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ノックは壁をぶち破る
6-4 五人目従者
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何故だ、何故俺の目の前の男は攻撃をしてこない。
先程からそればかり考えてしまう、自分と同等の力がありながら攻撃は一切してこない、こちらの攻撃を全て流されている。
しかし、ここまで本気を出せたのは何年ぶりだっただろうか。
久しぶりに感じたこの感覚、忘れていたこの高揚感。
相手は今はサンドバッグと同じだが、それでも自分の攻撃を受けて一撃で死なない相手は初めてだ。
「楽しい、楽しいな!」
同意を求めるように言ったが、ちゃんと向こうも楽しめているのだろうかと魔王は真の表情を見ながら問う。
「ああ、そうだな。」
と、答えた次の瞬間、二人の動きが止まった。
蒼白い閃光が二人の間に打ち込まれたからだ、どうやら雷のようだったらしいが二人には効果があるようには見えない。
突然の邪魔に魔王は少々苛立ちを覚えた。
周りをみるといつの間にか武装した人間に囲まれ、二人は無数の槍を向けられている。
「動くな!魔王!そこの者もだ!」
槍を構えた一人が二人に警告を発する。
「良くやりました、皆さん。」
後ろからローブを羽織った男が出てきた。その男は魔王と真を交互に見ると兵士達に労いの言葉を掛ける。
そして、今度は馬に乗った男が二人、真達の前に来た。
「我々は、この地に住むエルフ国との戦のために結成された連合軍である。お前達の身柄を拘束する、抵抗すれば命の保証はしない。」
それを聞いた二人は互いに顔を見て薄く笑った。
「だと、どうする?魔王?」
「本当に人間というのは無知な生き物で呆れる。」
それを聞いて二人の後ろにいた男が声を上げた。
「なんだと!貴様ら!自分の置かれた状況が分からないのか?!」
し二人の目の前の馬に乗った男は返答が返ってこないと分かると次に知りたかった事を問う。
「魔王と先程まで戦っていた貴様、何者だ。」
突然指を指された真は迷った。本名を羽織った口にしたら王国の知り合いに生きているとバレてしまうと思ったからだ。
「えと…」
「貴様は魔王とどんな関係なのだ!」
「(魔王…と?あ、そうだ。俺もあだ名を言えばいいのか。)」
魔王というのは本名じゃないだろうと隣の鬼を見て思った真は咄嗟に頭に浮かんだあだ名を口にした。
「俺は覇王だ!」
「覇王…だと?」
言ったのは自分だがなんとも言えない恥ずかしさが後から真を襲う。
「貴様は魔女協会と何か関係があるのか?」
「魔女協会?聞いたことのない集団だな。」
「では、魔女協会とはなんでもないのか…」
真に質問していた男は周りの兵士達と顔を見合わせる。
と、隣の男が突然声を上げた。
「そんな事はどうでも良いのだ!魔王よ、私に従え!」
突き出された杖は透明の花がついているような先端だった、やがてその花は光り始め、やがて周りの兵士を包み込むまでに膨れ上がった。やがて、光は一箇所に集中していく、照準は言うまでもなく魔王だ。
「フハハハハ!やった!やったぞ!遂に魔王を──」
ゼフノは言い終わる前に絶句した。魔王に光が全て集中する前に魔王の前に出てきた影があったからだ。
そして、光はその影の中へ吸い込まれる様に消えた。
「覇王?!」
前に出てきたのは真だった、魔王を庇うように前に出てきたので魔王本人はとても驚いている。
真の両手は力なく垂れ下がった。
「どういう事だ、魔王と敵対していたんじゃないのか!その覇王という奴は!」
一度は驚いて黙ったゼフノだったが今は焦っているなどの様子は見られない。
「魔王ではないが、この覇王という男も魔王と互角に戦う能力を有した者だ、魔女協会の奴らにも勝てるだろう。残りは魔王か…覇王よ、魔王を取り押さえろ!」
しかし、目の前の覇王は動く気配はない。
「どうした覇王!さっさと魔王をぉぉぉおお?!」
何があったのか、周りからその様子を見ていた兵士達には分からなかった。一瞬、覇王の姿が消えたと思った瞬間ゼフノの喉元を掴んで軽々と持ち上げた。
「何しようとしたのか分からないが、勝負の邪魔したうえに命令とは、礼儀を知らない奴だな。」
「な、何故精神支配が効いていないぃ?!」
「なんだこのガラスの棒は?」
ピンと真が杖を人差し指で軽く弾くと瞬時に杖にヒビが入り、ゼフノの手の中で砕け散った。
ガシャンという音のあと割れた杖はなんとも幻想的に散って──
「あぁぁぁぁぁぁあああ!!!《青海の杖》ぇぇぇぇええ!!」
「あ、ごめん。壊すつもりは…」
「魔術師協会の秘宝がぁぁぁぁぁあああ!!」
そして、その重大さがやっと理解できた馬に乗った男はすぐに兵士達に命令を出した。
「作戦は失敗だ!!撤退だ!直ちに撤退せよ!!」
そこからの人間達の動きはとても早く、来た道を我先にと帰ろうとし必死な顔をしてあっという間に軍は消えてった。
ローブを着た男は最後まで砕け散った杖の破片を泣きそうな顔で拾っていたがやがて騎士の一人に抱き抱えられて連れていかれた。
そして、その場には魔王と真だけが残った。
「どうする?邪魔が入ったけど続けるか?」
「やめだ、興醒めしてしまった。それにお前に借りを作ってしまったからな。」
「え?あぁ、あれか。自分でもよく分かんないけど飛び出してたんだよな。」
「ふっ…お前の提案、少し考えさせて貰おう。」
「本当か?!」
「ああ。お前といれば飽きない気がしてきた。」
「そうか、いい返事を待ってる。」
魔王はどこから出したのか、ここに転移した時に使った水晶を取り出すと姿を消した。
そして、すぐ後ろから気配を感じたので見てみると紫のローブを着た人物がこちらに走ってくるのがわかった。
最初は誰だかわからなかったが、仮面を取ってその姿を見せた。
「お、アンコウか!」
「シン様!随分お帰りが早かったのですね!」
「んー?あぁ、まあな」
「魔王はどうでしたか?」
「強かったよ、お前達より。やっぱりお前達を連れてかなくて正解だった。」
「では、和解はできなかったという事ですか?」
「いや、無事和解はできた…と思う。」
「そうでしたか!」
「ところであいつらは…」
「ああ、あの三人でしたら、あそこに。」
アンコウの指差す方向にはアンコウと同じ紫のローブを羽織った三人がいた。そして、真の顔を見ると機嫌が良さそうに手を振ってこちらに向かってくる。
真を目を窄めてその三人の真ん中、青髪のおっとりした顔の少女の引きずっている物を見た。
鳥だ、それもめちゃくちゃでかい。
鳥は動く気配はなく、死んでいるのではと思うほど大人しい。
「おい、なんだそれはマイ。」
「えっと、これはさっきそこで拾って…」
「捨てなさい。」
「えぇ~」
「すいません、シン様。私もさっきからそう言ってるんですけど。」
青髪の少女と鎖で繋がれた黒髪の美女が深々と頭を下げた。
「マイ、トモエが正しいぞ。鳥はな、鳥インフルエンザっていう病気を持ってるかもしれないんだ。」
「びょ、病気ですか?」
「でもでもシン様、それ私達と同じ前の邪神の使い魔みたいですよ?」
「これがか?ちゃんと使えるのか?」
「大分衰弱してるみたいです。どうしますか?」
「うーん。なんか、病気持ってそうだし、鳥ってもっとちっちゃい方が可愛いじゃん。」
確かに…と共感するように四人とも上下に首を振っている。
と、次の瞬間今までピクリとも動かなかった巨大な鳥が真の足自分の足で掴んだ。
「た…すけ……」
周りの従者達は怪訝そうな顔をしたが、自分達は判決できないので主の表情を伺う。
「どうしますか?」
「…」
「邪魔でしたら、消しますが…」
「(こいつらは本当に旧友を助けるとかの気持ちが全くないんだな。)」
「シン様?」
「確かに、瀕死の鳥が俺に助けを求めて触れるとは、不愉快、不衛生極まりない。」
「でしたら…」
「まあ、待て。──鳥、なんでお前はそんなに弱っている?」
しばらく静寂が流れたがやがて枯れるような声で真の耳に入った。
「………………」
しかし、声量が小さすぎて何を言っているかはわからなかった。
それを察したキコが通訳をする。
「途切れ途切れですが、聞き取れました。どうやら、マイが張ったバリアの魔力を取り込み過ぎて身体が内側から壊れ始めているようですね。」
「それは、エルフの地に人間を入れまいとマイが張ったものか?」
「はい、そうです。」
「ということはこいつは人間に加担していたのか?」
「していました。」
「何故、人間に加担した鳥。」
「…………」
「なんと?」
「人間に協力したくてしていた訳では無いと申しております。恐らく精神支配の魔法かと。」
「あの、杖か…」
鳥は最早限界になったらしく、荒かった呼吸は聞こえなくなり、真を掴んでいた足も離れていた。
「マイ、頼んだ。」
「よ、宜しいのですか?」
「あぁ。」
もともと見殺しにするつもりはなかった。
真に言われたマイは鳥に近づくとユニークスキル《癒しのオーラ》で鳥の傷を癒していく。
「《鑑定》」
─────────────────
名前:雷鳥
年齢:510
種族:悪魔
属性:精霊
Lv:999/999
《ステータス》
HP:1,114,090/1,114,090
MP:1,803,600/1,803,600
ATK:254,366
DEF:439,000
《サブステータス》
敏捷:6,080
知力:9,600
幸運:4,708
《ユニークスキル》
・幻惑のオーラ
・錬金
・接触感電
・人化
《装備スキル》
なし
─────────────────
「(おお!錬金!便利なもの持ってるじゃねーか!)」
「し、シン様。治療が終わりました。」
「おう、ご苦労。」
そしてタイミング良く、その鳥が目を開けた。
「気分はどうだ?」
「人…間…おのれ!人間がぁぁあ!──っごはぁ!」
雷鳥は血走った目で真を見ると、怒りのあまり放電しそうになるが、呆気なくアンコウに吹き飛ばされた。
「無礼者が!シン様、この様な者生かしておく意味はありません。」
「お前達人間じゃないだろう?!何故その人間に…」
「貴様の様なゴミでもご慈悲を与えてくださった方になんという口の聞き方…」
「私を助けたのはそこの青髪の娘だろう!!人間如きが恩を売った気になってるなよ!」
「──あの。」
マイが一歩前に出た、普段の彼女からは有り得ない行動に一同唖然としてしまった。
そして、上から見下す様な目で雷鳥を見据えた。
「私、シン様からのご命令だから聞いたんです。見ず知らずのあなたの言うことを聞いたと勘違いしてるようですが違いますから。あと、助けてもらっておいて私の主であり恩人であるシン様にその様な態度は不敬です、見ていて腹立たしいです。」
普段の彼女の綺麗なライトブルーの瞳はどこにも無く、その目は怒りも混じったものだった。
「あ、あと俺、人間じゃないらしいから。」
「なんだと?」
「二代目邪神らしい。」
「邪神?!二代目だと?!ばかな、有り得ない!」
「事実なんだから仕方がない。」
「ちなみに私達はかつて、初代邪神の使い魔、今はシン様の従者として働いているわ。」
「お前もその従者に引き込みたくてな、助けたんだが…どうやら、助ける必要はなかったらしいな。俺の従者になりたくないって目をしてるな…お前──死んどくか?」
「なっ?!まて!わかった!貴様の従者になってやろう!」
「不合格。」
「何故だ?!」
「当然でしょう、頭が高いのよあんた。」
「そういうものか…よし、従者にして下さい。」
「まあ、いいか」
先程からそればかり考えてしまう、自分と同等の力がありながら攻撃は一切してこない、こちらの攻撃を全て流されている。
しかし、ここまで本気を出せたのは何年ぶりだっただろうか。
久しぶりに感じたこの感覚、忘れていたこの高揚感。
相手は今はサンドバッグと同じだが、それでも自分の攻撃を受けて一撃で死なない相手は初めてだ。
「楽しい、楽しいな!」
同意を求めるように言ったが、ちゃんと向こうも楽しめているのだろうかと魔王は真の表情を見ながら問う。
「ああ、そうだな。」
と、答えた次の瞬間、二人の動きが止まった。
蒼白い閃光が二人の間に打ち込まれたからだ、どうやら雷のようだったらしいが二人には効果があるようには見えない。
突然の邪魔に魔王は少々苛立ちを覚えた。
周りをみるといつの間にか武装した人間に囲まれ、二人は無数の槍を向けられている。
「動くな!魔王!そこの者もだ!」
槍を構えた一人が二人に警告を発する。
「良くやりました、皆さん。」
後ろからローブを羽織った男が出てきた。その男は魔王と真を交互に見ると兵士達に労いの言葉を掛ける。
そして、今度は馬に乗った男が二人、真達の前に来た。
「我々は、この地に住むエルフ国との戦のために結成された連合軍である。お前達の身柄を拘束する、抵抗すれば命の保証はしない。」
それを聞いた二人は互いに顔を見て薄く笑った。
「だと、どうする?魔王?」
「本当に人間というのは無知な生き物で呆れる。」
それを聞いて二人の後ろにいた男が声を上げた。
「なんだと!貴様ら!自分の置かれた状況が分からないのか?!」
し二人の目の前の馬に乗った男は返答が返ってこないと分かると次に知りたかった事を問う。
「魔王と先程まで戦っていた貴様、何者だ。」
突然指を指された真は迷った。本名を羽織った口にしたら王国の知り合いに生きているとバレてしまうと思ったからだ。
「えと…」
「貴様は魔王とどんな関係なのだ!」
「(魔王…と?あ、そうだ。俺もあだ名を言えばいいのか。)」
魔王というのは本名じゃないだろうと隣の鬼を見て思った真は咄嗟に頭に浮かんだあだ名を口にした。
「俺は覇王だ!」
「覇王…だと?」
言ったのは自分だがなんとも言えない恥ずかしさが後から真を襲う。
「貴様は魔女協会と何か関係があるのか?」
「魔女協会?聞いたことのない集団だな。」
「では、魔女協会とはなんでもないのか…」
真に質問していた男は周りの兵士達と顔を見合わせる。
と、隣の男が突然声を上げた。
「そんな事はどうでも良いのだ!魔王よ、私に従え!」
突き出された杖は透明の花がついているような先端だった、やがてその花は光り始め、やがて周りの兵士を包み込むまでに膨れ上がった。やがて、光は一箇所に集中していく、照準は言うまでもなく魔王だ。
「フハハハハ!やった!やったぞ!遂に魔王を──」
ゼフノは言い終わる前に絶句した。魔王に光が全て集中する前に魔王の前に出てきた影があったからだ。
そして、光はその影の中へ吸い込まれる様に消えた。
「覇王?!」
前に出てきたのは真だった、魔王を庇うように前に出てきたので魔王本人はとても驚いている。
真の両手は力なく垂れ下がった。
「どういう事だ、魔王と敵対していたんじゃないのか!その覇王という奴は!」
一度は驚いて黙ったゼフノだったが今は焦っているなどの様子は見られない。
「魔王ではないが、この覇王という男も魔王と互角に戦う能力を有した者だ、魔女協会の奴らにも勝てるだろう。残りは魔王か…覇王よ、魔王を取り押さえろ!」
しかし、目の前の覇王は動く気配はない。
「どうした覇王!さっさと魔王をぉぉぉおお?!」
何があったのか、周りからその様子を見ていた兵士達には分からなかった。一瞬、覇王の姿が消えたと思った瞬間ゼフノの喉元を掴んで軽々と持ち上げた。
「何しようとしたのか分からないが、勝負の邪魔したうえに命令とは、礼儀を知らない奴だな。」
「な、何故精神支配が効いていないぃ?!」
「なんだこのガラスの棒は?」
ピンと真が杖を人差し指で軽く弾くと瞬時に杖にヒビが入り、ゼフノの手の中で砕け散った。
ガシャンという音のあと割れた杖はなんとも幻想的に散って──
「あぁぁぁぁぁぁあああ!!!《青海の杖》ぇぇぇぇええ!!」
「あ、ごめん。壊すつもりは…」
「魔術師協会の秘宝がぁぁぁぁぁあああ!!」
そして、その重大さがやっと理解できた馬に乗った男はすぐに兵士達に命令を出した。
「作戦は失敗だ!!撤退だ!直ちに撤退せよ!!」
そこからの人間達の動きはとても早く、来た道を我先にと帰ろうとし必死な顔をしてあっという間に軍は消えてった。
ローブを着た男は最後まで砕け散った杖の破片を泣きそうな顔で拾っていたがやがて騎士の一人に抱き抱えられて連れていかれた。
そして、その場には魔王と真だけが残った。
「どうする?邪魔が入ったけど続けるか?」
「やめだ、興醒めしてしまった。それにお前に借りを作ってしまったからな。」
「え?あぁ、あれか。自分でもよく分かんないけど飛び出してたんだよな。」
「ふっ…お前の提案、少し考えさせて貰おう。」
「本当か?!」
「ああ。お前といれば飽きない気がしてきた。」
「そうか、いい返事を待ってる。」
魔王はどこから出したのか、ここに転移した時に使った水晶を取り出すと姿を消した。
そして、すぐ後ろから気配を感じたので見てみると紫のローブを着た人物がこちらに走ってくるのがわかった。
最初は誰だかわからなかったが、仮面を取ってその姿を見せた。
「お、アンコウか!」
「シン様!随分お帰りが早かったのですね!」
「んー?あぁ、まあな」
「魔王はどうでしたか?」
「強かったよ、お前達より。やっぱりお前達を連れてかなくて正解だった。」
「では、和解はできなかったという事ですか?」
「いや、無事和解はできた…と思う。」
「そうでしたか!」
「ところであいつらは…」
「ああ、あの三人でしたら、あそこに。」
アンコウの指差す方向にはアンコウと同じ紫のローブを羽織った三人がいた。そして、真の顔を見ると機嫌が良さそうに手を振ってこちらに向かってくる。
真を目を窄めてその三人の真ん中、青髪のおっとりした顔の少女の引きずっている物を見た。
鳥だ、それもめちゃくちゃでかい。
鳥は動く気配はなく、死んでいるのではと思うほど大人しい。
「おい、なんだそれはマイ。」
「えっと、これはさっきそこで拾って…」
「捨てなさい。」
「えぇ~」
「すいません、シン様。私もさっきからそう言ってるんですけど。」
青髪の少女と鎖で繋がれた黒髪の美女が深々と頭を下げた。
「マイ、トモエが正しいぞ。鳥はな、鳥インフルエンザっていう病気を持ってるかもしれないんだ。」
「びょ、病気ですか?」
「でもでもシン様、それ私達と同じ前の邪神の使い魔みたいですよ?」
「これがか?ちゃんと使えるのか?」
「大分衰弱してるみたいです。どうしますか?」
「うーん。なんか、病気持ってそうだし、鳥ってもっとちっちゃい方が可愛いじゃん。」
確かに…と共感するように四人とも上下に首を振っている。
と、次の瞬間今までピクリとも動かなかった巨大な鳥が真の足自分の足で掴んだ。
「た…すけ……」
周りの従者達は怪訝そうな顔をしたが、自分達は判決できないので主の表情を伺う。
「どうしますか?」
「…」
「邪魔でしたら、消しますが…」
「(こいつらは本当に旧友を助けるとかの気持ちが全くないんだな。)」
「シン様?」
「確かに、瀕死の鳥が俺に助けを求めて触れるとは、不愉快、不衛生極まりない。」
「でしたら…」
「まあ、待て。──鳥、なんでお前はそんなに弱っている?」
しばらく静寂が流れたがやがて枯れるような声で真の耳に入った。
「………………」
しかし、声量が小さすぎて何を言っているかはわからなかった。
それを察したキコが通訳をする。
「途切れ途切れですが、聞き取れました。どうやら、マイが張ったバリアの魔力を取り込み過ぎて身体が内側から壊れ始めているようですね。」
「それは、エルフの地に人間を入れまいとマイが張ったものか?」
「はい、そうです。」
「ということはこいつは人間に加担していたのか?」
「していました。」
「何故、人間に加担した鳥。」
「…………」
「なんと?」
「人間に協力したくてしていた訳では無いと申しております。恐らく精神支配の魔法かと。」
「あの、杖か…」
鳥は最早限界になったらしく、荒かった呼吸は聞こえなくなり、真を掴んでいた足も離れていた。
「マイ、頼んだ。」
「よ、宜しいのですか?」
「あぁ。」
もともと見殺しにするつもりはなかった。
真に言われたマイは鳥に近づくとユニークスキル《癒しのオーラ》で鳥の傷を癒していく。
「《鑑定》」
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名前:雷鳥
年齢:510
種族:悪魔
属性:精霊
Lv:999/999
《ステータス》
HP:1,114,090/1,114,090
MP:1,803,600/1,803,600
ATK:254,366
DEF:439,000
《サブステータス》
敏捷:6,080
知力:9,600
幸運:4,708
《ユニークスキル》
・幻惑のオーラ
・錬金
・接触感電
・人化
《装備スキル》
なし
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「(おお!錬金!便利なもの持ってるじゃねーか!)」
「し、シン様。治療が終わりました。」
「おう、ご苦労。」
そしてタイミング良く、その鳥が目を開けた。
「気分はどうだ?」
「人…間…おのれ!人間がぁぁあ!──っごはぁ!」
雷鳥は血走った目で真を見ると、怒りのあまり放電しそうになるが、呆気なくアンコウに吹き飛ばされた。
「無礼者が!シン様、この様な者生かしておく意味はありません。」
「お前達人間じゃないだろう?!何故その人間に…」
「貴様の様なゴミでもご慈悲を与えてくださった方になんという口の聞き方…」
「私を助けたのはそこの青髪の娘だろう!!人間如きが恩を売った気になってるなよ!」
「──あの。」
マイが一歩前に出た、普段の彼女からは有り得ない行動に一同唖然としてしまった。
そして、上から見下す様な目で雷鳥を見据えた。
「私、シン様からのご命令だから聞いたんです。見ず知らずのあなたの言うことを聞いたと勘違いしてるようですが違いますから。あと、助けてもらっておいて私の主であり恩人であるシン様にその様な態度は不敬です、見ていて腹立たしいです。」
普段の彼女の綺麗なライトブルーの瞳はどこにも無く、その目は怒りも混じったものだった。
「あ、あと俺、人間じゃないらしいから。」
「なんだと?」
「二代目邪神らしい。」
「邪神?!二代目だと?!ばかな、有り得ない!」
「事実なんだから仕方がない。」
「ちなみに私達はかつて、初代邪神の使い魔、今はシン様の従者として働いているわ。」
「お前もその従者に引き込みたくてな、助けたんだが…どうやら、助ける必要はなかったらしいな。俺の従者になりたくないって目をしてるな…お前──死んどくか?」
「なっ?!まて!わかった!貴様の従者になってやろう!」
「不合格。」
「何故だ?!」
「当然でしょう、頭が高いのよあんた。」
「そういうものか…よし、従者にして下さい。」
「まあ、いいか」
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