毛玉スライム飼ったらこうなる

一樹

文字の大きさ
46 / 50

46

しおりを挟む
 そして、企画当日。
 宣言通り、ジーンさんが迎えに来てくれた。
 こんな田舎の田園風景には不似合いな、高級車で迎えにきた。
 あのマークは海外の車だ。
 外車だ。
 ピカピカの車体を見ていると、コインで傷でも付けたくなる。
 
 「おはようございます。先生。
 今日はこんな婆のわがままを聞いていただきありがとうございます」

 車に乗り込みながら、ばあちゃんが言う。
 見た目は若くても、足腰がアレなのでそれとなく乗るのをサポートする。
 ちなみに、あたしとばあちゃんは後部座席だ。
 並んで座る。
 助手席には、タマと仲のいいあのワンコが尻尾を振りながら座席から身を乗り出して、こちらを見ている。
 さて、そんなこちら側、後部座席の足元にはヒィとツグミちゃんが入ったキャリーケース。
 そして、膝の上にはタマを乗せている。
 タマ用のキャリーケースも、ヒィたちが入っているケースの横に置いてある。
 念の為だ。念の為。
 ワンコがタマへ、おはよう! とばかりに一声鳴いた。

 「きゃぅんっ!!」

 それにタマが応える。

 「テュケるる!!」

 ジーンさんへの挨拶もそこそこに、ばあちゃんはタマとワンコを交互に見ながら言った。

 「あらぁ、タマちゃん。お友達なの?」

 「テュケっ!」

 「キャンキャン! はっはっはっ」

 ワンコはばあちゃんに対しても尻尾を振っている。

 「仲良しねぇ」

 ばあちゃんも身を乗り出して、ワンコをなでなでする。

 「中々お転婆で、手を焼いています」
 
 あ、女の子なのか、このワンコ。

 「ほら、じゃあ出発するからハナコ、お座り」

 ワンコの名前はハナコというらしい。
 ハナコちゃんは、『きゃん!』と一声鳴いて助手席で大人しくなる。

 「ほら、タマもここにちゃんちゃん」

 タマがあたしの膝の上に乗っかる。
 ばあちゃんも座席に座りなおす。
 ヒトは全員シートベルトを付けて、ジーンさんがそれを確認し、車が動き出した。

 走ること一時間弱。
 高速をすっ飛ばして、途中パーキングエリアに寄ってトイレ休憩を挟んだものの、体感時間だとあっという間に現地に着いた。
 そこは、外観だけならちょっと大きい市民体育館みたいな建物だった。

 先にキャリーケースを持って車から降りる。
 それから、降りるばあちゃんをサポートする。
 ちょっとの段差で転んだり、落ちたりしたらマジで洒落にならないからだ。
 普段は農作業してるから多分大丈夫だとは思っている。
 でも、万が一ということもあるので見えてる範囲ならこうしている。

 ばあちゃんが降りて、車のドアを閉める。
 ジーンさんがそれを確認して、車に鍵をかけた。
 タマとハナコちゃんがじゃれ合いつつも、あたしたちからつかず離れず移動する。
 建物の受付でジーンさんが受付を済ませる。
 館内図や案内板での説明を読むに、テイマー用の施設というのはそうなのだが、いくつかのスペースに分けられ、それぞれで利用出来る内容が違うようだ。
 スポーツジムのように、人間用のトレーニングマシンを設置した部屋や、モンスターの訓練用の部屋もある。
 予約すれば、各部屋を貸切で使用出来るらしい。
 なるほど、これを主催者さんたちは利用したのか。
 ちなみにこの建物、でかいドラゴンでも入れるように入口も、なにもかもが大きく作られている。

 ジーンさんの案内で、主催者さん達が待っているだろう部屋へ向かう。

 向かおうとしたところで、受付周囲がざわめいた。
 同時にズンズンと重い足音が響く。
 見れば、双頭のドラゴンを連れたリリアさんと、かなりフサフサモフモフのフェンリルらしきモンスターを連れたエリスちゃんが注目を集めていた。
 彼女達がこちらに気づき、エリスちゃんは顔色を暗くしているのに対して、リリアさんは勝ち誇ったような顔をしていた。

 「なるほどねぇ。あの子達か」

 ばあちゃんが気づいて、そう呟いた。
 
 「どれ、婆がご挨拶でもしてこようかねぇ」
 
 ばあちゃん!!

 「いいよ! そんなことしなくていいよ!!
 恥ずかしい!!」

 「恥ずかしいってなんだい。
 挨拶はちっとも恥ずかしくなんてないよ」

 「そうだけど、そうじゃなくて!!」

 あたしの静止なんて聞かず、ばあちゃんがトコトコと外見だけなら同い年のエルフとダークエルフの女の子たちに近づいていく。
 あーもぅ! なんで年寄りって人の話をきかないかなぁ!!??
 そして、ばあちゃんが二人に声をかけた瞬間。

 「え?」

 「おお?」

 ばあちゃんの動向を見ていたあたしとジーンさんが、同時にそんな声をもらした。
 と言うのも、こちらからだとばあちゃんの背中しか見えなかったのだが、ばあちゃんが二人に声をかけると同時に、その二人が腰を抜かしたのだ。
 それも、顔色を真っ青にして。

 続いてばあちゃんは、二人が連れていたモンスターに触れようとする。

 ばあちゃん!!
 危ないって!!
 噛まれるって!!
 そう思ったが、モンスター達はこうべを垂れて大人しくなっている。
 マジかよ。
 そうして、双頭のドラゴンとフサフサモフモフのフェンリルを撫でたあと、戻ってきた。

 「君のおばあさん、何者?」

 ジーンさんが小さく訊ねてきた。

 「……御歳五百歳超えのエルフで、あたしのばあちゃんです」

 そうとしか答えられなかった。
 うん、たしかばあちゃん五百歳超えだったと思う。
 戻ってきたばあちゃんは、なんというかニコニコ顔でご満悦だった。

 「あのワンワン、とっても撫で心地良かったよ!
 ココロも撫でて来たら?
 ココロが好きそうな毛並みだったよ」

 ばあちゃんがそう教えてくれたが、たぶん、あたしが行っても噛まれる未来一択だと思う。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

ポンコツと蔑まれた冒険者は最強クランをつくる

ぽとりひょん
ファンタジー
エアハルトは、幼なじみのエルメンヒルトを追ってダンジョンの町「ゴルドベルク」で冒険者になろうとする。しかし、彼のアビリティを見た人たちは冒険者を諦め村へ帰るように説得する。彼には魔力がなかった。魔力がなければ深層で魔物と戦うことが出来ないのだ。エアハルトは諦めきれずエルメンヒルトと肩を並べて冒険するため、冒険者となってポンコツと蔑まれながら、ソロでダンジョンに挑み始める。

過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件

やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。

神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里
ファンタジー
ある日、5歳の彩菜は突然神隠しに遭い異世界へ迷い込んでしまう。 そんな迷子の彩菜を助けてくれたのは王国の騎士団長だった。元の世界に帰れない彩菜を、子供のいない団長夫婦は自分の娘として育ててくれることに……。 日本のお父さんお母さん、会えなくて寂しいけれど、彩菜は優しい大人の人達に助けられて毎日元気に暮らしてます!

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

処理中です...