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カイ、猫と同盟を結成する
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結論から言う。
この屋敷で正気を保っているのは、俺とこの猫だけだ。
……いや、猫じゃない。
聖獣だ。たぶん。
自分で言ってて胃が痛い。
その日は、比較的平和だった。
アリーは刺繍中。
表情はいつも通り。
空気は安定。
――安定しすぎているのが問題だが。
猫は、窓辺で丸くなっていた。
……ふりをして、明らかにこちらを見ている。
(お前、絶対寝てないだろ)
目が合った。
猫は、尻尾を一度だけ、ぱた、と動かした。
来い、の合図。
俺はため息をついて、静かに後を追って部屋を出た。
廊下の角。
誰もいない。
安全確認、完了。
「……で?」
小声で言う。
「何だ、今回は世界が何個滅びかけた?」
猫が、ぴしっと座り直した。
「今日はまだだ」
「“まだ”って言うな」
即ツッコミ。
胃が痛い。
「貴様も、気づいているだろう」
「ああ」
即答。
否定の余地がない。
「主は、自覚がない」
「知ってる」
「善意で、やらかす」
「知ってる」
「止めないと、外に漏れる」
「だから胃が痛い」
沈黙。
――深く、深く、同意の沈黙。
猫が、ぽつりと呟いた。
「……私は、聖獣だ」
「知ってる」
「…キアルラだ」
「…俺は……カイザラート。っで?」
「……本来、人間に使役される存在ではない」
「だよな」
「だが、あの主は――」
「分かってる」
言葉を、引き継ぐ。
「命令しない。縛らない。求めない」
「……それだ」
猫の耳が、少し伏せられた。
「だから、余計に危うい」
「だな」
胃が、きり、と鳴った。
その時。
廊下の向こうから、微かな足音。
二人(?)同時に、気配を殺す。
通り過ぎるのは、乳母。
……視線だけが、一瞬、こちらを掠めた。
(知ってるな)
(知っている)
目が合った気がした。
――何も言われなかった。
それが、一番、重い。
「……なぁ」
俺は、猫を見下ろした。
「同盟、組まないか」
猫は、一瞬、目を細めた。
「条件は?」
「主に気づかせない」
「同意」
「魔塔に嗅がせない」
「最優先」
「危険な優しさは、全力で止める」
「胃が痛むが、やる」
「胃痛は?」
「共有だ」
猫が、小さく、鳴いた。
笑った、……気がした。
その瞬間。
廊下の向こうから、小さな声。
「……カイ」
アリー。
振り返ると、そこに立っていた。
表情は、いつも通り。
でも。
声が、少し、柔らかい。
「……どこ、いくの」
――心臓に悪い。
「……いや」
俺は、頭をかいた。
「猫と、大事な話」
「……そう」
納得したらしい。
それ以上、聞かない。
信じているから。
(やめろ)
(やめてくれ)
(胃が死ぬ)
猫が、すっとアリーの元へ戻る。
撫でられる。
空気が、整う。
(……ああ)
この光景を、守るために。
俺とこの聖獣は、胃を犠牲にする。
それでいい。
――それが、『胃痛同盟』だ。
正式名称?
知らん。
ただ、今日から、俺たちは仲間だ。
・・・たぶん。
胃が痛い、仲間。
この屋敷で正気を保っているのは、俺とこの猫だけだ。
……いや、猫じゃない。
聖獣だ。たぶん。
自分で言ってて胃が痛い。
その日は、比較的平和だった。
アリーは刺繍中。
表情はいつも通り。
空気は安定。
――安定しすぎているのが問題だが。
猫は、窓辺で丸くなっていた。
……ふりをして、明らかにこちらを見ている。
(お前、絶対寝てないだろ)
目が合った。
猫は、尻尾を一度だけ、ぱた、と動かした。
来い、の合図。
俺はため息をついて、静かに後を追って部屋を出た。
廊下の角。
誰もいない。
安全確認、完了。
「……で?」
小声で言う。
「何だ、今回は世界が何個滅びかけた?」
猫が、ぴしっと座り直した。
「今日はまだだ」
「“まだ”って言うな」
即ツッコミ。
胃が痛い。
「貴様も、気づいているだろう」
「ああ」
即答。
否定の余地がない。
「主は、自覚がない」
「知ってる」
「善意で、やらかす」
「知ってる」
「止めないと、外に漏れる」
「だから胃が痛い」
沈黙。
――深く、深く、同意の沈黙。
猫が、ぽつりと呟いた。
「……私は、聖獣だ」
「知ってる」
「…キアルラだ」
「…俺は……カイザラート。っで?」
「……本来、人間に使役される存在ではない」
「だよな」
「だが、あの主は――」
「分かってる」
言葉を、引き継ぐ。
「命令しない。縛らない。求めない」
「……それだ」
猫の耳が、少し伏せられた。
「だから、余計に危うい」
「だな」
胃が、きり、と鳴った。
その時。
廊下の向こうから、微かな足音。
二人(?)同時に、気配を殺す。
通り過ぎるのは、乳母。
……視線だけが、一瞬、こちらを掠めた。
(知ってるな)
(知っている)
目が合った気がした。
――何も言われなかった。
それが、一番、重い。
「……なぁ」
俺は、猫を見下ろした。
「同盟、組まないか」
猫は、一瞬、目を細めた。
「条件は?」
「主に気づかせない」
「同意」
「魔塔に嗅がせない」
「最優先」
「危険な優しさは、全力で止める」
「胃が痛むが、やる」
「胃痛は?」
「共有だ」
猫が、小さく、鳴いた。
笑った、……気がした。
その瞬間。
廊下の向こうから、小さな声。
「……カイ」
アリー。
振り返ると、そこに立っていた。
表情は、いつも通り。
でも。
声が、少し、柔らかい。
「……どこ、いくの」
――心臓に悪い。
「……いや」
俺は、頭をかいた。
「猫と、大事な話」
「……そう」
納得したらしい。
それ以上、聞かない。
信じているから。
(やめろ)
(やめてくれ)
(胃が死ぬ)
猫が、すっとアリーの元へ戻る。
撫でられる。
空気が、整う。
(……ああ)
この光景を、守るために。
俺とこの聖獣は、胃を犠牲にする。
それでいい。
――それが、『胃痛同盟』だ。
正式名称?
知らん。
ただ、今日から、俺たちは仲間だ。
・・・たぶん。
胃が痛い、仲間。
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