この恋は運命

大波小波

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 周囲に比べて明らかに小柄で幼い麻衣に、響也は少し驚いたように目を見開いた。

 しかし、それは一瞬のこと。

 すぐにあの、穏やかな微笑みを、麻衣にも向けた。

 手にしたカクテルグラスをわずかに掲げて、響也は麻衣に声を掛けて来た。

「こんばんは、早乙女 麻衣くん。楽しんでいますか?」

「僕を、ご存じなんですか?」

「今夜のお客様方は、全て把握していますよ」

 そう。

 このパーティーは、社交界の出会いの場。

 若い人間たちを結ぶ、マッチング・パーティー。

 だがそれは、表向きの名目だ。

 響也は、自分のパートナーにふさわしい者を求めて、宴を開いた。

 招待状は、あらかじめ目ぼしい女性に照準を絞って、送った。

 まあ、女性ばかり招待しては、あまりにも見え見えなので、同程度の数の男性も、招待した。

 ところがそこへ、ぜひ参加させて欲しい、と願い出て来た人間がいた。

 麻衣の父だ。

『息子の第二性は、オメガです。充分、お世継ぎを授かることはできるかと!』

 早乙女家の財政がひっ迫していることは、響也の耳にも入っている。

(飛鳥家の財産目当てに、我が子を嫁がせようというのか?)

 面白い。

 つまらない人間ならば、少しからかってやるか。

 そんな軽い気持ちで、響也は早乙女家にも追加で招待状を送った。

 このような顛末があっただけに、麻衣の存在は響也にとって、強く記憶に残っていたのだ。

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