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しおりを挟む「志乃くん」
「何?」
そこで不意をついて、章は彼に圧し掛かった。
「わぁ!」
「志乃くんは! そんなこと心配しなくってもいいよ!」
特大のビーズクッションの上で、章は志乃の脇腹をくすぐる。
「やめて、やめて! くすぐったいよぉ!」
「笑って、志乃くん。君には、笑顔が一番似合うんだから!」
泣いたり笑ったりと忙しい志乃は、ばたばたと暴れてもがいた。
もがく彼を捕まえようと、章も笑いながら挑みかかる。
やがて疲れて大人しくなった志乃を、章は優しく抱き寄せた。
泣き笑いの志乃の体をしっかりと抱きとめると、章は彼をなだめるように言った。
「それなら、こっそり警察に相談しておくよ。これで、いい?」
「うん……」
少し安心したのか、志乃は章の唇に、そっとキスをしてきた。
「章、さん。んぅ……」
「大好きだよ。志乃くん」
甘くささやいた後、章も応じて口づけた。
とろける前戯のようなキスを交わしながらも、章は考えを巡らせていた。
(裏で暴力団と繋がってる、か……)
もしそうだとしても、確証のない話では、警察も動いてはくれないだろう。
(さて。どうするかな)
何か、対策を。
極道を相手にするのなら、それなりの準備が必要だ。
「もう! 章さん、キスがお留守になってるよ!」
「ごめん、ごめん」
志乃に鼻をつままれ、章は我に返った。
今はただ、この可愛い恋人と素敵な時間を過ごそう。
三日後に、たとえ命を落としても悔いの無いように。
章は、そこまで腹をくくっていた。
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