異世界の救世主になろう!~主役はやっぱりヒーローだ~

☆ウパ☆

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ノックは壁をぶち破る

6-5 動き出す

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「じゃ、邪神様、なんですかこの巨大な鳥は…」

エルフ王は門から入ってきた真の後ろに続く巨大な鳥に目を丸くした。

「あぁ、安心しろ、俺の従者だ。」
「さ、左様ですか…」
「主従の契約はしたんだが…おい、鳥、人化しろ。」

「偉そうに命令する──ガフっ!し、します…しますから…」

アンコウやキコ達が雷鳥に蹴りを一撃入れ、なんとか了承させる。
雷鳥の身体は全身を雷が流れ発光し、輝きが消えると人型になった。
容姿は十代後半といったぐらいの女性、紫の目立つ髪色にショートで、格好はメイド服を着用していた。

「お前達の前の主人に会いたくなってきたよ…」

「ふん、お前のような偽邪神とは違い──痛い痛い!ごめんなさい!」

キコが無言で胸ぐらを掴んで雷鳥の首がもげそうなほど揺すっている。

「そうだ、名前決めないと。」
「シン様!この様な奴に名前など必要ないかと!」
「まあまあ、一応は従者なんだし。」
「確かに了承したが、あれはほとんど脅迫だっただろうが!」
「じゃあ、どうしたら素直に俺の従者やるんだ?」

「今ここで勝負だ!私とお前の一対一のな!」

「勝てば俺のために働くのか…」
「いや、ギリギリの勝利では納得せんぞ!私に余裕で勝てるほどの力があれば貴様を主と認めてやる!」
「本当に?」
「使い魔とはそういうものだ、自分より弱い奴に付きたいと思うものはいない。代わりにこういった事には礼儀正しいんだ!」

疑うような目を雷鳥に向け、隣のアンコウと顔を見合わせた。

「確かに雷鳥の言ったことは正しいです。契約していない使い魔は戦った相手に完膚なきまでに叩きのめされると、その相手に魅力を感じるという、ある意味呪われた性質を持ってます。そして、より強い力でねじ伏せればそれ相応の忠義を尽くします。」
「魅力を感じるって…性別関係なくか?」
「関係なくです。」
「ちょっと初代邪神の気持ちがわかった気がする…」

「さあ!どうする!偽邪神!」

「別にやっても良いけど…」
「では決まりだな!もう、取り消しは出来ないからな?!それと、私が勝ったら私だけではなくそこの者達との契約も切ってもらうからな!」

「阿呆が…」
「一度痛い目を見せてもらうがいいです。」
「折角治したのに…」
「ご愁傷さま…」

真の強さを良く知る従者達は愚かな雷鳥に哀れみを見せた。
そんな事は露知らず、雷鳥は人型から元の姿へ戻ると身体に纏った電気をバチバチと鳴らせて真に突っ込んでいく。

「行くぞ!偽邪神!」
「《1000倍》」

次の瞬間、全身を突き刺す強者の気配を感じ、姿を消した真を探そうとするが、ゴスンという音と脳天に鈍器で殴られた痛みと共に視界が暗くなった。

「千倍チョップ」

雷鳥は地面に叩きつけられるとミシリという音が身体から鳴り、土に亀裂が走った。
あまりの痛みに悶絶しそうになるが、なんとか堪える。しかし、動ける事も呼吸すらも出来ないので悶絶した方がまだ楽だった。

「一体なにをぉ…」
チョップだ。」
「チョップ…?」

チョップというのは手刀だろうと雷鳥も分かってはいたが、物理的攻撃それもたった一撃でここまでダメージを与えられるとは思っていなかったのでとても信じられなかった。
さらに、驚いたのは接触したのにも関わらず雷鳥のユニークスキル接触感電の爪痕を感じられなかった事だ。

「おい、これで良いのか?まだやるなら付き合うけど…」

指をパキパキと鳴らして近づいてくる様は雷鳥に恐怖しか感じさせなかった。

「いえ!もう結構です!充分分かりましたから!!」

クラクラする頭を起こしながら必死に訴える。
それを見た真は残念そうな顔をすると「そう…」と返事した。

「(まさか、これほどとは…なんという強さ、彼女達がに従うのも納得がいく。)」

「ところで戦ってる間に思いついたんだけど、お前の名前はアズマでどう?」

「(なっ?!戦っている間…?!私との戦闘は集中しなくても余裕だったという事か!)」

無反応の雷鳥を前に困った真は隣の従者達に確認をとる。

「え、アズマっていう名前駄目だった?雷の読み方を変えて見たんだけど…男っぽいか?」
「いえ、羨ましい名前でございます。」
「あの女、無視とはいい度胸です。」
「全くね、おい雷鳥!」

黒髪の美女に呼ばれた雷鳥はハッと我に返った。

「お前の名前はアズマにしようと思うんだけどどう思う?」
「有り難く頂戴致します!」
「あ、そう…」

突然の態度の変わり様に少々驚いた。

◆◇◆

タビルスの足取りは重かった。
この後の自分の罰が嫌な程わかる。
タビルスは平民出身であの戦争に参加して指揮官の任についていたのはタビルスの他にも大勢いるがその者達は全員貴族の出だった。ということは今回の近辺国家の兵を動かしてまで行ったエルフ国との戦で全体の三分の二を失って敗走した責任は首をはねても痛くないタビルスに全て押し付けられるだろう。
やがて、五メートル程の大きさの扉の目の前まで来ると、覚悟を決め扉をノックする。入室の許可が出ると扉を押す。
扉は簡単に開き、中に幾人かの人物がいた。

「帝国戦士長タビルス・マルデルティです。」

深々と頭を下げたタビルスはこのまま頭を下げていたいと思ってしまう。

「タビルスくん、今日呼び出した理由は分かるね?」
「…はい、戦士長の任を解く──」

「残念だが、君には帝国騎士としての資格を剥奪させて貰い、解雇とする。」

「は?」
「聞こえなかったかね?君はもう戦士でも兵士でも騎士でもない、ただの平民なのだよ。」
「そんな…」
「君の荷物はまとめさせた、入ってきたまえ。」

口を開けたままのタビルスを放って扉の方を見つめて声を掛けた。
やがて扉の開く音がすると一人の男性が入ってきた、タビルスのよく知る人物だ。

「失礼します。タビルス戦士長のお荷物をお持ちしました。」
「リーデル…お前何を…」

「紹介しよう、彼が新しい戦士長だ。」

この目の前に立っている青髪の青年はタビルスの直属の部下として働いていたリーデルという副戦士長を務めていた男だった。

「戦士長…?」
「タビルス戦士長の後をしっかり務めます。安心してここを出ていかれて下さい。」

「そういう事だ、タビルスくん。」

◆◇◆

城を出たタビルスは一人、手提げの荷物を持って飲み屋に来ていた。

「くそっ!今まであいつら無能どものために働いてきたのは俺だろうが!」

何故自分がこんな目に…
グラスの中をのぞき込むと憤怒に表情を歪めた自分の顔が酒に写った。

「帝国騎士長のタビルス・マルデルティだな?」

不意に声をかけられた、すぐ後ろから声がしたのでかなり近い。いつの間に近づいて来たのか、元騎士長のタビルスに近づいて気付かれないとはこの話しかけてきた人物はよほどの手練と見受けられた。
しかし、全てを失ったタビルスはそれにも無反応。

「ちょっと来てもらおうか。」

腕をぐいっと引っ張られるとそのまま店の外に連れ出され、人気のない通りに連れてこられた。

「言っておくけど今は戦士長でもなんでもないぞ、ただの平民だ。」

タビルスの前にいるのは四人、全員みすぼらしい黄土色のローブを来ていた。
月明かりが暗かった通りを照らし、さらにその四人の薄気味悪さを強くさせた。
そして、一歩前に出た者が深々と被っていたフードを取ってその顔を見せた。

「──あ。」

タビルスは思わず声をあげた、フードの下から出てきたのが金髪のロングストレート美女だったから。
しかし、何故か片目に眼帯をしていた。

「私達は無双の狩猟者マテリアルハンターという元SSランク冒険者ギルド。」
「元?」
「今は近辺国家の主要メンバーの暗殺と暗黒龍ダークドラゴンの討伐を目標に活動している、いわば国家転覆を企んでいる犯罪ギルド。」
「そんな事俺に言っちまって良いのかよ?」

「大丈夫、あなたはこれから殺す。」

「なんだと…?」
「あなたは近辺国家の会議に出席している立場、つまり私達のターゲットにも入っている。」

そして、腰に手を伸ばし、月夜に照らされた美しい刀身をみせた。

「潔く──死んで。」

「全く、今日はなかなかどうして偉い目に合う日だぜ…」

◆◇◆

「ゼフノ様!ゼフノ様!」

魔術師協会の下っ端として働いている彼らは、自分達の上司が既に三日も部屋から出てこない事は異常だと判断し、図書室の入り口である扉を何度もノックしているのだが、一向に部屋から返事が来ない。

「おい、マズいんじゃないか?」
「お食事もロクにせず一体中で何をなさっているんだ…」
「無理矢理扉を開けるか?」
「しかし部屋に誰にも入れるなと仰せつかっている。」

図書室の外では揉め事が始まっている。
そんな所へ一人の男が通りかかった。
男は揉めている自分の部下を見てなにをしているのか理由を聞くことにした。

「こらこらお前達、いっだびっ──一体何をしているんだ?」

「「(あ、噛んだ。)」」

「レギオン副会長!実は──」

レギオンというこの男は魔術師協会の副会長で、ゼフノの古い友人でもあった。彼が魔術師協会を立ち上げたいと言った時もゼフノが始めて近辺国家の会議に参加した時も隣にいた、ゼフノの唯一無二で信頼できる男だった。
男は魔術師にしてはかなり難いがよく、見た目も戦士職と言われても違和感がない。

「なるほど、大体わかった。あとは俺に任せてお前達は仕事に戻れ。」

「「「はい」」」

部下達が戻っていくのを確認するとレギオンは扉にノックをし、返事を聞く前に中に入った。

「ゼフノ?入るぞ。」

図書室はなんとも埃っぽく、かび臭さがあった。本棚から出された様々な本が幾つも山積みになっている。
その山の一つがゴソゴソと動き出して中から良く見知った男が出てきた。

「なんだ、レギオンじゃないか。先程、外の者達には誰も入れるなと言っておいたのだが…」
「先程?あいつらの話だとお前もう三日もここから出てきてないって話だったが…」

「なんと!そんなに時間がかかってしまったか。」

「一体何をしてたんだ?」
「うん、少し調べ事をな。」
「お前が帰って来た時に話してた覇王って奴の事か?」

ゼフノは怪訝な表情を浮かべながら深く頷いた。

「そうなんだが…」
「どうかしたのか?」
「様々な神話や伝承記録に目を通したのだが出てくるものは邪神や魔王ならあるのだが《覇王》という存在らしき者はどれにも登場してこないのだ…」
「そうか──そういえばその件に続いてなんだが、お前に調べて欲しいと頼まれていた『魔女協会』って奴らの素性は分からなかった。」

「……気に入らんな。」

「…この二つは何か関わりがあると?」
「いや、だ」
「三つ?」

そう言うとゼフノは左手で口元を覆い隠すと斜め下をじっと見つめ始めた。
これは古くからの付き合いであるレギオンだからわかるのだが彼は何かを深く考えて見落としがないか思い返す時はいつもこうする。
やがて何かを思いついた様に顔を上げた。

「レギオン、頼まれてくれるか?」
「良いぜ?なにをする?」
「調べて欲しい事がある。『マ・ティ皇国』、それから『スミャジン・ティ法国』へ行ってくれ。」
「何をする気だ?」

「覇王、魔王、魔女協会に対抗する方法があるかもしれないぞ。」

◆◇◆

魔王城は侵入者など来なかったかの様に綺麗に元通りになっていた。一種で消されてしまった魔王の従者たちも復活していた。しかし、この七つの大罪はあくまで魔王が勝手につくったものだ、七つの大罪は魔界という所に数多の悪魔を使役している者達で、魔王も実際に魔界に行った経験はない。
従者達が復活してから三日、それからの魔王はとても楽しそうにしている。
今、自分達の前を歩いているのを見ても近くに誰もいなくなったら踊りだしそうな勢いだ。
恐る恐る従者の一人が聞いてみた。

「魔王様、先日から気になっていたのですが、何か良い事でもありましたか?」
「おう、お前達には言ってなかったか!」
「何をでしょう?」
「我ら魔王軍は覇王軍と協力し、世界征服を開始する事に決めたのだ!」
「覇王軍…ですか?」
「この前お前達を瞬殺した侵入者だ。」
「あの者ですか!」
「気に入らないか?」
「いえ!滅相も御座いません。魔王様の言葉は我らにとっては絶対です。ですが、魔王様が他の者と組むとは思っておりませんでした。」
「そうか?ハッハッハ!ただ、勘違いしてはいけないのは協力体制を取るつもりだが優位はあちらという事だ。」

魔王のこの発言には従者達も声を上げざるを得なかった。

「では、魔王様が傘下に入ったという事ですか?!」
「あぁ、奴は我すら敵わないと理解させられた。15英雄の鍵を指で弾いて壊したのだからな。」

「鍵をですか?!」

「ああ、確か鍵は《神話級ミステリ》の魔法でも破壊出来ないという話だったが…世界中の伝承が大きく覆るな!ハッハッハ!」
「ならば、その者危険なのでは?!」

《怠惰》の罪を背負った悪魔が一際大きな声で魔王に問いかけた。
魔王は少し肩を落として薄く笑うと真剣な表情を従者達に向けた。

「《怠惰》よ…お前はこの魔王軍に最悪をもたらしたいのか、それとも世界に災厄をもたらしたいのか…」

「…」

「要は、絶対に襲ってくる猛獣をこちらに向かせるのか、関係ない他の檻の中の餌に食いつかせるのかという問題だ。折角、こちらには好みではなさそうな態度を見せているのだからな…いや──」

魔王は従者達から視線を少し上に上げた。

「──好みの物は後で食べる主義か?」
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