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しおりを挟む「10億もの資産の持ち主ならば、我々の提示したものも、もちろん……、かな?」
「はい。ここに、用意してあります」
章は、ソファの隅に置いていたアタッシュケースを手にした。
ずしりと重いそれをテーブルに上げ、キーを差し出した。
「中を、検めますか?」
「さすがに、ここでそれをやるのはマズいな。それに……」
章の人格を確かめた今、疑いは持っていない。
中には、きっちり一千万円入っているだろう。
加瀬がそれを言おうとした矢先に、小茂田が割って入って来た。
「怪しいですよ、加瀬さん。偽札が、混じっているかもしれません!」
うるさそうに眉根を寄せる加瀬に、小茂田は畳みかけた。
「部屋を一つ、取ってあります。そこで、中を確認しましょう」
やれやれ、と首を一つ振り、加瀬は章に問いかけた。
「小茂田が、こう言ってるんだが。君の意見は?」
「私は、ここで。この場所で、全てを済ませたいと思います」
「ルームには、入りたくない、と?」
「個室に入れば、中で何が起きても、そちらの都合のいいように捏造されるでしょうから」
章の読みは、図星だった。
小茂田は真っ赤になって、章を怒鳴りつけた。
「こいつ……! 加瀬さんを、疑うのか!?」
しかし、加瀬は冷静だ。
手をひらひらさせて、彼を黙らせた。
「加瀬さんは、って。違うだろう? 章さんは、小茂田を疑ってるんだ」
小茂田は、黙らざるを得なかった。
(せっかく、美味い話が転がり込んで来たと言うのに!)
ルーム内で難癖をつけて、志乃を拘束する。
そして彼を人質にして、章からさらに大金を搾り取る。
これが、小茂田の考えた筋書きだったが、肝心の加瀬が乗り気ではないらしい。
その加瀬は、さらに章に問いかけてきた。
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