異世界の救世主になろう!~主役はやっぱり勇者だ~

☆ウパ☆

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本編

14

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「腰痛い~」
「腰痛い~」
「まだつかねーのかな?」
「そろそろだと思いますよ、あ!見えた!」
「おお!あれか!デカい街だな!」

見ると今まで回ってきた街をはるかに超える大きさの街が見えていた。検問をされ、門をくぐると街は人であふれかえっていた。商人達が客寄せに叫んでいる。

「そこのおにーちゃん!これどお?買ってかない?」
「金?んじゃ、安くしとくよ!?」
「ウチで買っていった方が得さ!」
「そこのお二方のお嬢さん、偉くべっぴんさんだな!君達にはこの香水なんてどうかな!?」

「え!?その肉ひとつくれ!」
「この酒うめぇ!樽で2つ!」
「なかなかの切れ味だな、この剣」
「はわわわわ!かわいい!このネックレス!」

「お前ら遊びに来た訳じゃない」
「そうです!早くギルドに行かないと!」
「そう、焦るなって!」
「はぁー全く」

菅野がため息をついた時だった。市場の奥でなにやら騒ぎが起きている。急いで見に行ってみると、どうやら盗みを働いた奴がいたようだ。

「誰か!そいつを捕まえてくれ!」
「おお!ここで異世界系アニメお決まりの勇者勇真様の出番だな!よし!まてぇぇええ!」
「おい!ユージン!」

神器を肌身離さず持っていれば、身体能力は著しく働くようになっている。神器を背中に収めているユージンはやはり早かった。

「なんだ!?あいつ!めちゃくちゃはぇえ!」
「待て!盗みなんてつまらないマネするんじゃない!田舎の親御さんが泣いているぞ!」
「うるせぇ!なんなんだあいつは!畜生!」

男は急に進路を変更し、路地裏のような場所に入った。

「まて!」

随分狭い道に入った。しかし、ユージンは冷静に考えていた。

「この流れはこの後、犯人を見失う展開だな…よし!」

よっ、というかけ声とともに壁を走って男より前に出ようと思った。

「てめぇ!一体何者だ!?」

男までの距離およそ5メートル程のところで道沿いにひとりの女がいることに気が付いた。

「あらら、困った」

この道は一本で曲がるとこなどない、男があの女性を人質に逃走するかもしれない、そう思ったユージンはスピードを上げたが、どうにも間に合いそうになかった。

「そこの女!どけ!」

と走りながら男は腰からカッターナイフのような物を出し、叫んだ。

「おい、あんた!あぶねーぞ!!」

言っても聞かない女に苛立った男はナイフを女に向かって突き刺そうとした。もうダメだ、と思った時男の身体が宙を舞っていた。きれいな一本背負いだった。壁から降りたユージンは慌てて女に近寄った。

「弱い男だ...」
「あんたすげーな、ケガは無いのか?」
「...」

黙ってこちらをみる女をみて気が付いた。

「(おお、可愛い顔してんな、ネロとペルに負けてないぞ、そんで胸が大きい。)」

近くで見て改めておもった。女は金髪でツインテール、スタイルは良く顔立ちも良い、育ちが良いことも雰囲気で伝わってきた。顔に似合わず腰に武器を装備していた。ここに来る前のネロの街にいるのはほとんどが冒険者という言葉を思い出した。

「あんた冒険者なのか?」

しかし、女は無言である。

「ま、いいやありがとな!」

男を担ごうとしゃがんだ瞬間だった。丁度良い高さで顔面に蹴りを入れてきた。だが、神器で反応速度も上がっていたので左手で足首を掴む。

「ほぅ...」

女のわりに力は強かった。

「いや、いきなり何すんの」

一応苦笑いで返すがやはり女は無言だった、しかし女は笑っていた。笑った顔を見て気を緩めた瞬間、今度は右からストレートが飛んできた、これも左手でとめる。このままではまた何か仕掛けてくると悟ったユージンは一度距離をとった。

「いや、何にやけてんの?いきなり鉄拳とばすとかラオウかよ」
「あなた、どこのギルドに所属してるの?」

女はやっと口を開いた。

「どこのって...」
「私達のギルドじゃないわね、とりあえず《シェールスギルド》じゃないことを祈るわ。まあ、初撃であなたがただ者じゃないことは分かったけど、かなりのステータスね。どうやってそこまでレベル上げしたのかしら?」
「いや、ちょっと話を聞けってば」
「話?なにを話すの?どうせあなた私の装備目当てでしょ?そこの男とグルで」
「失礼だな!そんな事しねーよ!まあ、君みたいな可愛い子だったら、裸体も喜んでみるけど」

少し、女がピクッと反応したのがわかった。

「あなた、今なんて?」
「(やばっ!怒らせた?!)いや、裸体がみたいな~なんて」
「もう、少し前」
「君みたいな可愛い子、って」
「~~~っ///私そんなに可愛い?!」
「は?え?あ、うん可愛いね」
「きゃ~~///もう、やめてよ!もう、私の旦那に決定!多分私より強いし、性格良いしっ!」
「(......この人痴女だ、どうしよう)」
「ところでダーリンはどこのギルドに入ってるの~?」
「(嫌だっ!嫌だっ!こんな女!俺は痴女に興味ない!早く逃げるんだ!そして、ネロのあのデカい胸に飛び込むんだ!)す、すいません帰りますサヨナラ」
しかし、腰を引っ張られる。
「ダーリン...どこ行くの?」
「ひっ!!」

後ろからとてつもない殺気を浴びてしまい、足が動かない。

「(しかし男、勇真ここはちゃんと言うべきだ)あのさ、いきなり今日会った見知らぬ男の事をダーリンなんて言っちゃダメだよ。俺達出逢ってからものの数分だよ?そういう事はさ、何回かデートとか行ってからにした方が良いんじゃないかな?なんて思ったりして...それじゃ!」
スキを見て逃げ出した。
「あっ」

◆◇◆

盗まれた物を店主に返した。「兄ちゃんありがとよ!」と威勢のいい流石商人!という声だった。視線はこちらに集まって少々恥ずかしかったが。無事透達とも合流できた。ネロをみるたび胸に飛び付いた。

「ネロ~お前は可愛いな~けしからん乳だけどな」
「ちょっ、ユージン様!?どうしたんです?」
「ユージン!貴様!生かしてはおれんぞ!」
「オレもお願いして良いかな...」
「いや、ダメだろ」
「ちょっと!アマイ!あたしの胸は!?」
「ペルは何をいってんの...」
「ユージン様、人前で恥ずかしいです~、それに激しく揉まないでくれません?」
「じゃ、人前じゃないとこでやろうな」

といって胸から離れた。

「ダメだから!」
「とにかく、ギルドへ行ってみようよ!」
「それだけど、店の人に聞いたらギルドはひとつじゃないらしい」
「ええ、そうです。ギルドは七つに分かれています。七つの大罪をご存知でしょうか?」
「おう、アニメでみたな」
「アニメというものは分かりかねますが、七つの大罪というのは傲慢、強欲、色欲、嫉妬、怠惰、憤怒、暴食と七つに分かれています。これは神話に登場する有名な悪魔達が背負ったそれぞれの罪です。その元は人間の全ての感情からきてると言われています。ギルドというのは元々昔は宗教団体だったのですが、当時特殊な力を持つ聖職者達がいて、神の力で依頼のあるモンスターを討伐して、団体の資金にしたというのが始まりだそうです。それぞれのギルドで祀る悪魔は違っているんです。」
「じゃああたし達がギルドに入ったら悪魔の信者になるってこと?」
「いえ、それは昔の事で今はその様な事はないですよ、ただギルドの中には《シェールスギルド》と呼ばれるヤバいギルドもあるんです。」
「(あの子が言っていたギルドだな)シェールスって?」
「ラテン語で犯罪って意味の事」
「犯罪ギルド!?やだなー」
「現時点で《シェールスギルド》となっているのは強欲の〈アワリティア〉と色欲の〈ルクスリア〉ですね。アワリティアの主な仕事は殺しと盗みで、特定のステータスと男というのが条件になっています。ルクスリアは女性のみのギルドになっていて色仕掛けで男性の暗殺をしたり等の仕事内容ですが、人数は多くないようです。」
「色仕掛けで暗殺か...それで死ねるなら本望だな…」
「って事は残りの5つな訳だけど、どうしようか。」
「人数の多いギルドの方が良いんじゃないか?仕事とか多そうだし」
「確かに」
『やめた方が良いぜ、人数の多いギルドはよ』
「あれ?バハムート、起きてたのか?」
「どういう事だ?仕事は多い方が良いだろう」
『わかってねえな、人数が多いんだったら入るためのテストがあるだろう。』
「そっか、人数が多ければ仕事の回転率はあがるけど今度は冒険者達を支援しているギルドが困るのか」
「支援?」
「冒険者に生活や身の回りの事を支援してくれる、かわりに雇った分依頼を達成するのがギルドと冒険者達の条約なんだ」
「へー」
「では、人数の多い憤怒の〈イラ〉と暴食の〈グラ〉は無しですね、残りの人数の少ないギルドというと傲慢の〈スペルビア〉か嫉妬の〈インウィディア〉か怠惰の〈アケディア〉ですね」
「候補は3つか」
「しかし、アケディアは未だに悪魔の信者が多いと聞きます」
「え”っ!やだ!普通にお祈り毎日捧げるとかまじごめん」
「んーじゃあどっちか選ばないと」
「あ!そういえば!」
「どうした?」
「ギルドにはそれぞれ首席がいるんですけど」
「ちょっとまった!ランキングとかあんの?」
「はい、年に一度この街の東側にあるコロシアムでギルド同士の大会があるんですよ。そこでランキングされるんですけど、たしかスペルビアに前大会でギルドは下でしたけど個人で一位になった人がいましたよ、えーと名前はたしか、マリア・トロントだったような」
「へーあってみたいね」
「じゃあ、そっちへ行ってみるか」
『確かに、強い奴がいる所の方がお前達にとっても都合が良いだろう。』
「そこまで遠いのか?」
「いえ、そこの裏路地を抜けてすぐの所みたいですね」

といってネロが示したのは先程ユージンが散々な目に遭った裏路地だった。

「げ、」
「どうしました?」
「いや、なんでも。早く行こうか」

スペルビアに着くと人数は少ないと言ってもなかなかの大きさの建物があった。中に入ると百人程の人が酒を片手に賑わっていた。

「ここ、ホントに人数少ないの?」
「の、ハズなんですけどね」

酒を扇いでいる一番近くの男に話しかけた。

「あの、俺達ギルドに加入したいんだけど」
「ああ?ぷっハハハハハ!なんだガキ、家と間違えたか?おい、見ろよおめーら!新人だぞー!!」

とても笑い者にされたが、まあアニメだと良くある話だよな。と軽く流していた。

「まじかよ!?そいつら!?まだガキじゃん!ハハハハハ!」
「酒が飲めるようになったら来な!そしたら飲み比べでもしてやるよギャハハハハ!」

酒が入っているからなのか、それとも日常的にこうなのか、ユージンは冒険者というのが少し下品に感じられた。

「あの、受付的なとこあるの?」
「自分で探せって!ハハハハハ!」
「あー、はいはい懇切丁寧にどうも」

奥にカウンターが見える、多分あそこだろう。カウンターに向かって歩き出そうとした時、男のひとりが歩こうとしたユージンの前に立つ、単なる嫌がらせだ。

「すんません通して下さい」
「ギルドはな、先輩冒険者に酒を奢る習わしがあるんだよククク」

嘘だと分かったが、ここは冷静に答えた。

「だから、まだギルドに入ってねぇの」
「前払いだよ、前払いそれとも、そこの可愛い子達が相手してくれんなら良いけど」
「あー、お好きにどうぞー…ただし、お前らの手がウチの仲間に触りでもしたら手首から先がなくなるぞ」
「舐めた口きくんじゃねーよ!」

ユージンに向かって拳を振るおうとした習慣だった、透の抜いたナイフが男の首を捉え、ペルーシャが男の目を拳一つ分の距離で弓を構えている、そして男とユージンの前に2メートルの巨身を持つ天井が立っていた。

「やめよう、やり過ぎ」

男は自分の命愛おしさに腰がぬけてしまった。

「なんなんだ?あいつらは」

酒を片手に賑わっていた冒険者達が一気に静まった。一部始終を見ていた受付嬢らしき女性が怖がっていた。受付を始めようとした時、後ろで扉が勢い良く開いたのが分かった。

「マリア!あのガキどもを少し調教してやってくれ!頼む!」

どこかで聞いた事のある名前だった。

「お前ら終わったな!マリアはこのギルド、いや、他のギルドの奴らとは桁が違う奴なんだ!お前らなんか3秒あれば殺されるぞ!」
「さあ!やってくれマリア!ってお前酒を飲んでいるのか!?」
「うるへー!こちらとらさっき男にフラれて逃げられたのよ!ああ、愛しのあの人来てくれないかしら。」

そうか、マリアというのはこのギルドの首席だった。

「私は今、虫の居所が悪いわよ!そこのガキ共!!んで、どいつよ」
「なんかマズい雰囲気」
『あの女、なかなかの強者だ気をつけろアマイ』
「あの男だマリア!」
「マリア・トロントだったっけ?俺はあんたに会いに来るのが理由でもあったんだ、ってええ!!?」

マリア・トロントの顔の主をみて驚きを隠せなかった。

「へー、嬉しいわ!でも、私の旦那はあの人って決まってるのよごめんなさいね......ええ!!?」
マリアも今から手合わせしていたであろう相手を見て驚いた。なんと、路地裏で鉢合わせてしまった彼女だった。

「だ、だ、ダーリン!!」
「「「ええー!!??」」」

その場にいた全員が驚愕した。
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