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しおりを挟む「加賀さんの手は、大きくて逞しいですね」
「うん。おかげさまで、体格には恵まれた」
それはそうと。
巴は、かねてから伝えたかったことを口にした。
「よかったら、私のことは名前で呼んでくれないか?」
「え、でも。馴れ馴れしくないですか?」
「その方が、嬉しい。君は私の、推しだからな」
「そういうものですか?」
「そういうものだ」
じゃあ、と蓮は迷いながらも、巴に向かってささやいた。
「巴さん」
「……ッ。感激だ!」
途端に、巴は慌ててばたばたとスーツのジャケットを手にし、バッグを抱えた。
「で、では。私はこれで」
「え! もう、帰っちゃうんですか!?」
「今夜は楽しかったよ。ありがとう!」
あっという間に消えてしまった、巴だ。
だが、残された蓮はにっこり笑った。
「きっと、照れちゃったんだな。巴さん」
巴さん。
何だか、素敵な響き。
口にすると、ドキドキしてくる!
「こんな気持ちも、初めて」
巴さんは、僕にたくさんの初めてを与えてくれる。
まだ彼のぬくもりの残る手を、蓮はそっと胸に抱いた。
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