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しおりを挟む「ああ、もう。痛かった!」
そう、唇を尖らせる志乃の手首も足首も、擦れて赤くなり血がにじんでいる。
「可哀想に、志乃くん。痛いだろう?」
「うん。でも、大丈夫」
志乃は、改めて章の胸に飛び込んだ。
腕を彼の体に回して、ぎゅっと抱きしめた。
大好きな章の匂いを、いっぱいに吸った。
志乃の無事を確認した加瀬は、部下に命じて郷を二人の前に引きずり出した。
「さて。この誘拐犯だが、どうする?」
極道たちに囲まれて、郷はすっかり大人しくなっている。
「バラしてから、海に沈めるか。それとも山に埋めるか……」
加瀬の容赦ない提案に、郷は真っ青になった。
「い、命だけは! 嫌だ、死にたくない!」
さすがに殺人を犯す気は無いので、志乃は加瀬に言った。
「一発だけ、殴ってもいい?」
「何発でも。ただ、痕が残る殴り方はするな」
そこで志乃は、平手で郷の頬を思いきりひっぱたいた。
「大っ嫌い! 二度と、僕に近寄らないで!」
生まれて初めて人に頬を張られた郷は、その屈辱に震えたが、次は章の番だ。
こんな体格のいい男に殴られたら、首が吹っ飛ぶかもしれない。
だが章は、別の提案を挙げてきた。
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