毛玉スライム飼ったらこうなる

一樹

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 ばあちゃん達の部屋には、この家のもふもふハーレム構成員たるチーとムーもいた。
 二匹は、ばあちゃん達が年金で手に入れた高級羽毛布団を占領し、実に悠々自適に寛いでいる。
 どうでもいいけど、なんで羽毛布団の上だと寝ぼけながらも舌舐めずりするんだろう。
 やっぱり鳥の臭いがついていて美味しそうなのかな。

 あたしとばあちゃんの間には、お兄ちゃんから送られてきたダンボール箱。
 中身である、モンスター二匹は怯えきっていて可哀想なほどガタガタ震えていた。

 「なるほどねぇ。
 まぁ、エルフの性格からしたら、ココロや人間族への態度は特に珍しくも無いけれど。
 でも、仮にも命をこんな風に扱う子が出てくるなんて、時代は変わるもんだね」
 
 ばあちゃんは、この外見で何百年も生きている。
 人間で言うならまだ五十代か六十代くらいらしい。
 だから、数百年単位の時間の流れを言われてもイマイチあたしにはピンと来なかった。
 ただ、ばあちゃんに言わせればエルフはどんなに他種族に対して高圧的で、時にモラルに欠けた、王様気取りをするいけ好かない言動、態度を取ったとしても、動物やモンスターに対しては優しく接するのだという。
 それこそ、大事な隣人や友人を愛するように。
 だが、それはばあちゃんやお母さん世代の話だ。
 新人類ならぬ新エルフ世代は、その辺の価値観等が劇的に変わっているらしい。
 あと、ばあちゃん、エリスちゃんはともかくリリアさんは人間族の男に色目を使っていたけどね。

 「それは、種族関係なく女なら多かれ少なかれやるからねぇ」
 
 まぁ、それもそうか。

 「しかし、そのリリアって子は気になるね。
 親御さんは何も言わなかったんだろうか?」

 「?」

 「いや、ね。
 ココロもそうだけれど、種族関係なく親は子供の面倒を見るってのが普通なんだよ。
 で、こういう生き物を飼う、使い魔にするって言うのも、エルフの子供たちは親に許可をもらうんだ。
 餌代、世話代、まぁつまり命の管理費がかかるから。
 基本的に種族関係なく、お金を稼ぐのは大人だからね。
 そのお金を稼いでる人に、命の管理費ペットの世話費用を出してくれってお願いするのは普通だろ?」

 「うん」

 「で、まぁ、親御さんが了承する。
 それで、了承した後に、これまた種族関係なく殆どの親御さんは子供にこう言うんだ。
 『ちゃんと自分で面倒見るんだよ』ってね」

 「うんうん」

 これは、どこのご家庭でもよくある話だ。

 「で、エルフの場合。
 ここから先がちょっと違う」

 「違うって、何が?」

 「もしも、命の管理ペットの世話をサボったらどうなると思う?」

 「うーん? まぁ、普通なら怒られるよね。
 それから、反省するか、あとは親も一緒に世話するか」
 
 「そうだね。まぁ度合いにもよるけれど。
 あまりにも度が過ぎたら……度が過ぎている、と親御さん達が判断したら……」

 どうなるんだろう?

 「お仕置として、しばらくその子がその家のペット扱いされる。
 で、ペットにしたのと同じことを経験させられる」

 それ、虐待なんじゃないかなぁ。
 でも、種族間の認識とか文化とかそういうのが違うし、考え方が違って当たり前だしなぁ。
 まぁ、エルフはそうなんだ、と思っておこう。

 「そうじゃなくてもね、叱るのが当たり前なんだよ。
 ほら、ヤマトからの手紙に一緒に入っていた、その鑑定書の日付見てごらん」

 言われて、確認してみる。
 そこには、あたしが参加した勉強会、その三日後の日付が書かれていた。
 つまり、あの勉強会の日からほんの三日のうちにこの子達は捨てられ、兄に保護されたということになる。
 あたしの元にこうして送ってくるまで、約二週間ほど掛かっているのはたぶん手続きとかがあったからかもしれない。
 種族関係なく、里親や養子縁組をする場合も手続きにそれくらいの時間がかかると聞いたことがあるから、そこまで不思議には感じなかった。
 ばあちゃんが、箱へ手を伸ばす。
 火竜と鵺、二匹同時に体をビクつかせた。
 その二匹を、優しくばあちゃんは撫でた。
 撫でながら、

 「大丈夫大丈夫。いい子。あんた達はいい子。
 もう大丈夫、ね?
 大丈夫大丈夫」
 
 警戒し、緊張していた二匹の体から段々力が抜けていく。
 そして、安心できると思ったのか二匹がほぼ同時にばあちゃんの手へ頭や体を擦り付けて甘え始めた。
 さすがばあちゃん、エルフってのもそうだけど、伊達に歳食ってないや。
 と、それを見ていたタマが、自分も自分もーと、ばあちゃんに体を擦り付けてくる。
 あたしもなんとなく手を伸ばしてみた、鵺、ツグミちゃんは普通に撫でさせてくれた。
 でも、火竜の方はあたしの手に気づくと、箱の中から逃げ出してばあちゃんの腕をつたい、その肩へ逃げてしまった。
 ありゃ、

 「どうしたの?」

 言いつつ、ばあちゃんが肩から火竜を下ろし、こちらに向けて抱っこする。

 「大丈夫、ココロも大丈夫」

 「たぶん、タマと対戦した時のこと覚えてて警戒してるんだと思う」

 なにしろ、全身の骨を砕かれて、内臓へも大ダメージだったようだし。

 「おやおや」

 ばあちゃんが苦笑する。
 そこであたしは、ふと思いついて、ばあちゃんに体を擦り付けていたタマを持ち上げる。

 「テュケ?」

 「ほら、タマ。新しい友達だよ、ご挨拶しよっか」

 これにテンションが上がったのはツグミちゃんだった。
 尻尾の蛇をべちんべちんと、ダンボールに叩きつけている。
 蛇、目を回してるけど大丈夫かな。
 一方、火竜はというとタマを見て、威嚇し始めた。   

 「キシャーーーーっ!!」

 しかし、タマは威嚇されているという自覚が無いのか不思議そうに火竜を見ている。
 と、火竜がばあちゃんの手から逃げ出して羽毛ぶとんへ避難した。
 途端、

 「ぎゃっ!!??」

 先住猫の肉球が、火竜を布団へ縫いつけた。
 猫たちが、スンスンと火竜の臭いを嗅ぐ。
 そして、ぺろぺろと毛繕いをするかのように火竜が纏っている炎を舐め始めた。
 今更だけど火傷しないといいけど。
 でもまぁ、なにかあったらばあちゃんいるし大丈夫かな。
 そのばあちゃんが微笑ましそうに、先住猫達と火竜のファーストコンタクトを眺めていた。

 とりあえずこうしてウチのもふもふハーレムに、新しい構成員が加わることになったのだった。
 火竜はもふもふしてないけど、まぁ気にしたら負けだ。
 そして、ばあちゃんに話をして少しだけあたしは心の整理がついた。
 でも、それは本当に少しだけだ。
 まだ完全に、リリアさんやエリスちゃんに対するモヤモヤは晴れていない。
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