【なにか】助けてくれ【いる】

一樹

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駅の話

後日談

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 ゆっくりと出された茶と菓子を食べて一息ついてから、金髪お化けことイルリスは口を開いた。

 「報告スレを立てて、表向きは事件は解決したってことにしたけど。
 問題は残ったままだ。
 まさか、ここまで尻尾を掴ませないなんて初めてだよ」

 そして、もう一口紅茶を飲む。
 テーブルを挟んで向かい側に座っている、掲示板のなかでは神殿と呼ばれていた雑用係の男は苦笑を浮かべながら、イルリスの言葉を待った。
 彼らが捜査のため利用していた掲示板の一つはすでに削除されている。
 なので、あの考察掲示板で何が語られていたのかはすでに闇のなかである。
 
 「それでも、あの世界での被害があれ以上出なかったのは不幸中の幸いかな」

 「結局、真犯人はわからず終いでしたしね」

 メアリー、伯爵といった渾名がついた者達は、あのあとあの世界を捜査局が調査したところすぐに見つかった。
 それはリモートコントロール用の人形だった。
 つまりは最初から真犯人、黒幕の掌の上で転がされていたということだ。
 
 「でも、結果的には後味が悪い結末になったしね」

 雑用係ーーコテハン名【神殿】の言葉にイルリスは苦々しく返した。
 そう、あの駅の世界での被害者はたしかに出ていない。
 しかし、こちら側では違った。
 保護をしていた少女一家、その他狙われるだろうと思われていた者達が、次々と死んでしまったのだ。
 それは、事故死であったり病気であったり、凶悪な事件に巻き込まれてだったりと理由は様々であった。

 実行犯であった母親の魂は消えたはずである。
 しかし、その母親の子供をイジメ殺したとされる者達や関係者が死んだという事実は現実として目の前に横たわっているのだ。

 「今にして思えば、向こうの勝利条件をもう少し考えておくべきだったんだ。
 ま、本当に今さらだけど」

 神殿やイルリス達の勝利条件は、被害者を保護しあの駅の世界で死なせないこと、殺させないことが条件だった。
 捜査局の調査が一段落し、駅世界は封印された。
 その直後に、様々な要因で母親が恨みを持っていた者達が死んでしまったのだ。
 すべては偶然が重なっただけの偶然として、片付けられた。
 別件で死んでしまったのだ、連続殺人事件ではなく事故なら事故の、事件なら事件の関係者が事情聴取を警察組織で行われ処理されてしまったのだ。

 つまり、捜査局に話がくることは無かったのである。

 「勝利条件、ですか」

 「そう。向こうは関係者を苦しめて殺すことがやっぱり目的であり勝ちだったんだ。
 君が助けたあの子は、父親の事業が失敗して無理心中の道連れにされたしね。
 でも、どんなに捜査局が洗っても黒幕にはたどり着けなかった」

 神殿は、少し驚いたようだったがそれについてはなにも言わず、代わりに、

 「そうですか。それより、本題に入ってくださいませんか?
 まさか愚痴を言いにきたわけではないでしょう?」

 神殿はイルリスを見ながらそう言った。
 イルリスも、神殿を見返す。

 「そう、その通りだ。
 君に頼みたいことがある」

 「改まって、頼み、ですか」

 少し皮肉をこめて返したが、あまり意味は無かった。

 「いわゆるオカ板の監視を頼みたいんだ。
 君の上司には話を通してあるし、調査依頼はこの端末に届くようにしてある」

 言いつつ差し出してきたのは、今回の騒動で渡された携帯端末と同じものだった。
 ちなみに、最初に渡された方は一旦イルリスに返してある。

 「捜査局がすぐに出られないことも珍しくない。
 だから、そういったトラブルが起きたら君が窓口兼担当になってほしいんだ」

 「話が通ってるなら、やっぱり俺には断る選択肢が無いんじゃないですか」

 大きく息を吐き出して、神殿はそう言うとイルリスから携帯端末を受け取ったのだった。
 
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