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しおりを挟む麻衣は、素早くしゃがむと、足元の砂や小石を手のひらに掴んだ。
立ち上がりざま、空いた片手で男の足を持ち上げて、思いきり前へ引く。
「う、うあッ!」
男は見事に後ろに倒れ、後頭部を強く打った。
「このガキ!」
仲間がやられて逆上した男が、腕を伸ばしてくる。
今度は、手にした砂を、その男の顔面に叩きつけた。
「ぎゃッ! 目、目がぁあ!」
これで、二人。
考えている暇は、無い。
富豪の家に生まれ育った麻衣は、多少の護身術も身につけてはいる。
しかし、襲われて一番効果的な策は、逃げることなのだ。
残る男は、三人。
とても戦って勝てる状況では、ない。
そこに、巾着袋の中の携帯が鳴った。
(響也さん!?)
麻衣は、とっさに電話を取り出し、すぐに通話を繋いだ。
「響也さん! 僕、襲われてます! 場所は……!」
麻衣の大声に、男たちは怯んだ。
この分だと、すぐに助けがやって来る。
「ちッ!」
舌打ちし、ダメージを受けた仲間を助けながら、その場を去って行った。
静まり返った空き地に、麻衣は脱力して座り込んでしまった。
「良かった……。助かった……」
端末からは、しきりに麻衣の名を呼ぶ響也の声が聞こえていたが、彼はしばらく動けなかった。
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