異世界の救世主になろう!~主役はやっぱりヒーローだ~

☆ウパ☆

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ノックは壁をぶち破る

6-2 魔王

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そこは言うなれば地獄、永年人間のみならず生きとし生けるものに死を与え続け、様々な生物から恐れられた存在がいる場所。

「魔王様、準備が整ったようです。」

魔王と呼ばれた人物はとても人間という存在から離れた見た目だった。肌の色は赤く、角が二本頭のサイドから生えていた。それは、東にあるという島国に古くから伝わる魔物の一種『鬼』と呼ばれる者にとても酷似していた。
魔王に語りかけた人物もまた、人間とは全く違う、その横に並ぶ魔王の従者達も。彼らは魔王が召喚サモンした悪魔達だ、右から《怠惰》《強欲》《暴食》《嫉妬》《憤怒》《色欲》《傲慢》と別れており、人間のそれぞれ日常的に表す感情でこの悪魔達はその名がついた大罪をそれぞれ背負っている。

「どれ、見てみるか。」

大袈裟にマントを翻らせ、長テーブルに用意された水晶を覗き込む、するとその水晶に人間の武装した集団を見た。
これらは全て、今起こっている事を映像にしてこの水晶に浮かび上がらせているだけだ。
人間とエルフが全面戦争をするという事なので少し覗くことにしたのだ。

「それにしても人種は本当に無駄なことが好きなようだな。」

水晶を覗き込みながら言うと並んでいた従者の一人が表情を動かしたのがわかった。

「どうした?なにかあったか?」

「はい、なにやら、眷属が高速でこちらに接近する人影を捉えたようです。」
「ほう、人か…これはまた珍しいな。」

人が来るなど何ヶ月ぶりだろうか、確か前回来た冒険者は従者に一撃で骨も残らず消されていた。
今回はもっと強い奴なのか…
魔王はハッキリ言うと戦闘狂であった、これは従者達も重々承知で、侵入者や魔王という地位を獲得するため、少し知能のある魔物が挑戦しに来た事が度々あり、その度に魔王が相手をしようとしたが、従者達にそれでは我々の存在意義がないと毎回獲物をとられてしまうので侵入者、特に強そうな奴にはとても興味があった。

「魔王様、人間と思われる者が一人、毒の沼に入りました。」

「そうか、強そうか?」
「いえ、装備は初級冒険者のグローブと安物のヘルムです。」

この発言には少々がっかりしたが、なにか違和感もある。
何故初期装備の冒険者と思われるそいつはこの生存帰還率0パーセントの魔王の元へ来たのか。
しかし、魔王が求めているものではないだろう。
並んでいた従者の一人が魔王に言い放つ。

「俺が掃除してきましょう。」
「あぁ、良いぞ。くれてやる、暴食。」

暴食と呼ばれた悪魔は山のように盛り上がった筋肉を持ち、身長もなかなかありまさに大がつく男だった。
水晶を眺めている魔王に一礼すると暴食はその部屋を後にした。そして、侵入者を殺害するカウントが始まった。

◆◇◆

「お待たせしました。皆さん」
「ゼフノ殿、それですか?」
「ええ、この水晶の中に封じておりますので、今出します。」

ゼフノは手に持っていた水晶を自分の頭より少し上にあげ、もう片方の手に持った透き通るような透明色の長めの杖を水晶にかざしながら呼び出すための言葉を口にする。

「出でよ、魔の者に仕えし使い魔よ、そして我のためにその力を振るえ。」

水晶が弾け飛ぶと、刹那周りに雷撃がほとばしり、数人の騎士達に直撃しながら電流をそのまま鳥の形にしたモンスターが現れた。
キエェェェェェエエエ!!という鳴き声が草原に谺響する。

「おお!これがかつての邪神に仕えていたという使い魔か!」
「しかし、これを一体どうするのです?結界は攻撃では破壊できないのでしょう?」

ゼフノは不敵な笑みを浮かべるとこう述べた。

「ええ、ですが結界というのは魔力がそのまま具現化し、魔力を剥き出しにしているも同然です。なのでその魔力を吸ってしまえば再生することなく幕は破られるでしょう。幸い、この使い魔にスキルとして相手の魔力を吸うというものがありますので。」
「おお!素晴らしいぞ!ゼフノ殿!」
「さあ、蹂躙を始めますぞ。」

◆◇◆

ドタバタと魔王のもとに忙しい足音が聞こえてきた。
数秒後、案の定自分の配下の魔物が部屋に入ってきた。

「お忙しい中申し訳ありません!至急お耳に入れたいことが!!」
「なんだ?」
「暴食様の事で──」
「侵入者を逃がしてしまったとかか?」
「いえ、その…」
「なんだ、言ってみろ。」

配下がなんと言おうと別に暴食を責める気は全くなかった、彼ならば失敗した穴埋めくらい自分で出来るからだと判断していたからだ。
しかし、配下の口から出た言葉は魔王の期待を大きく裏切る。

「暴食様が──殺されました。」

この一言の理由が魔王の脳に届くまでかなりの時間が掛かった。一瞬よりも長く、その配下の言うことは信じられなかった。そして、それは後ろに控えていた従者達も同じ。やがて配下の言葉が谺響して魔王の頭に戻ってきた。

「なに?!暴食が殺された?!!それは事実か!!」

まさか、自分を騙しているのかという程の衝撃だった。

「はい、確かです…」

玉座に座っている自分の身体が身震いしたのがわかった。恐怖ではない、緊張でもない、わくわくした事による武者震い。何年ぶりかの強者、明らかに胸が高鳴っていた。

「その者は今どこにいる?」
「分かりかねます、暴食様の戦闘後城の中を徘徊している模様です。」
「撤退ではなく?」
「はい。」

苦戦した戦いのあとは必ず撤退して、万全の状態にしてからまた戻るというのが一般的だ。
という事は考えられるのは一つ。

「苦戦ではなかったのか…」

ますます、震えが止まらなくなってしまった。

「その者を早く見つけろ!位置を特定す──」

魔王が言い終わる前に言伝を聞く配下が死んだ、理由は簡単。この広い広い玉座の間の大理石でできたとても厚い壁が紙を破り捨てるように破壊され、その下敷きになってしまったから。

「見つける必要はなかったか…」

埃が舞い上がり、破壊された壁の向こうがよく見えない、だがその破壊した本人はゆっくりとこちらに歩いてきた。

「魔王さーん。いらっしゃいますかー?」

そこに居たのは今まで来たどんな冒険者や魔物よりも軽装の男。顔はヘルムをしているので伺えない。

「お前か…侵入者というのは…」

どうやら本人はやっと魔王達がいることに気付いたらしく魔王達を見ると笑顔を向けてきた。

「お、あんたがひょっとして魔王?《鑑定》」

─────────────────
名前:

年齢:1204

種族:鬼人

属性:無

Lv:999/999

《ステータス》
HP:3,965,000
MP:2,644,000
ATK:1,569,080
DEF:1,254,100

《サブステータス》
敏捷:16,070
知力:8,596
幸運:3,560

《ユニークスキル》
・限界突破
・高速治癒
・物理耐性
・暴走

《装備スキル》
・体力補正
・暴走抑止

─────────────────

「(やっぱり、あいつら連れてこなくて正解だったな。)」

「いかにも。お前は?」
「俺はシンってもんだ。」
「冒険者か?」
「いや、違う。」
「冒険者ではないのか?では一体…」
「ここに来た理由はあんたとお友達になろうと思ってね。」
「何?」

「一緒に世界征服しないか?」

「ふん、貴様の素性も実力もまだ分からないでか?」

魔王がパチンと指を鳴らす、すると後ろに控えていた六人の従者が全員消え、目の前に迫ると、
まず二人が真の顔面目掛けて左右から拳を繰り出すとそれを両手で受け止め、手を持ったまま引っ張る、力に逆らえない悪魔二名はお互いに協力な勢いでぶつかると風船を割ったように身体が破裂した。
次は右上から飛び蹴りをしようとするも、足首を捕まれてそのまま下に叩き落とされ、床にベチャッと液体なった、その光景はトマトを叩き落とされた時に似ていた。
あとの3人は真正面から殴るなり蹴るなりをしようとするが当たる前に全員一発ずつくらうと身体を弾き飛ばして原型を留めなくなった。

「十分か?」
「くくくく、凄い、凄いぞ!まだ人の世にこの様な化物が潜んでいたとは!」
「さあ、返事は?こっちも急いでるんでな。」
「無理だな」
「理由を聞いても?」

「私はお前と闘いたいからだ!!」

「ちっ、ただの戦闘狂かよ。」

次の瞬間二人の姿は──消えた。
正確に言うなら、常人では見切れることの出来ないスピードでの激しい攻防が繰り広げられる。
二人の戦いは城の中だけに収まらず遂に城の外に飛びだし、あちらこちらへ飛び回っている。
下からは魔物達が二人の戦闘に巻き込まれ、何が起きたか理解できないまま散り散りになっていく。その配下達の姿を見た魔王は、一度動きを止めた。

「場所を変えたいのだが良いか?」
「好きにしろ。」

魔王は右手を前へ出すと先程まで玉座の間で見ていた水晶が出現する。

「この水晶はマジックアイテムでな、空間を飛び越えて場所を見る事ができ、その場所へ行くことも出来る。」

突然水晶から、眩い光が発生し消えると同時に背景が変わった。
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