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猫(聖獣)、・・・バレる
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――……あ、これは、バレたな……
まず言っておく。
私は、正体を隠す気はあった。
本当に。
だが。
アリーのそばにいると、色々と、判断が甘くなる。
……聖獣として、致命的だ。
その日。
アリーは、珍しく外出していた。
乳母と一緒に。
屋敷は、静か。
問題は、静かすぎたことだ。
私は、日向で丸くなりながら、油断していた。
怪我は、ほぼ完治。
魔力も、戻ってきている。
(……少しくらい、伸びをしてもいいだろ)
その判断が、すべての間違いだった。
私は、伸びた。
ただの、猫の伸び――の、つもりだった。
だが。
空気が、わずかに、揺れた。
魔力が、流れた。
近辺が、整った。
(……あ)
やらかした。
完全に。
「……今の、何だ?」
背後。
低い声。
振り向くと、そこにいた。
カイザラード。
腕を組み、眉を寄せ、完全に“理解し始めている顔”。
(最悪だ)
「猫の、ストレッチ?」
私は、とぼけた。
全力で。
「……そうは見えないな」
即否定。
早い。
鋭い。
胃が痛む――
いや、私の胃ではない。
だが、同じ気分だ。
「……この屋敷、時々、空気が変わる」
カイは、静かに言った。
「アリーが触れてる時と、お前が動いた時。
……似てる」
(やめろ!
言語化するな!
察せ!
そして黙れ!)
だが、彼は、もう一歩踏み込んだ。
「普通の猫は、空間を“落ち着かせない”」
――あ。
これは、もう、無理だ。
私は、ため息をついた。
人間に見せるつもりのない、聖獣のそれ。
「……どこまで、気づいた?」
「確証はない」
即答。
だが。
「ただ、“関わると胃が痛くなる存在”なのは、確実」
……正解だ。
満点。
「問い詰める気は?」
私が聞く。
「ない」
迷いなく。
「知りたくないことは、知ると、守れなくなる」
(……常識人め)
私は、少しだけ、本気で彼を見た。
「一つだけ、聞かせろ」
カイが言う。
「お前は、アリーの味方か?」
その問いに、迷う理由はない。
「……命を懸ける程度には」
ほんの、少し、本音が漏れた。
彼は、目を閉じ、短く息を吐いた。
「……了解」
それだけ。
それ以上、何も言わない。
追及しない。
詮索しない。
――信じた。
その時。
廊下の向こうから、足音。
アリーが、戻ってきた。
私は即座に、ただの猫のふりをする。
完璧に。
毛繕い。
欠伸。
無害。
カイも、何も言わない。
完璧な共犯者。
アリーは、私を見て、少しだけ、安心した顔をした。
……気づいていない。
何一つ。
それでいい。
それが、最善だ。
カイと、一瞬だけ、視線が合う。
彼は、小さく、口を動かした。
(……胃が痛いな)
(同感だ)
私は、尻尾を、ほんの一度、揺らした。
まず言っておく。
私は、正体を隠す気はあった。
本当に。
だが。
アリーのそばにいると、色々と、判断が甘くなる。
……聖獣として、致命的だ。
その日。
アリーは、珍しく外出していた。
乳母と一緒に。
屋敷は、静か。
問題は、静かすぎたことだ。
私は、日向で丸くなりながら、油断していた。
怪我は、ほぼ完治。
魔力も、戻ってきている。
(……少しくらい、伸びをしてもいいだろ)
その判断が、すべての間違いだった。
私は、伸びた。
ただの、猫の伸び――の、つもりだった。
だが。
空気が、わずかに、揺れた。
魔力が、流れた。
近辺が、整った。
(……あ)
やらかした。
完全に。
「……今の、何だ?」
背後。
低い声。
振り向くと、そこにいた。
カイザラード。
腕を組み、眉を寄せ、完全に“理解し始めている顔”。
(最悪だ)
「猫の、ストレッチ?」
私は、とぼけた。
全力で。
「……そうは見えないな」
即否定。
早い。
鋭い。
胃が痛む――
いや、私の胃ではない。
だが、同じ気分だ。
「……この屋敷、時々、空気が変わる」
カイは、静かに言った。
「アリーが触れてる時と、お前が動いた時。
……似てる」
(やめろ!
言語化するな!
察せ!
そして黙れ!)
だが、彼は、もう一歩踏み込んだ。
「普通の猫は、空間を“落ち着かせない”」
――あ。
これは、もう、無理だ。
私は、ため息をついた。
人間に見せるつもりのない、聖獣のそれ。
「……どこまで、気づいた?」
「確証はない」
即答。
だが。
「ただ、“関わると胃が痛くなる存在”なのは、確実」
……正解だ。
満点。
「問い詰める気は?」
私が聞く。
「ない」
迷いなく。
「知りたくないことは、知ると、守れなくなる」
(……常識人め)
私は、少しだけ、本気で彼を見た。
「一つだけ、聞かせろ」
カイが言う。
「お前は、アリーの味方か?」
その問いに、迷う理由はない。
「……命を懸ける程度には」
ほんの、少し、本音が漏れた。
彼は、目を閉じ、短く息を吐いた。
「……了解」
それだけ。
それ以上、何も言わない。
追及しない。
詮索しない。
――信じた。
その時。
廊下の向こうから、足音。
アリーが、戻ってきた。
私は即座に、ただの猫のふりをする。
完璧に。
毛繕い。
欠伸。
無害。
カイも、何も言わない。
完璧な共犯者。
アリーは、私を見て、少しだけ、安心した顔をした。
……気づいていない。
何一つ。
それでいい。
それが、最善だ。
カイと、一瞬だけ、視線が合う。
彼は、小さく、口を動かした。
(……胃が痛いな)
(同感だ)
私は、尻尾を、ほんの一度、揺らした。
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