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ふむ、困ったことになった。
まさか、タマがやられるとは。
何があったかって?
主催者さんや、今日この舞台を整えてくれたスタッフさん達、他の参加者(対戦相手)さん達への挨拶を済ませて、企画がスタートしたのだ。
で、冒頭で述べたように、タマが負けた。
「テュケ~~っ、るるる~~」
あーあー、もう、痛かったねぇ。
思いっきり噛まれたもんねぇ。
と、あたしは甘えてくるタマを撫でてモフモフする。
フェンリルの悲劇再び、といえば読者諸君には伝わるだろうか。
そう、エリスちゃんが連れていた新しいモンスターのフェンリル。
開始早々、突っ込んできたフェンリルの口に収まってしまったタマは、一撃必殺とばかりに噛み砕かれ、負け判定となり、戦線離脱となってしまったのだ。
一応三匹に痛いの無い無い、ってしておいたんだけどなぁ。
レベル差ってやつかな。
それともリリアさん達が何かしたのか。
うーん、向こうの子達のステータス見る限り、変な効果は無いし。
わからん。
しかし、どうするか。
ヒィとツグミちゃんの闘争心も、タマが倒されたことで折れてしまった。
フェンリルの横には、双頭竜がどっしりと構えている。
なんなら唸って威嚇してきている。
しかし、あの双頭竜、なにかこう、引っかかるというか。
連想しそうというか。
うー、ダメだ。思い出せない。
こう、喉まで出かかってるんだけれど
あたしが場違いなことで悩んでいると、ヒィとツグミちゃんの不安そうな視線がこちらに向いていたことに気づく。
最初、フェンリルが突進してきたこと以外は向こうはどっしりと構えていてこちらに攻撃してこない。
余裕なのだろう。
「ステータスがゴミの最弱火竜で適うわけないでしょ?」
リリアさんが口を開いた。
ジーンさんも見てるというのに、もう猫を被るのはしてないないようだ。
リリアさんの冷たい目が、かつて育てていたヒィに注がれる。
ヒィは、威嚇する。
「ゴミ?
あー、学校のボランティアでゴミ拾いはよくさせられます。
よく知ってますね?
でもここにそのゴミは持ち込んでませんよ?
目、悪いんじゃないんですか?」
あたしはすっとぼけた。
すっとぼけて、そして、挑発してみる。
リリアさんが、顔を怒りで真っ赤に染める。
ほんとに喧嘩慣れしてないんだな、この人。
「ムカつく」
「え、まさかゴミを受け取りたかったんですか?
リリアさん、変わってますねぇ」
「っ! ドッペルドラゴン!
火炎吐息!!」
双頭竜ってドッペルドラゴンって言うんだ。
あ、ステータスに書いてある。
「ツグミちゃん、退避」
あたしはツグミちゃんにだけ逃げるよう指示を出す。
ヒィには相性的な話になるが、どうせこの技は効かないので、
「ヒィ、それ食べていいよ」
と、指示を出した。
二匹はあたしの指示通りに動いてくれた。
ツグミちゃんは、その瞬発力を活かして向けられた炎から逃げ延びる。
ヒィは美味しそうに、もしゃもしゃと炎を食べた。
火竜に火って、アホだなぁ。
「え、なんで?!」
「なんでって、ヒィは火竜ですよ?
火属性のモンスターに火が効くわけないじゃないですか」
まぁ、レベル差があるから当たれば体力くらい削れるだろうけど。
でも、こうして食べてしまえばそれすら出来ない。
元飼い主のくせに、そんなこともわからないのだろうか?
「違う、こんなのズルだ!!
私がどれだけ教えこんでも【火喰い】なんて覚えなかったのに!!」
あ、この食べるやつにも技名あるんだ。
「え、普通に覚えましたよ?
じいちゃんが煙草の吸殻与えたら美味しそうに食べてましたし」
「火竜になんつーもの食べさせてるの?!」
その反応を見て、あたしは思いつく。
「いや、食べさせるつもりなんて無かったですよ、最初は。
でも、ウチのじいちゃんが使ってる灰皿が舐めたようにピカピカになってたことがあって、それで判明したんです。
マッチの火も食べるし、仏壇の火のついた蝋燭や線香も食べちゃうものだから、ちょっと困ってるんですよねぇ。
どうも、前の飼い主さんがちゃんと躾て無かったようで。
ほんと、どこの誰が躾たかは知りませんけど、責任もってその辺も躾てほしかったですよ。
まあ、どこの誰かはわかりませんが、簡単に命を捨てるような人です、お里と質が知れますけど」
ヒィが火を食べることがわかったくだりは、全部ホントのことだ。
そして、ニヤニヤと煽る。
この際だ、ちゃんとした言質をとってやる。
編集でこのやり取りが消されたとしても、ここに居る人達全員にこの性悪エルフの本性を見せてやろう。
彼女は、あたしの挑発に見事なまでに乗った。
「この、底辺種族が!!
そいつは私の火竜だ!! 私がそれを教えるはずだった!! 育てるはずだった!!
それを、それを!!
私の火竜を、よくも横取りしやがって!!」
うーん、清々しい罵倒だなぁ。
あたしはニヤニヤとそれを聞いて、そしてヒィを見た。
ヒィは戸惑ったように、あたしを見ている。
あたしは、ヒィに笑い返した。
そして、ざわついている主催者さん達に聞こえるように、わざとらしく言って見せた。
「あるぇー??
この火竜を捨てた悪質テイマーってリリアさんだったんですかー?」
煽ってはいるが、あたしの頭は冷えていく一方だ。
あー、ダメだ。早めにケリをつけよう。
これ、自分ブチギレる手前だ。
まさか、タマがやられるとは。
何があったかって?
主催者さんや、今日この舞台を整えてくれたスタッフさん達、他の参加者(対戦相手)さん達への挨拶を済ませて、企画がスタートしたのだ。
で、冒頭で述べたように、タマが負けた。
「テュケ~~っ、るるる~~」
あーあー、もう、痛かったねぇ。
思いっきり噛まれたもんねぇ。
と、あたしは甘えてくるタマを撫でてモフモフする。
フェンリルの悲劇再び、といえば読者諸君には伝わるだろうか。
そう、エリスちゃんが連れていた新しいモンスターのフェンリル。
開始早々、突っ込んできたフェンリルの口に収まってしまったタマは、一撃必殺とばかりに噛み砕かれ、負け判定となり、戦線離脱となってしまったのだ。
一応三匹に痛いの無い無い、ってしておいたんだけどなぁ。
レベル差ってやつかな。
それともリリアさん達が何かしたのか。
うーん、向こうの子達のステータス見る限り、変な効果は無いし。
わからん。
しかし、どうするか。
ヒィとツグミちゃんの闘争心も、タマが倒されたことで折れてしまった。
フェンリルの横には、双頭竜がどっしりと構えている。
なんなら唸って威嚇してきている。
しかし、あの双頭竜、なにかこう、引っかかるというか。
連想しそうというか。
うー、ダメだ。思い出せない。
こう、喉まで出かかってるんだけれど
あたしが場違いなことで悩んでいると、ヒィとツグミちゃんの不安そうな視線がこちらに向いていたことに気づく。
最初、フェンリルが突進してきたこと以外は向こうはどっしりと構えていてこちらに攻撃してこない。
余裕なのだろう。
「ステータスがゴミの最弱火竜で適うわけないでしょ?」
リリアさんが口を開いた。
ジーンさんも見てるというのに、もう猫を被るのはしてないないようだ。
リリアさんの冷たい目が、かつて育てていたヒィに注がれる。
ヒィは、威嚇する。
「ゴミ?
あー、学校のボランティアでゴミ拾いはよくさせられます。
よく知ってますね?
でもここにそのゴミは持ち込んでませんよ?
目、悪いんじゃないんですか?」
あたしはすっとぼけた。
すっとぼけて、そして、挑発してみる。
リリアさんが、顔を怒りで真っ赤に染める。
ほんとに喧嘩慣れしてないんだな、この人。
「ムカつく」
「え、まさかゴミを受け取りたかったんですか?
リリアさん、変わってますねぇ」
「っ! ドッペルドラゴン!
火炎吐息!!」
双頭竜ってドッペルドラゴンって言うんだ。
あ、ステータスに書いてある。
「ツグミちゃん、退避」
あたしはツグミちゃんにだけ逃げるよう指示を出す。
ヒィには相性的な話になるが、どうせこの技は効かないので、
「ヒィ、それ食べていいよ」
と、指示を出した。
二匹はあたしの指示通りに動いてくれた。
ツグミちゃんは、その瞬発力を活かして向けられた炎から逃げ延びる。
ヒィは美味しそうに、もしゃもしゃと炎を食べた。
火竜に火って、アホだなぁ。
「え、なんで?!」
「なんでって、ヒィは火竜ですよ?
火属性のモンスターに火が効くわけないじゃないですか」
まぁ、レベル差があるから当たれば体力くらい削れるだろうけど。
でも、こうして食べてしまえばそれすら出来ない。
元飼い主のくせに、そんなこともわからないのだろうか?
「違う、こんなのズルだ!!
私がどれだけ教えこんでも【火喰い】なんて覚えなかったのに!!」
あ、この食べるやつにも技名あるんだ。
「え、普通に覚えましたよ?
じいちゃんが煙草の吸殻与えたら美味しそうに食べてましたし」
「火竜になんつーもの食べさせてるの?!」
その反応を見て、あたしは思いつく。
「いや、食べさせるつもりなんて無かったですよ、最初は。
でも、ウチのじいちゃんが使ってる灰皿が舐めたようにピカピカになってたことがあって、それで判明したんです。
マッチの火も食べるし、仏壇の火のついた蝋燭や線香も食べちゃうものだから、ちょっと困ってるんですよねぇ。
どうも、前の飼い主さんがちゃんと躾て無かったようで。
ほんと、どこの誰が躾たかは知りませんけど、責任もってその辺も躾てほしかったですよ。
まあ、どこの誰かはわかりませんが、簡単に命を捨てるような人です、お里と質が知れますけど」
ヒィが火を食べることがわかったくだりは、全部ホントのことだ。
そして、ニヤニヤと煽る。
この際だ、ちゃんとした言質をとってやる。
編集でこのやり取りが消されたとしても、ここに居る人達全員にこの性悪エルフの本性を見せてやろう。
彼女は、あたしの挑発に見事なまでに乗った。
「この、底辺種族が!!
そいつは私の火竜だ!! 私がそれを教えるはずだった!! 育てるはずだった!!
それを、それを!!
私の火竜を、よくも横取りしやがって!!」
うーん、清々しい罵倒だなぁ。
あたしはニヤニヤとそれを聞いて、そしてヒィを見た。
ヒィは戸惑ったように、あたしを見ている。
あたしは、ヒィに笑い返した。
そして、ざわついている主催者さん達に聞こえるように、わざとらしく言って見せた。
「あるぇー??
この火竜を捨てた悪質テイマーってリリアさんだったんですかー?」
煽ってはいるが、あたしの頭は冷えていく一方だ。
あー、ダメだ。早めにケリをつけよう。
これ、自分ブチギレる手前だ。
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