51 / 60
本編
50
しおりを挟む
「なんとか言えよ...楽しくないじゃんか…なぁ?お前ちゃんと怖がってんのか?」
言うまでもなくバルディアは目の前にいる男に恐怖していた。それは見ただけでも伝わってくる、身体はバルディアの意思に逆らうようにガタガタと震えを止まらせてくれない、足は本当に両足とも自分についているのか、本当は両足とも取られているんじゃないかと思うほど力が入らない、いやそもそも感覚がない。
「お前みたいなクズ人間、相手にしてるだけ無駄だな。」
「ま、待って...下さ...い」
バルディアはここで人生初の敬語を使った。ぎこちなく応えてはみたが、ちゃんと聞こえただろうか、使い方は正しかったろうか。と完全にユージンを上に見た考え方だった。
「やっと反応してくれたな?んで?どうよ、怖いの?」
「なに...が目的なの...でしょ...か?」
その時、プツンと何かが切れたかのようにユージンの顔が大きく歪んだのがわかった。
「質問を質問で返すな!《キラークイーン》!」
その時傍から見ていたイトエラの目にははっきりとユージンが先程同様に人型の『何か』を出すのが写った。
「もう、お前にはノミ程にも興味がないわ!」
「ひぃぃ...た、助けてぇ...」
「死んで俺の前から消えろ。《キラークイーン第一の爆弾ッ》!」
ユージンが右手でバルディアの額に触れ、後ろのなにがスイッチを押すようなポーズをとった瞬間だった。それを阻止するようにキラークイーンが剣で切りつけられる。しかし、頑丈な身体のために剣と腕が接触すると双方弾き飛ばされた。
剣で弾いた人物を後ろで眺めていたイトエラとムーサにはその人物に見覚えがあった。
「なにをやっているのですか!早く剣をとって陛下を守りなさい、イトエラ!ムーサ!」
その言葉に押されるように我に返った2人は剣を腰から抜いて素早くバルディアの前に立つ。
「なんだお前らは」
憤怒と殺気のこもったなんとも言えない発言に木の棒で硬い地面を殴ったように手首に痺れが走る。ここで初めて緊張、恐怖というものを体験したと悟った。
「良いのか?そいつはさっきまでお前達を斬首するやら奴隷にするやらと発言していた奴だぞ。守る意味でもあるのか。」
イトエラはその返答に困った。それは彼女が先程バルディアが殺されそうになっていたのを見て恐怖、というのもあったが微かに喜びを感じたからだ。さっきまで自分を奴隷にすると言って嘲笑していた奴がものの十分後にはここまで怯えているのが嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
だから、今更バルディアを守ってもなにか意味があるのかと言われてもなにもない、むしろ自分が殺してやりたいぐらいだ。
だがひとつ思うこと。
「それが私の仕事だ。」
ルピ、ムーサがどんな考えでこのバルディアを守っているのかはわからない、しかし同僚である、同じ苦難を共にしてきた仲間が自分の役目、このバルディアを守るという役目に自信を持って真っ直ぐな瞳をしている。それを見て曲がった考えを持っていた自分がとてもみすぼらしく、恥ずかしく思えたのだ。それに、この男がいなくなってしまっては、自分達の今後の関係がなくなってしまう、それが一番嫌だった。
「(私はこれからもお前達と、一緒に居たいよ。)」
ユージンはくるりと180°回転すると3人に背を向けて歩き出した。
「やめだやめだ、冷めちまった。帰るぞネロ。」
「はい!」
ネロが走ってユージンに向かう。そしてユージンは首だけこちらに向けた。
「おい、デブ。」
「ひぃ...」
バルディアは自分に視線が向けられ、声にならない悲鳴を上げた。
「お前の事、しっかり監視してるからな...いつでも殺しにくるぞ…」
バルディアは無言で素早く首を縦に振る。それこそブンブンと音が出そうなくらい。そして近くにいたネロがバルディアの方へ一歩前に出て、口を開いた。
「今後ともガリアとは友好的な関係を築いていきたく思っております。」
一礼をし、ユージンのもとまで走っていくと、二人の姿は一瞬にして消えた。
言うまでもなくバルディアは目の前にいる男に恐怖していた。それは見ただけでも伝わってくる、身体はバルディアの意思に逆らうようにガタガタと震えを止まらせてくれない、足は本当に両足とも自分についているのか、本当は両足とも取られているんじゃないかと思うほど力が入らない、いやそもそも感覚がない。
「お前みたいなクズ人間、相手にしてるだけ無駄だな。」
「ま、待って...下さ...い」
バルディアはここで人生初の敬語を使った。ぎこちなく応えてはみたが、ちゃんと聞こえただろうか、使い方は正しかったろうか。と完全にユージンを上に見た考え方だった。
「やっと反応してくれたな?んで?どうよ、怖いの?」
「なに...が目的なの...でしょ...か?」
その時、プツンと何かが切れたかのようにユージンの顔が大きく歪んだのがわかった。
「質問を質問で返すな!《キラークイーン》!」
その時傍から見ていたイトエラの目にははっきりとユージンが先程同様に人型の『何か』を出すのが写った。
「もう、お前にはノミ程にも興味がないわ!」
「ひぃぃ...た、助けてぇ...」
「死んで俺の前から消えろ。《キラークイーン第一の爆弾ッ》!」
ユージンが右手でバルディアの額に触れ、後ろのなにがスイッチを押すようなポーズをとった瞬間だった。それを阻止するようにキラークイーンが剣で切りつけられる。しかし、頑丈な身体のために剣と腕が接触すると双方弾き飛ばされた。
剣で弾いた人物を後ろで眺めていたイトエラとムーサにはその人物に見覚えがあった。
「なにをやっているのですか!早く剣をとって陛下を守りなさい、イトエラ!ムーサ!」
その言葉に押されるように我に返った2人は剣を腰から抜いて素早くバルディアの前に立つ。
「なんだお前らは」
憤怒と殺気のこもったなんとも言えない発言に木の棒で硬い地面を殴ったように手首に痺れが走る。ここで初めて緊張、恐怖というものを体験したと悟った。
「良いのか?そいつはさっきまでお前達を斬首するやら奴隷にするやらと発言していた奴だぞ。守る意味でもあるのか。」
イトエラはその返答に困った。それは彼女が先程バルディアが殺されそうになっていたのを見て恐怖、というのもあったが微かに喜びを感じたからだ。さっきまで自分を奴隷にすると言って嘲笑していた奴がものの十分後にはここまで怯えているのが嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
だから、今更バルディアを守ってもなにか意味があるのかと言われてもなにもない、むしろ自分が殺してやりたいぐらいだ。
だがひとつ思うこと。
「それが私の仕事だ。」
ルピ、ムーサがどんな考えでこのバルディアを守っているのかはわからない、しかし同僚である、同じ苦難を共にしてきた仲間が自分の役目、このバルディアを守るという役目に自信を持って真っ直ぐな瞳をしている。それを見て曲がった考えを持っていた自分がとてもみすぼらしく、恥ずかしく思えたのだ。それに、この男がいなくなってしまっては、自分達の今後の関係がなくなってしまう、それが一番嫌だった。
「(私はこれからもお前達と、一緒に居たいよ。)」
ユージンはくるりと180°回転すると3人に背を向けて歩き出した。
「やめだやめだ、冷めちまった。帰るぞネロ。」
「はい!」
ネロが走ってユージンに向かう。そしてユージンは首だけこちらに向けた。
「おい、デブ。」
「ひぃ...」
バルディアは自分に視線が向けられ、声にならない悲鳴を上げた。
「お前の事、しっかり監視してるからな...いつでも殺しにくるぞ…」
バルディアは無言で素早く首を縦に振る。それこそブンブンと音が出そうなくらい。そして近くにいたネロがバルディアの方へ一歩前に出て、口を開いた。
「今後ともガリアとは友好的な関係を築いていきたく思っております。」
一礼をし、ユージンのもとまで走っていくと、二人の姿は一瞬にして消えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる