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しおりを挟む違約金の額は、一千万円。
すべてキャッシュで、一括払い。
志乃の事務所は、そう提示してきた。
「絶対、嘘だよ! こんなお金、払えないって解ってて、言ってるんだよ!」
そう、憤る志乃だ。
しかし、章は落ち着いている。
「札束を入れる、アタッシュケースを買わなきゃいけないなぁ」
これほどの高額を請求してくることは、ある程度予測はしていた。
おそらく、細かな計算などしてはいないだろう。
庶民には、到底払えない金額を吹っ掛けて、諦めさせる作戦だ。
残念ながら、章相手には通用しないが。
「大丈夫。これくらい、何ともないよ。志乃くんは、心配しないで」
「ごめんなさい、章さん。ごめんなさい……」
泣きじゃくる志乃を抱き寄せ、その髪を撫でてなだめた。
「章さん。僕、やっぱり続けようかな」
「続ける、って。何を?」
「レンタル恋人の、お仕事」
だって、と志乃は涙声で章の腕にすがりついた。
「危ないよ、絶対。事務所、怒らせちゃったら」
「いや、きちんと対価は支払うんだし」
「スタッフの間で、有名なんだ。うちの事務所、裏で暴力団と繋がってる、って」
章さんの身に何かあったら、僕は生きていけない。
必死に訴える志乃に、章は微笑みかけた。
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