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しおりを挟むずらりと並んだ無数のミドリたちを前に、麻衣は大喜びだ。
「できた! こんなに、たくさん!」
ありがとうございます、と響也に向けるその笑顔は、無邪気そのものだ。
「これから乾燥させて、素焼きして。絵付けをして、釉薬がけして、本焼きして……」
「陶芸は、本当に時間がかかるなぁ」
「窯出しの時のワクワク感を教えてくれたのは、響也さんですよ?」
完成まで、長くて一ヶ月半、といったところか。
ふと、響也の顔に影が差した。
あまりに毎日が楽しくて。
平和で、愉快で、嬉しくて、素敵で。
つい、忘れていたことがある。
『では、一年経っても懐妊しなかったら。響也、麻衣くんとはお別れね』
『できません、とは言わせませんよ? これは、あなた自身のけじめです』
それは、母・凛子の厳しい言葉だった。
一か月半後には、麻衣と出会った頃になる。
一年経ってしまうのだ。
「どうかしたんですか、響也さん?」
麻衣が、のぞき込んでくる。
「あ、いや。何でもないよ」
頭をもたげてきた不安と焦燥を、響也は振り払った。
私には、麻衣がついていてくれる。
(決して、独りではないんだ)
そう心に刻んで、前を向いた。
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