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しおりを挟む紫苑の第二性は、ベータだ。
そして来夢は、アルファ。
そのことで、紫苑は兄に対して、強いコンプレックスを持っていた。
決して紫苑は、来夢に劣っているわけではない。
兄に負けたくない一心で、幼い頃から努力していた。
その甲斐あって、学力も身体能力も学年トップクラスだ。
ファッショナブルな来夢に対抗して、ルックスにも気を配っている。
ヘアスタイルは、流行のスパイキーショート。
眉はきちんと整えるし、ムダ毛の処理も怠らない。
目鼻立ちは、自分でもまあまあイケてる方だと、密かに思っている。
しかし紫苑は、それで満足してはいなかった。
兄の持つ軽やかさ、人を引き付ける魅力。
そういった天性のものは、どんなにがんばっても身に着かない。
現に、友人の一人として紫苑が家に招いた波留は、あっという間に来夢の虜になってしまった。
波留の第二性がオメガだと知ると、来夢は彼を一気に口説いたのだ。
『君、可愛いね。名前、何て言うの?』
『オメガで北陽高校に入学できるなんて、すごいじゃん』
『俺は、アルファなんだけど。ね、運命のつがいって、信じる?』
紫苑には逆立ちしても言えないような、浮いた言葉を次々と繰り出した来夢。
挙句、その日のうちに彼は、波留を射止めてしまった。
紫苑は、それを見ていることしかできなかった。
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