

 「そーそー」

 確かに、世界的なスポーツ大会で功績を残すのは能力的に優れている人達だ。
 練習をどれだけしてきても、覆せないどうしようもないことがこの世界にはある。
 実際、そう言った知名度のある大会で選抜される選手にはあたしのような【人間種族】はほとんどいないのが現実だ。
 身体能力が高いのは、なっちゃんのような鬼人族、そして末の妹のような吸血鬼等の亜人種族なのだから。
 社会ではそういう能力的なことから差別が横行した時代が長く続いたとも、歴史の授業で習った。
 今でも少しそういうのは残っている。
 実際、あたしは小学生の頃に同級生の意地悪男子から、【人間種族】という理由でからかわれたり、イジメを受けたことがある。
 今でこそよその子を軽々しく叩いたりしないが、当時のあたしはお転婆で、負けん気が強かった。
 兄を口喧嘩で泣かしたという経験もあったので、同じようにふざけた事を言ってくるやつは口で言い負かして泣かせた。
 そうすると、相手は泣きながら手を出してくるから、それを見計らってわざと怪我をする。
 もっと言うと、わざと殴られてやるのだ。
 運が良ければそこで教師など大人が現れるし、来なくても正当防衛での反撃ができるし、目撃証言から女の子を殴ったということで相手は大人からの印象が悪くなり、下手すると子供社会でも詰むこととなる。
 少なくとも同じ年代の女の子からは避けられるのは必須だ。

 「なっちゃん、強いんだ」

 「高校生子どもにしては、だけどね」

 謙遜してはいるが、なっちゃんは得意げだ。

 「でも、ココロ。気をつけなよ」

 表情を真面目なものにして、なっちゃんは言う。
 あたしは訳が分からず、首を傾げる。

 「?」
 
 「こういう時はあんまり動かないはずの特定班が動いてる」

 「とくてーはん?」

 なっちゃんは携帯を操作して、今度は所謂ネット掲示板を見せてきた。
 そこには、タマの飼い主であり、くそ生意気で一部で反感を買っていたリリアさんを負かした人物、つまり、あたしがどこの誰か探そう、という話題で盛り上がっている人達がいた。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

忠犬ポチは、異世界でもお手伝いを頑張ります!

藤なごみ
ファンタジー
私はポチ。前世は豆柴の女の子。 前世でご主人様のりっちゃんを悪い大きな犬から守ったんだけど、その時に犬に噛まれて死んじゃったんだ。 でもとってもいい事をしたって言うから、神様が新しい世界で生まれ変わらせてくれるんだって。 新しい世界では、ポチは犬人間になっちゃって孤児院って所でみんなと一緒に暮らすんだけど、孤児院は将来の為にみんな色々なお手伝いをするんだって。 ポチ、色々な人のお手伝いをするのが大好きだから、頑張ってお手伝いをしてみんなの役に立つんだ。 りっちゃんに会えないのは寂しいけど、頑張って新しい世界でご主人様を見つけるよ。 ……でも、いつかはりっちゃんに会いたいなあ。 ※カクヨム様、アルファポリス様にも投稿しています

ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます

黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。 だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ! 捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……? 無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

処理中です...