47 / 50
47
しおりを挟む
ふむ、困ったことになった。
まさか、タマがやられるとは。
何があったかって?
主催者さんや、今日この舞台を整えてくれたスタッフさん達、他の参加者(対戦相手)さん達への挨拶を済ませて、企画がスタートしたのだ。
で、冒頭で述べたように、タマが負けた。
「テュケ~~っ、るるる~~」
あーあー、もう、痛かったねぇ。
思いっきり噛まれたもんねぇ。
と、あたしは甘えてくるタマを撫でてモフモフする。
フェンリルの悲劇再び、といえば読者諸君には伝わるだろうか。
そう、エリスちゃんが連れていた新しいモンスターのフェンリル。
開始早々、突っ込んできたフェンリルの口に収まってしまったタマは、一撃必殺とばかりに噛み砕かれ、負け判定となり、戦線離脱となってしまったのだ。
一応三匹に痛いの無い無い、ってしておいたんだけどなぁ。
レベル差ってやつかな。
それともリリアさん達が何かしたのか。
うーん、向こうの子達のステータス見る限り、変な効果は無いし。
わからん。
しかし、どうするか。
ヒィとツグミちゃんの闘争心も、タマが倒されたことで折れてしまった。
フェンリルの横には、双頭竜がどっしりと構えている。
なんなら唸って威嚇してきている。
しかし、あの双頭竜、なにかこう、引っかかるというか。
連想しそうというか。
うー、ダメだ。思い出せない。
こう、喉まで出かかってるんだけれど
あたしが場違いなことで悩んでいると、ヒィとツグミちゃんの不安そうな視線がこちらに向いていたことに気づく。
最初、フェンリルが突進してきたこと以外は向こうはどっしりと構えていてこちらに攻撃してこない。
余裕なのだろう。
「ステータスがゴミの最弱火竜で適うわけないでしょ?」
リリアさんが口を開いた。
ジーンさんも見てるというのに、もう猫を被るのはしてないないようだ。
リリアさんの冷たい目が、かつて育てていたヒィに注がれる。
ヒィは、威嚇する。
「ゴミ?
あー、学校のボランティアでゴミ拾いはよくさせられます。
よく知ってますね?
でもここにそのゴミは持ち込んでませんよ?
目、悪いんじゃないんですか?」
あたしはすっとぼけた。
すっとぼけて、そして、挑発してみる。
リリアさんが、顔を怒りで真っ赤に染める。
ほんとに喧嘩慣れしてないんだな、この人。
「ムカつく」
「え、まさかゴミを受け取りたかったんですか?
リリアさん、変わってますねぇ」
「っ! ドッペルドラゴン!
火炎吐息!!」
双頭竜ってドッペルドラゴンって言うんだ。
あ、ステータスに書いてある。
「ツグミちゃん、退避」
あたしはツグミちゃんにだけ逃げるよう指示を出す。
ヒィには相性的な話になるが、どうせこの技は効かないので、
「ヒィ、それ食べていいよ」
と、指示を出した。
二匹はあたしの指示通りに動いてくれた。
ツグミちゃんは、その瞬発力を活かして向けられた炎から逃げ延びる。
ヒィは美味しそうに、もしゃもしゃと炎を食べた。
火竜に火って、アホだなぁ。
「え、なんで?!」
「なんでって、ヒィは火竜ですよ?
火属性のモンスターに火が効くわけないじゃないですか」
まぁ、レベル差があるから当たれば体力くらい削れるだろうけど。
でも、こうして食べてしまえばそれすら出来ない。
元飼い主のくせに、そんなこともわからないのだろうか?
「違う、こんなのズルだ!!
私がどれだけ教えこんでも【火喰い】なんて覚えなかったのに!!」
あ、この食べるやつにも技名あるんだ。
「え、普通に覚えましたよ?
じいちゃんが煙草の吸殻与えたら美味しそうに食べてましたし」
「火竜になんつーもの食べさせてるの?!」
その反応を見て、あたしは思いつく。
「いや、食べさせるつもりなんて無かったですよ、最初は。
でも、ウチのじいちゃんが使ってる灰皿が舐めたようにピカピカになってたことがあって、それで判明したんです。
マッチの火も食べるし、仏壇の火のついた蝋燭や線香も食べちゃうものだから、ちょっと困ってるんですよねぇ。
どうも、前の飼い主さんがちゃんと躾て無かったようで。
ほんと、どこの誰が躾たかは知りませんけど、責任もってその辺も躾てほしかったですよ。
まあ、どこの誰かはわかりませんが、簡単に命を捨てるような人です、お里と質が知れますけど」
ヒィが火を食べることがわかったくだりは、全部ホントのことだ。
そして、ニヤニヤと煽る。
この際だ、ちゃんとした言質をとってやる。
編集でこのやり取りが消されたとしても、ここに居る人達全員にこの性悪エルフの本性を見せてやろう。
彼女は、あたしの挑発に見事なまでに乗った。
「この、底辺種族が!!
そいつは私の火竜だ!! 私がそれを教えるはずだった!! 育てるはずだった!!
それを、それを!!
私の火竜を、よくも横取りしやがって!!」
うーん、清々しい罵倒だなぁ。
あたしはニヤニヤとそれを聞いて、そしてヒィを見た。
ヒィは戸惑ったように、あたしを見ている。
あたしは、ヒィに笑い返した。
そして、ざわついている主催者さん達に聞こえるように、わざとらしく言って見せた。
「あるぇー??
この火竜を捨てた悪質テイマーってリリアさんだったんですかー?」
煽ってはいるが、あたしの頭は冷えていく一方だ。
あー、ダメだ。早めにケリをつけよう。
これ、自分ブチギレる手前だ。
まさか、タマがやられるとは。
何があったかって?
主催者さんや、今日この舞台を整えてくれたスタッフさん達、他の参加者(対戦相手)さん達への挨拶を済ませて、企画がスタートしたのだ。
で、冒頭で述べたように、タマが負けた。
「テュケ~~っ、るるる~~」
あーあー、もう、痛かったねぇ。
思いっきり噛まれたもんねぇ。
と、あたしは甘えてくるタマを撫でてモフモフする。
フェンリルの悲劇再び、といえば読者諸君には伝わるだろうか。
そう、エリスちゃんが連れていた新しいモンスターのフェンリル。
開始早々、突っ込んできたフェンリルの口に収まってしまったタマは、一撃必殺とばかりに噛み砕かれ、負け判定となり、戦線離脱となってしまったのだ。
一応三匹に痛いの無い無い、ってしておいたんだけどなぁ。
レベル差ってやつかな。
それともリリアさん達が何かしたのか。
うーん、向こうの子達のステータス見る限り、変な効果は無いし。
わからん。
しかし、どうするか。
ヒィとツグミちゃんの闘争心も、タマが倒されたことで折れてしまった。
フェンリルの横には、双頭竜がどっしりと構えている。
なんなら唸って威嚇してきている。
しかし、あの双頭竜、なにかこう、引っかかるというか。
連想しそうというか。
うー、ダメだ。思い出せない。
こう、喉まで出かかってるんだけれど
あたしが場違いなことで悩んでいると、ヒィとツグミちゃんの不安そうな視線がこちらに向いていたことに気づく。
最初、フェンリルが突進してきたこと以外は向こうはどっしりと構えていてこちらに攻撃してこない。
余裕なのだろう。
「ステータスがゴミの最弱火竜で適うわけないでしょ?」
リリアさんが口を開いた。
ジーンさんも見てるというのに、もう猫を被るのはしてないないようだ。
リリアさんの冷たい目が、かつて育てていたヒィに注がれる。
ヒィは、威嚇する。
「ゴミ?
あー、学校のボランティアでゴミ拾いはよくさせられます。
よく知ってますね?
でもここにそのゴミは持ち込んでませんよ?
目、悪いんじゃないんですか?」
あたしはすっとぼけた。
すっとぼけて、そして、挑発してみる。
リリアさんが、顔を怒りで真っ赤に染める。
ほんとに喧嘩慣れしてないんだな、この人。
「ムカつく」
「え、まさかゴミを受け取りたかったんですか?
リリアさん、変わってますねぇ」
「っ! ドッペルドラゴン!
火炎吐息!!」
双頭竜ってドッペルドラゴンって言うんだ。
あ、ステータスに書いてある。
「ツグミちゃん、退避」
あたしはツグミちゃんにだけ逃げるよう指示を出す。
ヒィには相性的な話になるが、どうせこの技は効かないので、
「ヒィ、それ食べていいよ」
と、指示を出した。
二匹はあたしの指示通りに動いてくれた。
ツグミちゃんは、その瞬発力を活かして向けられた炎から逃げ延びる。
ヒィは美味しそうに、もしゃもしゃと炎を食べた。
火竜に火って、アホだなぁ。
「え、なんで?!」
「なんでって、ヒィは火竜ですよ?
火属性のモンスターに火が効くわけないじゃないですか」
まぁ、レベル差があるから当たれば体力くらい削れるだろうけど。
でも、こうして食べてしまえばそれすら出来ない。
元飼い主のくせに、そんなこともわからないのだろうか?
「違う、こんなのズルだ!!
私がどれだけ教えこんでも【火喰い】なんて覚えなかったのに!!」
あ、この食べるやつにも技名あるんだ。
「え、普通に覚えましたよ?
じいちゃんが煙草の吸殻与えたら美味しそうに食べてましたし」
「火竜になんつーもの食べさせてるの?!」
その反応を見て、あたしは思いつく。
「いや、食べさせるつもりなんて無かったですよ、最初は。
でも、ウチのじいちゃんが使ってる灰皿が舐めたようにピカピカになってたことがあって、それで判明したんです。
マッチの火も食べるし、仏壇の火のついた蝋燭や線香も食べちゃうものだから、ちょっと困ってるんですよねぇ。
どうも、前の飼い主さんがちゃんと躾て無かったようで。
ほんと、どこの誰が躾たかは知りませんけど、責任もってその辺も躾てほしかったですよ。
まあ、どこの誰かはわかりませんが、簡単に命を捨てるような人です、お里と質が知れますけど」
ヒィが火を食べることがわかったくだりは、全部ホントのことだ。
そして、ニヤニヤと煽る。
この際だ、ちゃんとした言質をとってやる。
編集でこのやり取りが消されたとしても、ここに居る人達全員にこの性悪エルフの本性を見せてやろう。
彼女は、あたしの挑発に見事なまでに乗った。
「この、底辺種族が!!
そいつは私の火竜だ!! 私がそれを教えるはずだった!! 育てるはずだった!!
それを、それを!!
私の火竜を、よくも横取りしやがって!!」
うーん、清々しい罵倒だなぁ。
あたしはニヤニヤとそれを聞いて、そしてヒィを見た。
ヒィは戸惑ったように、あたしを見ている。
あたしは、ヒィに笑い返した。
そして、ざわついている主催者さん達に聞こえるように、わざとらしく言って見せた。
「あるぇー??
この火竜を捨てた悪質テイマーってリリアさんだったんですかー?」
煽ってはいるが、あたしの頭は冷えていく一方だ。
あー、ダメだ。早めにケリをつけよう。
これ、自分ブチギレる手前だ。
10
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
【完結】転生したら断罪イベントの真っ最中。聖女の嘘を暴いたら、王太子が真っ青になりました
丸顔ちゃん。
恋愛
王太子は私――エリシアに婚約破棄を宣言し、
隣では甘ったるい声の“聖女”が「こわかったんですぅ♡」と泣き真似をしている。
だが私は知っている。
原作では、この聖女こそが禁術で王太子の魔力を吸い取り、
私に冤罪を着せて処刑へ追い込んだ張本人だ。
優しい家族を守るためにも、同じ結末は絶対に許さない。
私は転生者としての知識を武器に、
聖女の嘘と禁術の証拠を次々に暴き、
王太子の依存と愚かさを白日の下に晒す。
「婚約は……こちらから願い下げです」
土下座する王太子も、泣き叫ぶ聖女も、もう関係ない。
私は新しい未来を選ぶ。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
過労死して転生したので絶対に働かないと決めたのに、何をしても才能がバレる件
やんやんつけバー
ファンタジー
過労死して異世界転生。今度こそ絶対に働かないと決めたのに、何をやっても才能がバレてしまう——。農村で静かに暮らすはずが、魔力、農業、医療……気づけば誰も放っておかない。チートで穏やか系の異世界スローライフ。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる