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しおりを挟む「どうしたんだ? 私は、いつでも麻衣の傍にいる」
安心して、とでも言うように、響也は麻衣の肩を撫でた。
しかし、麻衣は首を横に振る。
違う、と声を振り絞る。
「本当に、困ったり。恐怖に駆られたりした後に。それが全て片付いた時には、響也さんに、傍にいて欲しい」
「麻衣」
「僕は、弱い人間です。力のない人間です」
だから、と麻衣は響也の手を強く握った。
白馬の騎士のように、助けてくれなくてもいいんです、と彼は言う。
「ただ、心がどうしようもなく挫けた時に、あなたに傍にいて欲しい。そっと、僕を温めて欲しいんです」
響也は、麻衣が握りしめている自分の手を、胸に当てた。
「今の私は、そんな麻衣の願いに、応えきれているかい?」
まるで小さな子どものように、何度もうなずく麻衣の手を、響也は両手で包み込んだ。
「今夜の君は、とても勇敢で。それでいて、クレバーだった」
私の力など借りなくても、きちんとトラブルを乗り越えたんだ。
「麻衣は、立派な一人の人間だよ。白馬の騎士の登場を震えて待つなど、君には似合わない」
「響也さん」
「戦い疲れたら、私のところへ帰ってきて欲しい。この胸は、君のためにいつでも空いているから」
「響也さん……!」
華やかな花火はすでに終わり、会場の人々もまばらになって来た。
しかし二人は、その場に残り、固く抱き合って動かなかった。
新しく生まれた絆を、抱きしめ合っていた。
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