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そんなことを思い出し、紫苑はしばらく由樹の体内にとどまった。
手を握り、髪を梳き、彼の震えが治まるまで待った。
「……ありがと。もう、いいよ」
由樹のお許しを得て、紫苑はようやく解放された。
使用済みのスキンを始末していると、背中に由樹の声がした。
「何で、スキン着けるの? 僕、ピル飲んでるから、中出ししても大丈夫だよ?」
「ん、何となく」
万が一、ってことがあったら、一番困るのは由樹だろ。
そんな風に、逃げた。
それでも由樹は紫苑の返事を、思いやりと取ってくれたらしい。
嬉しそうに、背中からゆっくりと抱きついてきた。
「紫苑、優しいね」
「全然」
由樹を抱きながら、波留のことを考えていたのだ。
俺は優しくなんか、ない。
「今頃、来夢は何してるんだろうね」
「さあな」
解ってる。
波留と一緒に、俺と同じことをしてるに違いない。
物憂げな気分は、紫苑の胸から離れなかった。
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