異世界の救世主になろう!~主役はやっぱり勇者だ~

☆ウパ☆

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本編

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ユージンとネロが転移した先はベッド等が横にそれぞれ並んだ部屋だった。いつも宿泊している部屋にはもう慣れがある。一番近いベッドへ腰をおろし、ふぅと留めていた息を吐き出した。
隣のベッドで横になっていた菅がこちらを覗く。

「帰ったか…」
「おう!無事ネロもな!」
「大丈夫ですか?菅様」

菅が寝ているベッドへ近づきながら心配そうな顔を見せる。

「傷は俺が《クレイジーダイヤモンド》で綺麗に直しておいたけど、安静にしとけ。」
「ああ、痛みはないんだが、疲れが溜まっててな。それで、上手くいったか?」
「ああ、まあな」

その話に、ネロは聞いていない。だが、恐らく先の事だろう。

「なんの話ですか?」
「ユージンとルピには演技をする様に言ったんだ。ガリアの王はルピが前線から離脱してそのままどこかに逃亡したと思っているのはわかってたから。」
「わざと俺がああいう態度とってルピの立場をあげてやるって作戦さ。加えてこれ以上の厄介事はこっちもゴメンだから最後に釘を刺させてもらったけどよ。」
「でも、良かったんですか?」
「何が?」
「ルピさんがそれを承諾したんですか?」
「したと言うか、させた?まあ、でも最期はわかってくれたし、双方のためだからな。条件としてピンチの時は駆けつけてくれるらしいからな頼もしいよ。」

ユージンは何かを思い出したかのように視線をネロから部屋の各所に移す。

「そういえば、ルピ達と一緒にいたあいつらは?」
「転移して送ったよ。」
「あの!モモちゃん達は...」
「ああ、隣の部屋でぐっすりさ。ユージンが行ったならもう自分達にやることはないって。」
「ひとまずこの件についてはかたがついたということでしょうか?」
「そうだな...あとは」

そして、ゆっくり視線を隣に立っているネロに移し、笑顔で話す。

「ネロ、お前はアンツィオに戻れ。」

ネロはなにを言われているのか一瞬分からなかった。言われるはずがないと思っていた、いや、考えすらしなかった言葉だったからだ。

「どうしてですか」
「お前を俺達が連れ回していたから今回のこの件が悪化したっていうことでもあるんだ。わかってるだろ?」

そうだ、今回の件はガリアの要望にネロが不在のため、応えられなかったから最悪の状況になったともいえる。
その時後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

「そうだな。今回はユージンが両軍の接触を早めに終わらせられたから被害は殆どなかった。それに、ガリアにユージンの知り合いがいた事も不幸中の幸いってやつだな。ただもしも、次があればもっと酷いことになるかもしれない。」

扉を開けて入ってきたのは透と天井だ。2人ともとても疲れた表情が伺える。
落ち込んだ様子のネロの肩を一度ポンと叩いてどうにか慰めようとする。
ネロの気持ちはユージン達も充分に理解しているが、やはり一国の王である人物が民に紛れてしかも、危険な冒険者という仕事をしているなど前代未聞だ。

「(いや、はじめから反対はしていたんだけれど...)」
「ネロは俺達の案内役って事だったけど元々俺達は4人で旅をしようとしてたから、ネロはネロで自分の国の事を、自分の仕事を全うすべきだと思う。」
「透様...」
「寂しくなるけど、俺達の情や都合でお前を連れ回すのはワガママって奴だ。」
す「遅かれ早かれいつかはこうなっていた事だ、致し方ない。」

ネロの様子は、最早言うまでもなく諦めていた。

「仕方...ないですね...では、ひとつだけ約束を」
「なんでも言ってくれ、お前と俺達の仲だ。」
「...困った時はいつでも頼って下さい。皇帝としてではなく、ネロという仲間として。」
「じゃあ、そっちも...な?」
「もちろん最初からそのつもりです。」

◆◇◆

「ネロさん、元気ですかね~...」
「別れてからまだ3日しかたってないだろ...」

ユージン達と別れたネロはアンツィオに無事帰還し、ガリア国との平和条約を制定して戦争は終結した。この戦争は前代未聞の「戦死者が出なかった」加えて「過去最短」として、後々の世代にも広く語られることとなる。

「(もう、戦争じゃなくね?)」
「どうしたの?変な顔して。」
「いや、別に」

様々な国家や種族の間ではもちろんユージンの名前もあがっていた。つい先程クエストを受注しようとギルドに立ち入った際、一斉に野次馬ができた。聞いてきた内容はもちろん今回のガリアとの騒動の事、加えてどこで耳にしたのかネロの事も。ユージンはあった事を話そうとしたが冒険者達が耳にした噂があまりに誤解をまねいていた。
そこで聞いたユージンの噂とは「獣の様なの咆哮をあげて1万の兵を敵味方関係なく切り捨てた」や「ローマ皇帝と実はデキちゃってました」等と口を開けば良い噂はひとつも入ってこなかった。

「切り捨ててねーし、デキてもねーよ...」
「なにか言ったか?」
「あ、いや。」

はぁ、とユージンはため息をついた。

「(昨日もギルドマスターとか言う、老いたじじいに三時間みっちりお説教くらって...俺は出身でもないこの国のために1万位の軍と戦ったのに...まあ、対抗戦で優勝したからそこまで言われなかったけど)」

今は受注したクエストを終えて街を歩いているところだがかなり視線が痛い。
ユージンは心の中で帰ったら部屋に籠ろうと決意した。


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