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しおりを挟む伸びをしているポーズに、丸くなって寝ているポーズ。
前足を舐めているポーズに、振り向いているポーズに、匂いを嗅いでいるポーズ。
響也と麻衣は、いろんな表情のミドリを作り続けた。
「ああ、楽しいなぁ」
「すごく、楽しいですね」
何気ない会話だったが、響也はその尊さを噛みしめていた。
ゆっくりと流れる時間に身を任せて、ひたすら粘土遊びに興じる。
隣にいてくれるのは、最愛の人。
そんな些細なひとときが、この上もなく大切なものに感じられた。
これまで、飛鳥家の人間として。
アルファ男性として、大会社の社長として、社交界の星として、生きてきた。
しかし、麻衣の隣にいる時は、すべてのしがらみから解き放たれる。
ただ何でもない日常こそが、最高の幸せなのだと、知らされる。
窓から時々入ってくる、少し涼しくなった秋風に吹かれながら、響也はそう考えていた。
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