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しおりを挟む聖の家庭は、裕福だった。
弁護士の父に、医師の母。
生活に困ることなく育った聖だったが、彼に対する両親の愛情は、希薄だった。
優秀だが第二性がベータの父母は、アルファとして生まれた聖の弟を、溺愛しているのだ。
聖は高校入学と同時にマンションを買い与えられて、一人暮らしを余儀なくされてしまった。
アルファの弟が、オメガの聖と一緒にいると、悪い影響を受けるかもしれない。
両親は、そんな非科学的な考えに囚われ、まるで厄介払いでもするかのように、聖を外に出してしまったのだ。
「それで、こんな高級マンションに一人で住んでるのか」
「高級かどうかはわかりませんが、一人暮らしです」
駿佑は、バスを使わせてもらうと、聖に部屋着を渡された。
「小さかったら、ごめんなさい」
それはLサイズのスウェットで、聖のものにしては大きすぎる。
「いつか、父がここに来てくれるかなぁ、なんて思ってて。それで」
照れたように微笑む聖が、痛々しい。
飢えている。
この子は、愛情に飢えている
部屋着は袖と裾がやや短かったが、着られないことはない。
駿佑は礼を言うと、聖に連れられ寝室へ向かった。
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